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    <大衆音楽月評>危ない中年が与える生気=専門編集委員・川崎浩

    配信日: | 配信テーマ:Jポップその他

     桑田佳祐のソロアルバム「がらくた」(ビクター、8月23日発売)が、発売初週に16・8万枚を売り上げ、4日付オリコン週間ランキング1位を獲得した。桑田のソロ活動30周年記念盤ということで近年のヒット「Yin Yang」「ヨシ子さん」やNHK連続テレビ小説「ひよっこ」の主題歌「若い広場」など話題曲も収録しており、1位は当然であろう。とはいえ、この16・8万枚という数字は、今年のソロアーティストの売り上げでも1位という。桑田はサザンオールスターズから数えれば39年の活動歴を持つ61歳の歌手である。これを「日本の大衆音楽状況も成熟した」と取るか「新しい音楽が生まれない」と取るか、判断の難しいところである。

     桑田の特筆すべき点は「落ち着いていない」というところではないか。大物ぶって据わりのいい場所を求めているフシがない。まだまだ暴れそうな危ない雰囲気を感じさせる。それは大衆音楽の魅力の本質なのではないか。

     ちなみに、8月28日付のオリコン週間シングルランキングでは星野源「ファミリーソング」(ビクター)が、発売初週に19・2万枚を売り上げ、初登場1位を獲得した。この数字も、今年のソロアーティストで1番という。これ以上の数字を獲得しているのは「グループ」ということである。

     チャート1位常連のピアニスト、小曽根真がジャズに帰ってきた。小曽根は、近年クラシック界での活動が目立ち、ジャズファンをやきもきさせていた。ジェームス・ジーナス(ベース)、クラレンス・ペン(ドラムス)との「ザ・トリオ」による10年ぶりのアルバム「ディメンションズ」(ユニバーサル)を8月発表し、8、9、12、13日にブルーノート東京でツアーを行う。

     「僕のジャズの世界観を実現してくれるのは、このトリオしかない。3人が走りながら、同じ設計図を読み、別の線を書いているのに、立体的な一つの構造が浮かび上がっていく」とこのトリオの特別感を説明する。「互いの音を聴く力を要求し、聴こえた瞬間に“本当の音”“必然の音”を返さないと納得しない」と苦笑しながら手応えを実感している。

     小曽根も56歳である。クラシック、ジャズどちらかに落ち着いてもいい頃ではないか。

     「二つのジャンルはリズムに対する意識が根本的に違う。クラシックのすばらしさは圧倒的だが、どうしてもクラシックで作れないグルーブがジャズにはある。ただ、最近は、生きていることを表現するという点では同じだな、と思うことが多い」と二足のわらじ生活を語る。

     10月14、15日には東京文化会館とオリンパスホール八王子でドラムスのピーター・アースキンを招き、東京都交響楽団とコンサートも行い、11月はニューヨーク・フィルとの共演も待つ。

     小曽根も桑田同様、落ち着く気配はまるで見せない。“危ない中年”こそが大衆音楽に生気を与えているようである。

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