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    <大衆音楽月評>秋の夜長の楽しみは=専門編集委員・川崎浩

    配信日: | 配信テーマ:ジャズ

     11月1日は「十三夜」。旧暦の9月13日の名月をめでる夜で、「中秋の名月・十五夜」に並んで親しまれている。十五夜より晴れる確率も高く、秋の空に浮かぶ満ちた月を楽しむことができる。直前のハロウィーンの喧騒(けんそう)を忘れたくなるそんな夜は、クラシックかジャズ、加えてしみじみとした演歌が似合うのではないか。

     実際、ジャズ系は、注目作品が続々と発売されている。

     2度のグラミー受賞のグレゴリー・ポーターがシナトラと並ぶ巨星にささげた「ナット・キング・コール&ミー」(ユニバーサル)は、「スマイル」「モナリザ」など今でもカラオケで歌われるポピュラーソングを中心に収録。さらりと耳に心地よいジャズを聴かせる英国を中心に活動するステイシー・ケントは、ノーベル賞作家、カズオ・イシグロ作詞作品を2曲収録した「アイ・ノウ・アイ・ドリーム」(ソニー)を発表した。イシグロ作の「バレット・トレイン(弾丸列車)」は日本の新幹線を舞台にした作品。ボサノバやシャンソンも混じって、ケントらしい国際的で知的なアルバムになっている。

     バイオリンの牧山純子は15日にアルバム「ルチア」(ポニーキャニオン)を発売する。目玉は4楽章からなる大作「スロベニア組曲」。最近交流のある中欧スロベニアの美しさをテーマに、クラシカルな美をたたえたジャズ曲にしている。中学時代にベートーベンのピアノ協奏曲を弾いたことのあるジャズピアニスト伊藤志宏は、人間の闇を優しく読み解くグリム童話のような「毒ある寓話(ぐうわ)」(ポニーキャニオン)を発売した。ジャズの文法を再構築しそうな話題作である。

     透明感あふれる秋の夜長にぴったりの歌声は、サラ・オレインとラピスラズリの女性歌手2人。サラは「白い恋人たち」「ニュー・シネマ・パラダイス」「君の名は。」「007シリーズ」など映画の名曲を癒やしの声で録音した「シネマ・ミュージック」(ユニバーサル)。メジャーデビューCDとなるラピスラズリは「グリーンスリーヴス」「ユー・レイズ・ミー・アップ」などアイリッシュ系の有名曲を集めた「ケルティック・レターズ」(キング)を発表した。

     10月19日、東京・NHKホールで「虹の架け橋」コンサートが開かれた。音楽事業者協会が主催するチャリティーで五木ひろしや坂本冬美らトップ歌手も出演するが、新人もクローズアップされる。

     本格派の丘みどり、杜このみ、三丘翔太▽独特な声の魅力を持つ羽山みずき、大江裕、川上大輔▽歌謡ポップも守備範囲の工藤あやの、松阪ゆうき▽見た目と歌のギャップに驚くエドアルド▽大人の空気が濃厚な入山アキ子、北山みつき……。皆、実力も魅力もたっぷり。こんなスターの卵を“満月”に向けて応援するのも秋の夜長の楽しみか。

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