ホームシアター/オーディオ Home Theater & Audio
ウーファーキャビネットを大容量化正統派のアプローチで音質を極める


麻倉 とにかく音質が最優先のリファレンスモデルというポジションですね。機能面では先行販売された『YSP-4100』と基本的には変わらないわけでしょう。

加藤 はい。どちらもブルーレイ時代の高品位フォーマット「HDオーディオ」に初めて対応し、7.1chサラウンド再生も可能になっています。HDMI入力端子もそれぞれ4系統で同じですね。

麻倉 つまり価格の差は、純粋に音質対策の違いだと考えればいい。ユーザーにとっては非常に分かりやすいですね。では開発指揮の竹下さん。『YSP-5100』では具体的にどこにコストと手間をかけたんですか?

竹下 従来モデルとの大きな違いは、左右のウーファーを思いきって大容量化したことですね。先ほども話に出たように、しっかりと質感のある低域を再現するには、ある程度のスピーカー容量が必要になります。今までもフロント設置という枠の中で最大限努力してきましたが、デザインとの兼ね合いで削られがちだったバックキャビネット容量を今回は真っ先に確保しました。

麻倉 うん。音の量感がたっぷりして、その効果がしっかり出てましたよね。信号処理や電気系統で音質改善の努力をしても、スピーカー容量の違いはどうしようもない。どのくらい増やしたんですか?

竹下 たとえば『YSP-4100』と比べて60%以上大きい。歴代「YSP」シリーズの中でもちろん最大です。ユニットに使うマグネットやコンデンサなどの部材もできる限り高品質なものを選び直しました。

麻倉 『4100』『5100』とも実際の音質チューニングを担当されたのは田中さんですね。基本的な音作りの部分で、何か特別意識されたことなどはありました?

田中 色付けがなく、聴感上フラットに響くサウンドという意味では、目指している音は普通のスピーカーと変わらないと思います。ただ「YSP」は多数のビームスピーカーを精密にコントロールして音場を作っていますので、通常の音作りに加えて気を遣う部分はいろいろ出てくるんですね。信号処理の作り込みもより複雑ですし、低域と中高域をいかに自然に分離させるかも重要です。

麻倉 「YSP」の場合、原理的には低域が前方のウーファーから聞こえて。それ以外の中高域は、壁の反射を介してそれぞれの方向から届くことになると。

田中 はい。それをある周波数で切り分けるわけですが、実際にはデジタル的に0/1ではっきり分離できるものではない。もともとビームは低域になるほど真っ直ぐ飛ばすのが難しくなりますので、本来後方から聞こえるべき成分でも、低めの音になるとどうしても前方に混じりがちなんです。

麻倉 あの手この手を使って、それを自然に分けてやるわけですね。今回5.1chから7.1chへと進化してるので、調整作業もより大変だったんじゃないですか?

田中 そうですね(笑)。しかも7.1chサラウンドの場合、実はビームが7本分出ているわけではなくて……。2chについては、前方と後方のビームを混ぜることで仮想的に作りだしているんです。

麻倉 ああ、そうなんだ。2chはいわゆるファントムスピーカーなんですね。

田中 はい。本当は7本のビームでできればいいんですが、1つの室内で7本のビームを壁に反射させて、あるポイントに音を集めるのは幾何学的に不可能なんでね。ですから左右フロントとリアのちょうど真ん中くらいに1チャンネルずつ定位するように仮想的な音源を創成しています。

麻倉 作り込みが大変ですね(笑)。だけど音場のつながり感という点では、その2つもプラスに働いている気がしますよ。

竹下 そう感じていただけたのなら、非常にうれしいです。7.1chの信号処理自体は、弊社は長年AVアンプでノウハウを蓄積してきました。『YSP-5100』開発にもその強みは生かせていると思う。ただビーム方式による7.1chの聞かせ方──5つのビームと2つの仮想音源、フロントのウーファーをどう使えば豊かな音場が創成できるかは、非常に大きな課題でした。

麻倉 具体的にはどういう工夫を?

田中 例えばセンタービームは、フォーカスポイントをあえて視聴位置の気持ち後ろ側に置いています。そうすると台詞などセンターチャンネルから来る音がワイドに聴こえて、全体のつながり感も良くなるんです。基本は各チャンネルの音にバラ付きが出ないように注意しつつ、チャンネルごとにビームの特性をきめ細かく調整しています。

加藤 あと、前に麻倉先生からも「YSPはテレビの下に置く商品なので、台詞が下から聞こえないことが重要」とアドバイスを頂きましたので。今回は、センターのビームが少し高さ方向に広がるよう調整もしています。

 



麻倉怜士氏

【開発マネジャー】
竹下健一朗
ヤマハ株式会社
AV機器事業部 商品開発部
TV周辺機器グループ
マネジャー

1983年入社。初代機『YSP-1』以降、「YSP」シリーズ全機種で開発指揮。「POLYPHONY」開発のまとめ役でもある。『YSP-4100/5100』では、先進的機能を音とスタイルの両面から調和させることに尽力した。
 

technology POINT1
密閉型のウーファーキャビネットを大容量化。低音域の迫力が強化され、かつ中低域でも充分な音圧が得られることで豊かな低音再生を実現。さらに、高音域専用の2.5cmバランスドームツィーターを搭載し、自然な音場感とともに音の広がりが楽しめる。定評の高いサラウンド再生の進化と、オーディオとしての音質向上。まさにシリーズ最高峰と言える仕上がりとなっている。


加藤剛士

【音質担当】
田中一伯
ヤマハ株式会社
AV機器事業部 商品開発部
TV周辺機器グループ 技術補

1988年入社。入社以来スピーカー部門で開発を担当。『YSP-1』以降、「YSP」シリーズの開発を主務とする。フロントサラウンド・システムの総合的な音質検証を行ない、サウンド面から品質向上を目指している。
 

technology POINT2
Blu-rayに採用されるHDオーディオ規格に対応。音のビームを壁面反射させ、ワンボディで7.1chサラウンド再生を実現する。大容量ウーファーと高性能ツィーター、40個のビームスピーカーから奏でられるその音は、5.1chでは味わえない圧倒的な臨場感とスケール感を誇る。

フロントサラウンドの原点を見つめた最高峰のリファレンスモデルが登場 ウーファーキャビネットを大容量化正統派のアプローチで音質を極める ブルーレイのロスレスサラウンドを圧倒的な迫力とクオリティで再現

 
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