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    ベックが新作「カラーズ」 ポップでパワフル、普遍的

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

     米国を代表するシンガー・ソングライターのベックが新作「カラーズ」(ホステス)を発表した。カラフルでポップ、ぐっと親しみやすいアルバムだ。いつまでも聴かれる、普遍的な作品を目指したという。(桜井学)
     ベックの登場は鮮烈だった。シングル「ルーザー」が1990年代半ばに世界を席巻。フォーク、ブルースにラップが絡むスタイル。そして「俺は負け犬さ 殺(や)っちまったらどうだ」と歌う自虐的な歌詞。やけっぱちのようなぶっきらぼうなボーカル。全て新鮮だった。
     それから20年以上が過ぎた。新作はポップで力強い楽曲をそろえた。「パワフルな作品にしたかった。ローリング・ストーンズと一緒にツアーしたことがあるんだけど、音楽の喜びが伝わってくるような曲を彼らは持っている。それがお客さんの人生の一部になっているんだ。そういう曲を作りたい、と思った」
     サウンドは多少変わったが、メロディアスでエネルギッシュな部分は、昔から変わらないと言う。「今回は、特にみんなで一緒に歌えるような曲を作りたかったんだ」。たしかに「ルーザー」は実験的だったが、思わず口ずさんでしまうキャッチーさがあった。そういう要素をより分かりやすく出したということだろう。
     ビートルズの曲を思わせる「ディアー・ライフ」や、ポリスっぽい「ノー・ディストラクション」などが並ぶ。「自分を解き放ちたい」と歌う「ドリームズ」など、歌詞も分かりやすい。「そこがすごく大変だった。名曲ってシンプルなものが多いだろ。シンプルだけど、きちんと訴えるものを書くのは難しい。言語の複雑性を生かした斬新な表現も好きだけど、今回は、より直接的で、友人との会話のような感じも織り交ぜて、バランスを取ったんだ」
     才能は広く認められている。2014年の前作は、グラミー賞の中でも特に注目度の高い、最優秀アルバム賞に輝いた。「本当に驚いたよ。ずっと外側にいた人間なのに、急にドアが開いて『中に入れ』と言われた感じ」と語る。「20年前、僕は主流派とは言えなかった。『これって音楽?』っていう反応もあったんだよ。けれど、時代は変わった。人々が僕を理解してくれるようになった。だからやりたいことをやればいいんだと、自信がついた」
     10月に東京・日本武道館で開かれた公演も、ポップへの意識を強く感じさせた。音は激しく、躍動的。照明などの演出も華やかで、まぶしいほどだった。聴衆はともに歌い、祝祭空間といっても過言ではなかった。新作のねらいがよく伝わってくるステージだった。
     日本の若手アーティスト、DAOKOと共演した配信シングルもリリースした。

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