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    [解説スペシャル]JASRAC 使用料「変更」へ「音楽の対価」映画界に衝撃

    配信日: | 配信テーマ:その他

    ◇文化部 鶴田裕介 大木隆士
     ◆「興行収入の最大2%」に 配給会社「死活問題」
     外国映画上映時に配給会社から徴収している劇中音楽の使用料について、著作権を管理する日本音楽著作権協会(JASRAC)が今月、従来の1作品一律18万円から、興行収入に連動させる形に変更する意向を示した。最終的に興行収入の最大1〜2%を目指す方針で、映画業界からは懸念の声が上がる。JASRACは、音楽教室での楽曲演奏からも使用料徴収を表明している。音楽文化維持のための使用料はどうあるべきだろうか。〈関連記事社会面〉
     著作権法は、公衆に聴かせる目的で楽曲を演奏する「演奏権」を作曲家らが持つと定め、映画音楽の場合、作曲家らに「上映権」があるとする。作曲による報酬とは別に受け取れる権利で、それを守ることで創作を通じた文化発展を目指す。
     徴収方式の変更は、JASRACと映画業界の間で数年前から協議が続いている。今回の方針の背景には、国内外の格差がある。大ヒットした「アナと雪の女王」や「タイタニック」でも使用料は一律18万円で、ともに興行収入の0・0007%ほどだが、仏独伊など欧州では1〜2%。
     しかしアジアでは、日本がとりわけ低いわけではない。中国やインドなどでは、著作権管理団体が使用料を徴収できていない。
     欧州並みの料率となれば、例えば「アナ雪」では、最大2・5億〜5億円となる。実際には、これに上映時間に対する曲の使用比率を乗じるなど調整するとみられるが、「宣伝費などが減り、ぎりぎりの状態で映画を提供している中で、負担が増えるのは死活問題だ」とする小規模の配給会社もある。
     公開から一定期間を過ぎた作品などにも再度使用料がかかる。「金額が上がれば、鑑賞料金値上げを検討する作品が出るかもしれない」と、名画座関係者からは懸念の声も出る。JASRACは「一気に引き上げることはない」と激変への配慮を明言する。
     ただ、興行収入が少ないとこれまでより使用料が下がるケースも想定され、「映画の規模などに比例するなら、公平かもしれない」とみる映画関係者もいる。
     一般の人々にとって問題なのは、鑑賞料金が上がるかどうかだ。日本映画の場合、楽曲ごとにスクリーン数などに応じて使用料が決まる仕組みで、1000万円を超える作品もあったが、それでも鑑賞料金は変わらなかった。各映画館は割引サービスで集客を図っているだけに「値上げは非現実的」との見方が強い。
     今回の方針について、音楽家の坂本龍一さんは「根本にある考え方は間違っていないが、規模の小さい劇場や配給会社は利益の幅も小さく、事業を維持するのは容易でない。一定数以下のスクリーン数では料率を低く設定することも検討すべきかもしれない」としている。
     ◆徴収対象 拡大の傾向
     JASRACは2010年代に入り、楽曲使用料を徴収する対象をフィットネスクラブ、カルチャーセンターなどに拡大。来年からは音楽教室からも徴収する方針で、教室事業者らはJASRACに請求権がないことの確認を求めて提訴している。
     音楽業界では、1990年代後半から主軸だったCD売り上げが下落。それに伴い、JASRACの徴収額も落ち込みそうなものだが、実際には年間徴収額はここ十数年、1100億円程度を維持している。2000年代以降、放送使用料や、コンサート客が増えたことによる演奏使用料が増額していることもあるが、音楽関係者の中には「CDなどの減収分を補うため、徴収範囲を拡大しているのでは」との見方もある。
     この点、JASRACは「音楽の創作者が適正な対価を受け取れなければ、創作のサイクルが途切れてしまう」と強調。演奏権(上映権)のきめ細かい管理を行えば、必然的に徴収対象は広がるという。
     著作権問題に詳しい福井健策弁護士は、「情報社会の到来で万人が情報の発信者で、利用者となった。権利者だけの視点でなく、利用者の視点も必要だ。創作者への還元と同時にどうやって作品の利用を促進し、社会全体の利益を最大化するか、著作権管理には公益的な視点が求められる」と話している。
     
     ◆「著作権が文化支える」
     ◇JASRAC 浅石道夫理事長
     ——2010年代に入って徴収対象を拡大しているのはなぜか。
     「JASRACは小さい団体。ようやく著作権管理の足腰ができてきた段階で、しっかりものを言える時代になってきたからだ」
     ——拡大は誰の意向か。
     「創作者の意見だ。著作権法は、演奏権は著作者が専有するとしているが、誰が払うのかは書いていない。(利用者側と)話し合いをし、決まらなければ判例で埋めていく」
     ——消費者の意見を反映させる考えは。
     「今のところない。著作権者に比べ、利用者は圧倒的に多い。数の原理を入れるべきではないと思う」
     ——どこまで広がるか。
     「何でもかんでもJASRACは(演奏権の)管理にまい進するんだということもない。人の財産を使うのであれば対価をお支払いくださいというのが原則。文化を著作権が支えていることを理解してほしい」

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