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    <大衆音楽月評>デジタル歌姫 時代に区切り=専門編集委員・川崎浩

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     北朝鮮のミサイルだ、衆院解散だと、9月は日本中を驚かせるニュースが多過ぎた。大衆音楽界では、もちろん、20日に発表された安室奈美恵の引退宣言である。

     10代前半から芸能活動を始め、間を置かずスーパースターになった後、いろいろな事件もありながら、デビューから25年。ストイックかつダイナミックに歌い踊る安室スタイルは精神的にも肉体的にも相当ダメージが大きいであろうと想像できる。四半世紀の活動に終止符を打ちたくなっても当然であろう。「突然」と感じるのは第三者だけで、本人は熟慮を重ねたに違いない。来年のステージを楽しみにすべきである。

     安室は、デジタル時代の先端を走る歌姫と捉えられるが、25年という時間は、芸能界に想像以上の変化をもたらしており、彼女もシングルは1999年まで8センチCDであった。ネット配信でダウンロードしたり、YouTubeで音楽を聴いたりするのが当たり前の世代にとっては、古く珍奇な物体に見えるはずだ。

     東京・赤坂の「ドリームガールズ」というショークラブが、安室引退宣言の翌週に33周年を迎えた。60年代のキャバレー全盛時に銀座で一、二を争う人気店だった「モンテカルロ」の流れをくむ「ニュー・モンテ」で歌っていた森本あきが、キャバレーの灯が消えようという頃「本物の歌手の実力とプライドを見せる場を継続させよう」と作った店である。

     ショーは、生バンドをバックに歌手だけが歌い、客には歌わせない。11年前の9月25日、森本はがんで亡くなったが、入院中の病院にバンドや歌手を呼び、ほかの患者やスタッフにショーを見せた気骨の持ち主であった。森本の死去など幾度かの危機を乗り越え、2代目ママの原田ミキが伝統を引き継いでいる。

     9月25日には、帝国ホテルで日本作曲家協会60周年の記念式典が開かれた。作曲活動を通して日本文化発展に寄与するために58年設立した団体。古賀政男、服部良一、吉田正、船村徹、遠藤実、服部克久、叶弦大、そして弦哲也という歴代会長の名前を見ただけでもその“格”が分かる。年末恒例「レコード大賞」の主催団体としても知られる。

     ただ、設立当初の「流行歌」時代から「歌謡曲」全盛の70年代までは、流行大衆音楽の作曲家と日本作曲家協会会員はほぼ重なるが、シンガー・ソングライターやバンド、さらにネットを舞台とする歌手が登場する時代に移り変わり、「プロ作家」の立ち位置はどんどん変化している。弦会長が「協会も“赤児がえり”である還暦を迎えた。初心に戻って作曲を見つめ直す」と語る通り、大衆歌謡の在り方までも問う時代になったのである。

     その「レコード大賞」の審査が9月から始まった。安室は、20年前の96、97年と「大賞」を連続受賞している。レコード大賞は来年60回。いろいろな「節目」が結び付きながら姿を現してくる。

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