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    <Topics>上原ひろみ&E・カスタネーダ ピアノとハープの「会話」 ジャズの「何か」感じさせるライブ盤

    配信日: | 配信テーマ:ジャズ

     「ジャズ録音100年」という区切りに合わせ、ジャズを見つめ直す書物やCD、コンサートが続々と登場している。100年というのは、歴史を尊重し伝統を守ろうという意識が生まれるのに十分な時間である。ただ、ジャズは常に既成のルールに疑義を唱え、新たなスタイルやサウンドを提案し続けてきた。それが、歴史と伝統を備えたのだ。これは、どこかに自己矛盾の種をはらんでしまったと言えないか。

      ■  ■

     そんな中で話題を集めているのが、上原ひろみとエドマール・カスタネーダのデュオアルバム「ライブ・イン・モントリオール」(ユニバーサル)である。上原自身がいつも「ジャズだ、ジャズでない」の論争の的となる。そんな彼女のピアノに、コロンビア出身のエドマール・カスタネーダのハープが加わるデュオなのだ。またまた「ハープはジャズ?」の論議が過熱しそうである。

     上原は、驚異のテクニックと自由な発想で、今や世界で最も忙しいジャズピアニスト。上原より1歳上のカスタネーダは、首都ボゴタの音楽一家に1978年に生まれ、16歳でニューヨークに移住。メロディー、和音、ベースラインを同時に演奏する驚くべき技術を開発し、2000年代の半ばには一気に頭角を現した。

      ■  ■

     「16年、カナダのジャズ祭で彼の演奏を聴いた瞬間に『私と同じ言語を話している』と驚いた。この人とオリジナルを演奏したいと衝撃が走った。彼の音楽はエネルギーとパッションがリズムの中で流麗に溶け合っている」と上原は、カスタネーダの初印象を語る。すぐに連絡を取り1カ月後にはニューヨークのブルーノートで共演してしまう。

     カスタネーダも言う。「音楽で会話ができる気がした。野性の勘だね。子供が遊び仲間を瞬時にかぎ分けるのと似ている」と上原を見る。カスタネーダの楽器は伝統的な32弦のコロンビア・ハープに、低音2弦を加えてフランスのメーカーに発注する「10年がかりの」特注品。そうまでした理由は「コルトレーンやマイルスのようなジャズをハープで弾きたかった」から。「え、ジャズを弾くのに必要だったの?」と上原が横から声を上げた。

      ■  ■

     カスタネーダに「ジャズって何」と尋ねる。

     「神は、人生のどこを歩みなさい、って導いてくれる。僕はその道を歩んでいるだけ。音楽って自由でいることなんだけど、勝手気ままじゃない。もっと深いところに存在する。毎日、それを見つけようとしているが、逆に、説明できるものではあってほしくないな」とそれまでの快活さを隠して静かにほほ笑んだ。上原も「彼と出会って、経験したことのない『何か』を感じる」と引き継いだ。

     内包されたジャズの種は、こんな場所で発芽するのだろうか。22日の神戸を皮切りに、日本ツアー。東京は28日からコットンクラブ、12月1日からブルーノートなど。【川崎浩】

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