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    <POPSこぼれっ話>SEIKOとかおりの挑戦

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     松田聖子のアメリカンスタンダード集「SEIKO JAZZ」がジャズ・チャートを騒がせている。「スマイル」「追憶」「遥かなる影」など名曲を、いかなるジャンルも「ジャズ化」する名人、デビッド・マシューズの編曲で、聖子が料理する。どんなサウンドであろうが自分のキッチンに運び込み、自分の味にする技は、好き嫌いを超えた特別な領域にあるのは間違いない。12日には名門ヴァーヴ・レーベルから全米でも発売されるという。聖子は、フィル・ラモーンやデビッド・フォスター、ロビー・ネビルといったウルトラ級のプロデューサーと共闘しつつ、1980年代から2000年代まで何度も海外進出しているので、大騒ぎするほどの事件ではない。いつもの「挑戦」である。

      ★

     松田聖子は、1962年3月生まれでデビューは79年。香西かおりは63年8月生まれ。演歌デビューは88年であるが、81年「日本民謡大賞」で最優秀賞を受賞して、聖子と同じソニーからレコードデビューを果たしている。非常に近い場所で同じ時代を生きてきたと言っていいだろう。それゆえか、大きな音楽的な共通点がある。異ジャンルに挑戦する気迫の強さである。

      ★

     香西は、今年から来年にかけて30周年と位置付け、たくさんのCD発売やイベントを連発している。まず、民謡から演歌、歌謡曲、ジャズ、ラテン、フォークと全ジャンルを網羅したライブ盤「ザ・ライブ うたびと〜ステージシンガー」を発売。ベスト盤的な2枚組「30周年全曲集〜おかげさん」、さらに17歳からのソニー時代の音源も収録した「民謡全曲集〜口伝え」も発売した。記念シングルは喜多條忠詞、弦哲也曲「わすれ花」である。そして25日に東京・新宿文化センターで記念リサイタルを開催する。

     香西の真骨頂は「ザ・ライブ」であろう。もちろん手慣れた演歌の歌唱力も際立っているが、自分のスタイルに持ち込みつつ、当該ジャンルでも高い評価を受けるまで昇華させる腕力は、香西の最も輝く個性である。

     「自分の心が込められるなら、どんな種類でも私の歌として歌いたい。常に異種格闘技に挑んでいる感じが私かな」。強烈な挑戦者魂は、聴く者を心底興奮させる。この2人が、今同じユニバーサルにいるのも奇遇であろう。

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