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    [ALL ABOUT]竜馬四重奏 和洋新旧 束ねる音色

    配信日: | 配信テーマ:その他

     ◇Pop Style Vol.571
     バイオリン、津軽三味線、篠笛(しのぶえ)、鼓で編成するバンド、竜馬四重奏が今、世界に羽ばたこうとしている。和洋、新旧を融合した斬新なサウンド、高い技術と豊かな表現、スタイリッシュな容姿と、ヒットの要素を兼ね備えた4人。2作目となるアルバム「SAMURIZE」を発売したばかりの侍たちは、まさに日の出の勢いだ。
     ◆「世界」を意識
     四つの個性的な楽器が、絶妙なバランスで引き立て合う。独特な音色の配合が竜馬四重奏の持ち味だ。
     まず耳に迫るのが、バイオリンと篠笛。ツインボーカルのごとく、掛け合い、ハモリとダイナミックに絡み合う。津軽三味線はギターのように、リフ(繰り返しフレーズ)やバッキングでサウンドの彩りを加える一方、ここぞとばかりにメロディーに加わり、力強く音を刻む。そして、独特なサウンドを決定づけるのが鼓だ。「イヨーオ!」「ホーオ!」という良く通る掛け声とともに、ポンッ!という胸のすく音色を響かせる。一人一人の技術はもとより、音楽的センスの高さもうかがえる。バンド結成を呼びかけたバイオリンの竜馬さんが胸を張る。「最初から世界を意識し、第一線で活躍している人たちにお声がけした」
     結成は、2008年に遡る。5歳からバイオリン、14歳から作曲を始めるなど音楽的な環境と才能に恵まれた竜馬さんは、東京音大在学中から続けるプロ活動が海外に及ぶにあたり、日本人としてのアイデンティティーを問われるようになった。「日本の古典楽器の方たちとバンドを組むことが一番分かりやすく、日本人にしかできないエンターテインメントが作れると思った」
     ◆第一人者集結
     竜馬さんが最初に声をかけたのは、津軽三味線の雅勝(まさかつ)さんだ。数々の三味線コンクールで入賞し、津軽民謡の伴奏をする一方、自身を主体とするバンドを組むなど、既に伝統と現代を行き来する柔軟なアーティスト活動を展開し、作曲も出来た。「メロディーに説得力のあるバイオリンと組むのは新鮮だった」と、前向きに加わった。
     鼓の仁(じん)さん、篠笛の翠(すい)さんは、同じ藤舎流の囃子方(はやしかた)(藤舎呂凰(ろおう)、藤舎推峰(すいほう))として、能や歌舞伎の舞台を支える専門家。「業界として外部活動については嫌がられるけれど、僕は舞台でかっこつけて先生に怒られたりする変わった人間なので、気にしなかった」と、仁さんは笑う。一方で、翠さんは真剣な顔で「すごく迷いもしたけど、日本の楽器がもっと色んな形で外の目に触れてもらうことが必要とされていると考えた」と打ち明ける。彼は先頃、自主企画のホール公演「笛の会」を開催するなど、古典芸能で着実に実績を上げている。それぞれの持ち場で活躍する名手たちが集結したのが、竜馬四重奏だったのだ。
     とはいえ、結成からしばらくは方向性に悩んでおり、わずか3、4年前は“氷河期”といえるほど停滞していたという。「呼ばれたら行きますよ、というスタンスのいわゆる“営業バンド”。このバンドでやっていこうとは誰一人思っていなかったんじゃないかな」と、雅勝さんが振り返る。4人とも、それぞれ別の音楽活動を抱えていたことも背景にあった。
     ◆海外公演転機
     状況が一変したのが初の海外公演となった「日本スペイン交流400周年事業」だった。先にスペインでの日本舞踊公演に参加していた仁さんの縁をきっかけに、竜馬四重奏も2014年3月にマドリードなど3都市で公演を行うことになった。「『日本の伝統文化、魂を世界に』という僕らのコンセプトを、やっと初めて実現できる機会をいただいた。不安がありながらも、やってやるぜという気持ち。結果、スタンディングオベーションをいただき、CDも売れて自信につながった」(竜馬さん)。
     帰国後に開いた凱旋(がいせん)ライブは、竜馬さんの所属事務所幹部や先輩である松崎しげるさんらが見て絶賛。その勢いで、16年にメジャーデビューを果たし、16、17年にタイでの「ジャパン・エキスポ」に2年連続参加と躍進が続いている。
     こうした実績以上に、スペインツアーがもたらしたのは、メンバー間の絆だった。「初めて10日間近く寝食を共にし、互いを尊敬することができた。面白いことがやれるなと確認した」と、竜馬さんは振り返る。
     ◆個性溶け合う
     インタビューを通して実感したのは、4人の仲の良さ。最年少ながらバンドをリードする竜馬さんに対する印象を尋ねると、翠さんが「パワフルの一言に尽きる。若いから勇み足もあるけれど、自分たちはここにとどまる人間じゃないという高い意識がある」と、真剣に評価。それに続けて「やんちゃ。バイオリン弾きらしくない」「バーベキューでもやってそうなね」「草野球の監督っぽい」と、好き勝手な発言が相次ぎ、笑い合った。
     少年のような容姿ながら、低い声で鋭いツッコミを入れる雅勝さん、気品があり理知的な翠さん、温厚な最年長のリーダー、仁さんと、個性豊かな面々がいい雰囲気で溶け合っている。
     竜馬さんは、頼もしいメンバーを確認するようにして強く言い切った。「個の活動を極め、4人で集まった時によりいいものを作るのが竜馬四重奏。だから、それぞれの古典の活動も大事にしてもらいたい。このメンバーじゃなければ、やる必要はない」
     
