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    恍惚 ブラジルのビート アート・リンゼイ 13年ぶり新作

    配信日: | 配信テーマ:洋楽その他

     ◆ハモンドオルガンと融合
     ブラジルや米国で活躍するアート・リンゼイが、13年ぶりの新作アルバム「ケアフル・マダム」(Pヴァイン)を出した。ノイズ、ポップ、民族音楽と、自在に音楽の世界を駆け抜けてきたベテラン。その幅広い嗜好(しこう)を凝縮したかのような力作だ。(桜井学)
     プロデューサー業などで多忙だったリンゼイが、新作について考え出したのは数年前だった。本作にも参加しているバンドメンバーたちと演奏するうちに、「作りたくなった」という。
     本作で中心になっているのは、ブラジルの民間信仰、カンドンブレの儀式で使われる打楽器、アタバキの合奏だ。素朴で力強く、繰り返されるビートは、聴き手を恍惚(こうこつ)とさせる。カンドンブレはアフリカがルーツで、奴隷貿易とともにブラジルに伝わり、発展したとされる。
     「アタバキをブラジルで録音し、ニューヨークでそのリズムを聴きながら曲を作った」。リンゼイは米国生まれだが、少年時代をブラジルで過ごしている。「10代からずっと聴いてきたリズム。いつか使おうと思っていたんだよ」
     また、ハモンドオルガンの音も印象的だ。「(キリスト教の宗教音楽である)ゴスペルで使われている楽器。アタバキとは、なかなかフィットしないので、そこは工夫した」。異なるジャンルの音楽を融合させ、心地よいサウンドに仕上げるのは、得意技だ。「自分はノイズの中にも、様々なリズムを感じることができる。一つの音楽スタイルの中にも、いろいろな要素が詰まっているんだ」。だから異質なものでも、どこかにつながるポイントがある。それを見つければ、本作のような、斬新かつ楽しい音楽が生まれるのだ。
     1970年代後半、ニューヨークで結成したDNAは、リンゼイの放つ強烈なノイズギターで評判に。その後はジャズに接近したラウンジ・リザーズや、ブラジル音楽を取り入れた都会派ポップのアンビシャス・ラヴァーズ、ソロなどで活躍した。
     以前からソフトで、乾いた色気を感じさせるボーカルも評価されてきたが、本作でも、なまめかしい歌声を聴かせる。歌詞も、どこか官能的だ。「音楽、特にポップミュージックは、基本、官能的なものだからね。何がエロチックなのかは、年齢によって変わっていくけれど」。「蝶(ちょう)たちの対(ペア)を離せ 僕の歌の中心に」と歌う「アンペア」では、米詩人のエミリー・ディキンソンの作品やことわざなどを参照したという。
     旧作の一部が再発売され、本人や関係者のインタビューなどをまとめた「アート・リンゼイ——実験と官能の使徒」も出版された。

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