岡崎市民会館 あおいホール
~吊り天井を撤去し、天井の耐震化と音響改善を実現~
昭和42年の開館以来、ほぼ半世紀にわたり岡崎市の文化・芸術活動の拠点として愛されてきた岡崎市民会館は、平成28年の岡崎市制100周年を記念する節目となる年に天井の耐震化を含めた大規模な改修工事を行い、より現在のニーズに応えるような形でリニューアルオープンを迎えました。
天井の耐震化手法としては、既存補強・耐震天井利用・準構造化などいくつかの方法がありますが、本物件では既存内装天井を撤去し、直天井化する手法を採用しました。同時に天井改修と合わせ内装仕様を工夫することでホール全体の音響計画を再設計、また舞台面積を拡げ、客席椅子の前後幅を増やすなどホールの利便性も改善しました。
改修前に音響上の問題点を把握するため、音響測定を実施しました。その結果、室内音響に関しては、天井高が低く容積が小さいことと内装壁に吸音面が多いことに起因する残響感不足や、扇形形状に起因する中央付近の側方反射音不足といった問題点が確認されました。また、騒音に関しては、空調の風切り音が大きいことや、降雨時に雨音が聞こえることなどが確認されました。
事前調査を踏まえて、主な改修方針は、①吊り天井撤去による天井耐震化 ②舞台拡大および座席幅拡張による利便性改善 ③天井撤去による容積拡大および吸音面減、室内形状見直しによる室内音響性能改善 ④空調ダクトレイアウト見直しによる騒音低減 となりました。
元音場の残響感不足・反射音密度の改善方法として5つの改善プランをシミュレーションしました。
- ① : 内装天井撤去による客席天井面Up、客席前方上反射板追加
- ② : ① + 舞台反射板隙間埋め、天反の連続性改善
- ③ : ① + 花道部に反射板追加
- ④ : ① + 側壁に拡散面追加
- ⑤ : ① + 後方吸音面を拡散面に変更
これら5つのシミュレーションを組み合わせることで最適な改修プランを作成しました。
上記のシミュレーション結果をもとに最適な改修を実施し、改修後に音響測定を実施しました。室内音響特性に関しては残響時間が中域で0.2~0.3 秒延び、LE値は客席中央で大きく改善しました。また、騒音特性に関しては改修前のNC-30~35 に対して、NC-20~25と改善しました。