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"5" Questions to Sakamoto Ryuichi/坂本 龍一 へ“5”つの質問

Q1:自分で影響を受けたと思われるアーティストは?
 子どものころ、母がよくレコードを買ってくれたんですが、あるときポーランド出身のフランスのピアニスト、ヴラド・ペルルミュテールのショパンを買ってもらったんです。スケルツォや舟歌、子守歌などが入っているものでしたが、それが「ぼくのショパン」になってしまい、テンポやフレーズ感がすっかりインプットしてしまった。その後、ドビュッシーやラヴェルなどのフランス作品が好きになるわけですが、原点はペルルミュテールのショパンです。作曲家で影響を受けた人を挙げると、バッハとドビュッシー。それからいまはブラームスにもすごく惹かれています。
Q2:ヤマハピアノに対するイメージと印象は?
 日本の家庭や学校などにもっとも普及しているという感じがします。ぼくは非常にラッキーなことに、MIDI付きのコンサートグランド(CFIIIS)をはじめとし、最高の楽器を弾かせてもらっています。いずれも響きはまろやかで、ふっくらとした温かさがあります。上品な音がしますよね。木のぬくもりとでも表現したほうがいいのでしょうか、硬質な感じや金属的な感じとは異なり、日本の家の木造りのような雰囲気を醸し出しています。
Q3:あなたにとって音楽(ピアノ)とは?
 ピアノを弾くことは自己表現。自分の声を聴いて届けるくれる人たちに届けることです。1台のピアノを5年、10年と弾いていると、愛着のあるハーモニーや使っている音域、その振動が楽器を徐々に変え、弾き手の声を表現するようになります。楽器が語り、歌い、声を発するようになっていく。ぼくが使っているピアノはぼくの声で語り、歌う。その人の特徴的な振動をとらえ、その人の声になる。これがピアノのすばらしいところです。
 いまはツアーの真っ最中ですが、その声を伝えたいと思っています。でも、ツアー中は先のことはいっさい考えない。「自分の相撲を取りきるだけです!」という相撲の力士の心境で、「自分の音楽を演奏するだけです!」という感じ。一日一番ではなく、一日一公演。いつのまにか千秋楽を迎えるということになる。自分の分身の声であるピアノとともに。
Q4:印象に残っているホールやライブハウスは? 
 95年にアテネのアクロポリスのふもとにある紀元前に作られた野外劇場でヴァイオリン、チェロ、ピアノのトリオで演奏をしたんですが、ここはとても音響がよくて弾いていてすごく気分がよかったですね。ぼくは特別な霊感があるわけでもないのに、このステージでは地霊に促されたのか、ピアノに向かった途端自然に即興演奏を始めてしまった。弦の二人はいつ最初の曲が始まるのかとずっと準備しているのに、いっこうにぼくの演奏が終わらない。たった5分ほどだと思ったのに、あとで聞いたらひとりで30分も即興をしていたんだって。何を弾いたのかまったく覚えていないんですけどね。あの場がそうさせた。
 もう一箇所、リオデジャネイロの岩山の中腹にあるアントニオ・カルロス・ジョビンの家の響きがいまでも忘れられません。これは彼の息子のパウロが設計したものですが、その家にあったヤマハピアノ(C7)がえもいわれぬ独特の響きがしました。ここで録音させてもらったんですが、眼下には海が見えるすばらしい環境。彼のピアノはまさにジョビンの声となっていて、木造りの家に響き渡りました。
Q5:ピアノを学ぶ(楽しむ)方へのメッセージ
 本当はピアノの練習をしなくても、うまく弾くことができれば最高なんですけどね。練習嫌いのぼくがいうと説得力がないかもしれないけど、とにかく好きな音楽を弾くのが一番。好きな音楽だったら、うまくなりたいと一生懸命練習するでしょう。それをきちんと弾けるまで練習を積み重ねる。結果が出ないと、おもしろさや楽しさが味わえないので。バッハの「イギリス組曲」も「フランス組曲」も、みんなレッスンで練習曲として習うけど、決してそういう作品ではないと思う。すばらしい名曲です。「無伴奏チェロ組曲」だって、パブロ・カザルスがすばらしさを見出してくれなかったら、いまでも単なる練習曲として見られていたかもしれない。とにかく好きな作品にトライ! 一日一曲の精神で。
"Open your ears"  ― 坂本 龍一

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