     ◆好きな音楽家、夢、プチ自慢… 4人の素顔に迫る
     個性豊かな竜馬四重奏のメンバーの趣味嗜好(しこう)がより分かるアンケートを実施。10の質問×4人=竜馬40答!
     〈1〉影響を受けた音楽家など
     【竜馬】葉加瀬太郎【雅勝】津軽三味線の偉大な先輩方、ジョン・レノン、松本人志、家族、竜馬四重奏メンバー【翠】ノーコメント、多過ぎて【仁】藤舎呂船(藤舎流家元)、堅田喜三久(人間国宝)、よこざわけい子(声優)
     〈2〉好きな音楽家
     【竜馬】エンニオ・モリコーネ【雅勝】ビートルズ、浅井健一【翠】Cory Henry(キーボーディスト)【仁】QUARTET NIGHT、ボーイ・ジョージ
     〈3〉最近気になるアーティスト
     【竜馬】エド・シーラン【雅勝】サカナクション【翠】草間彌生(ミュージアムが家の近所に出来た)【仁】凪七瑠海(宝塚歌劇団)
     〈4〉好きな歴史上の人物
     【竜馬】坂本龍馬、織田信長【雅勝】杉原千畝【翠】渋川春海、伊能忠敬、太田道灌【仁】玄宗皇帝
     〈5〉自己分析(プレイ、性格など)
     【竜馬】前向きで行動派/思いついたらすぐに動き必ず実現させる/細かいことが苦手【雅勝】ひねくれ者、頑固者【翠】演奏は丁寧に、なるべく音楽の深部に入り込んだ演奏をしたい。楽観的【仁】感情の思うがままに、明るく、楽しく、激しく! 色々なことを気にしない! どんな時も、その状況を楽しむ!
     〈6〉竜馬四重奏のココがすごい
     【竜馬】それぞれが持つ個性、その個性がちりばめられる楽曲のクオリティー【雅勝】それぞれが誰にも真似(まね)できないことをやっている【翠】見た目以上に実はキャラが濃厚な4人組【仁】とにかく仲が良い! それぞれの楽器のスペシャリストがそろっている!
     〈7〉バンドまたは個人の夢
     【竜馬】戦争を10分でも止められるような音楽家になりたい【雅勝】サッカーのW杯のスタジアムで演奏したい。日本代表のテーマ曲を作ってみたい【翠】4人でもっと色々な国を見たい。自分の曲でオーケストラかビッグバンドを鳴らしたい【仁】オリンピックの開会式で演奏する! 大河ドラマのオープニング曲が、竜馬四重奏の曲になること!
     〈8〉好みの女性
     【竜馬】明るく元気で小さな幸せを見つけ喜べる人【雅勝】何かに打ち込んでいる品のある女性【翠】広瀬すず? 透明感がある人が好き【仁】タレ目、丸顔、ポッチャリ、150cm前後。お酒好きな人
     〈9〉プチ自慢
     【竜馬】すぐに誰とでも友達になれる【雅勝】モノマネ【翠】事務作業。細かいこと【仁】心が広過ぎて、絶対に怒らない(メンバーから、仏の仁と言われる)
     〈10〉一言どうぞ
     【竜馬】日本の魂を世界に轟(とどろ)かせるのは竜馬四重奏だ!!【雅勝】インターネットで竜馬四重奏を今すぐ検索!【翠】竜馬四重奏は大切なバンド。しかし古典演奏こそ軸足であり、双方を充実させたい。そのために多く学びたい【仁】一度は、ぜひとも生で聴いてみてください!絶対にハマります!! イヤァーーーー!!
     
     ◆新アルバム「SAMURIZE」 「志士」が奏でる15曲
     タイトルは、バンドのイメージを伝える「侍」と「日出(い)ずる国」から想起した「sunrise」を掛け合わせた。オリジナル楽曲12曲に加え、アース・ウィンド&ファイアーなどの名曲の要所を詰め込んだ「ヴィーナス」、コールドプレイの「美しき生命」などカバー3曲も収録。
     幕開けは、4人の持ち味が存分に発揮された「風神」。嵐を巻き起こすような勇壮な1曲で、途中の篠笛ソロは、まさに風の神のごとし。翠さん作曲の「幕末ファンク」は、古典楽器の響き、1970〜80年代のファンク調、現代の電子音が絶妙に融合。小気味よくベースラインを刻む三味線、ファンキーなバイオリンソロ、エフェクターがかかった斬新な篠笛など聴き所が満載だ。
     今年のタイの「ジャパン・エキスポ」のテーマソングとして依頼され、竜馬さんが書き下ろした「Oriental Bird」は、日本を飛び立ってアジアへ向かう鳥の雄々しさが体感できる。
     ロックテイストの「Rising Sun」は、仁さんの掛け声が叫びのように繰り返され、インストゥルメンタルバンドながら声を効果的に使うバンドの特性が生かされている。作曲者である雅勝さんは献身的なバッキング、見事なソロと縦横無尽に活躍する。
     
     ◇りょうましじゅうそう 2008年結成。16年7月にアルバム「NEO ZIPANG」で、ポニーキャニオンからメジャーデビュー。14年にスペイン3都市での公演を成功させ、16年から2年連続でタイのジャパン・エキスポに出演。今年は、マレーシアでのジャパン・エキスポや東京・帝国ホテルでの「インペリアル ジャズ」にも参加するなど、活躍の場を増やしている。

     
     ◇文・清川仁

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