伝説的ピアニスト“ミスター・スタンダード”が日本で再び優雅で流麗なステージを見せてくれました。
2008年アメリカ国民芸術勲章を受勲、さらにグラミー賞までも。5月には記念アルバムもリリースされます。史上最高齢の巨匠が語るスタンダードの極意とは?
GJTがシンガーと共演するのは久しぶりだった。TOKUはシンガーとしてだけじゃなく、トランペット・プレイヤーとしても優れていると思う。音楽のセンスも良いし、多くのシンガーとは違った発想の持ち主だね。彼のスタイルはとても個性的で、共演していても楽しかったよ。フリューゲルホルンの演奏も素晴らしい。フリューゲルホルンが上手く吹けるトランペット・プレイヤーはそれほど多くないけれど、彼はかなり優秀だと思う。ケイコ・リーとは3年前にもライヴで共演している(『ライヴ・アット・ベイシー~ウィズ・ハンク・ジョーンズ~』)けれど、彼女もとても優れたシンガーだと思うよ。ちなみに、タイトル曲の「ブルー・マイナー」を書いたソニー・クラーク(p)のことはもちろん知っていたけれど、実際に会ったことはなかったし、この曲もレコーディングの2ヶ月前に初めて知ったんだ(笑)。信じられないかもしれないけれどね。でも、とても素晴らしい曲で、楽しく演奏させてもらったよ。
私もスタンダードに飽きたことはないし、今でも大好きだよ。スタンダードを演奏するスタイルはピアニストによっても違うから、それだけ多くの種類の演奏が楽しめるということもあるだろうけれど、私はとにかく、スタンダードを演奏するのが好きなんだ。私がスタンダードを弾く時には、メロディーの邪魔をせずに注意しながら、ハーモニーに変化を付けるようにしている。決してメロディーの邪魔になるようなことをしてはいけない。ハーモニーを変える時にはあくまでも、メロディーをより引き立たせるために意味があると思うから変えるわけで、変えること自体が目的なわけじゃない。そもそも、曲のメロディーに手を付けるべきではないんだ。作曲者はある意図があってメロディーを書いたはずだから、それをわざわざ台無しにするようなことをするべきではない。メロディーは曲の中でいちばん大切なものだから、きちんと弾くべきだと思うし、私はいつもそうしているよ。メロディーをきちんと伝えなければ、観客は何の曲をやっているのかわからないからね。
私は基本的に、歌詞のことはよく知らないんだ。歌詞はシンガーにとってものすごく大切なものだけれど、私にとって大切なのはメロディーだからね。もちろん、歌詞を知っていれば曲の解釈も違ってくるのかもしれないけれど、タイトルだけでも感じるものはあるし、いちばん強く意識するのはやはりメロディーで、わざわざ歌詞を研究するようなことはしない。私が歌詞を知っているのは1曲ぐらいかな(笑)。良く出来た歌詞はたくさんあるんだろうけれど、それはシンガーが知っていれば良いことで、私はシンガーじゃないからね(笑)。
その質問が、ジャズの良さが一般の聴衆にも広く認められるようになったかという意味なら、答えはイエスだと思う。今の人たちはジャズに慣れ親しんでいて、以前よりもジャズを受け入れてくれているし、クラブはもちろん、コンサート・ホールでもジャズが演奏されるようになっているからね。でも、ジャズが本来あるべき形で普及しているかと言えば、そうは思わない。アメリカでは、ジャズ専門のラジオ局もひとつかふたつあるかもしれないけれど、一般の人たちが日常的聴いている音楽の中にジャズも含まれているとは言えないんだ。その意味で、ジャズが普及する余地はまだたくさん残されているんじゃないかな。そのためにも、ジャズをもっと宣伝して、この音楽についてもっと説明していく必要があるだろうね。たとえば、クラシックを聴く人はたくさんいるし、私もいつも聴いている。仕事ではジャズをやっているけれどね(笑)。だから、クラシックのファンにはジャズの良さがもっとわかってもらえるんじゃないかと思うんだ。
1918年7月31日、ミシシッピ州ヴィックスバーク生まれ(育ったのはミシガン州ポンティアック)。有名なジョーンズ兄弟の長兄(次男はトランペット奏者兼作曲家のサド、末弟がドラマーのエルヴィン)。十代の頃から地元で演奏活動を始めただけでなく、トミー・フラナガン、バリー・ハリス、サー・ローランド・ハナに代表されるデトロイト派ピアニストの創始者でもある。ホット・リップス・ペイジに認められ44年にニューヨークに居を移す。コールマン・ホーキンスやビリー・エクスタイン等と共演するかたわら、当時発展しつつあったビバップの要素を吸収してゆく。47年からJATP(Jazz at the Philharmonic)に参加。48年~53年はエラ・フィッツジェラルドの伴奏者を務めたり、チャーリー・パーカーと共演するようになる。50年代になるとベニー・グッドマン、レスター・ヤング、キャノンボール・アダレイ等と共演。59年から17年間はCBSのスタッフ・ミュージシャンとしてラジオやTV番組の音楽に携わりながら、活動を展開。76年に結成したザ・グレイト・ジャズ・トリオをきっかけに再びジャズの第一線へと躍り出て、以降は名脇役から立派な主役を務める作品までと数え切れないほど様々なアルバムに参加している。その優雅で流麗な演奏スタイルはもとより、暗記しているスタンダード曲が1,000を下らないと言われているため尊敬の念を込めて「ミスター・スタンダード」と呼ばれることも。1962年マジソン・スクエア・ガーデンで行われた故ケネディ大統領の45歳のバースデイ・パーティで女優のマリリン・モンローが唄う”ハッピー・バースデイ”のピアノ伴奏を務めたことでも知られる。90年代のパナソニックのCMで「What's New」の演奏シーンに出演しただけでなく、「ヤルモンダ!」とにっこり笑っていたピアニストでもある。2008年11月 アメリカにて、今までのアーティスト活動が称され、ブッシュ前大統領より、National Medal Of Arts アメリカ国民芸術勲章文化勲章をスパイダーマンの作者スタン・リーらと共に受章。現在90歳。
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