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    世界有数のオペラハウス、コンサートホールで聴く音楽は、聴き手を異次元の世界へと運んでくれる

    配信日: | 配信テーマ:クラシック


     世界には高度な音響を誇り、威風堂々とした外観と凝った内装をもつオペラハウスやコンサートホールがいくつも存在する。

     そのなかで、とりわけ伝統と格式を重んじているのがヨーロッパのオペラ界を代表し、イタリア・オペラの最高峰に君臨するミラノ・スカラ座である。

     通常のオペラハウスは特にドレスコードを指定することはないが、ミラノ・スカラ座だけは観光客であろうともノータイでは入れない。みなロングドレスやタキシードで正装し、一種の社交場と化している。

     もっとも華やかなのがプルミエ(新作オペラの初日または新演出の初日)で、各界の大物が顔をそろえる。イタリア旅行の際は、ぜひオペラの殿堂に足を踏み入れ、現地の聴衆とともにオペラを楽しみたい。着飾ったイタリア人に囲まれて聴く最高のオペラは、異次元の世界へと運んでくれるからだ。

     アメリカに目を移すと、ニューヨークの文化と芸術の象徴的な存在、メトロポリタン歌劇場がトップに躍り出る。ここは通常の服装で入ることができる自由で開放的なところ。4000席という巨大なオペラハウスで広さと華麗さに目を見張るが、各人の座席の前には字幕が表示される小型の電子掲示板が組み込まれるなどこまやかな配慮も施されている。華やかさと親密さを併せ持ったところで、音楽家も演目も演出も、世界一流の布陣。館内のグッズ売り場も、非常に充実している。

     一方、世界の数あるコンサートホールのなかで、音響のすばらしさでトップの座を占めているのがウィーンの楽友協会(ムジークフェライン)。大ホールは「黄金のホール」と称され、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の本拠地となっている。毎年恒例の元日に行われるウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートは、このホールから世界に向けてライヴ放送される。

     黄金と真紅の内装も見事で、一度このホールでウィーン・フィルの演奏を聴くとやみつきになる。ウィーン旅行の折には、ぜひ本場のワルツを堪能してほしいと思う。

     音響のよさで定評のあるもうひとつのホールが、アムステルダムにあるコンセルトヘボウ。ここはロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の本拠地として知られ、近くにはゴッホ美術館や国立美術館などが点在する芸術地区に位置し、散策にも向いている場所である。

     このホールは比較的ラフな服装でOK。ただし、世界一流の指揮者やソリストがオーケストラと共演するため、最高レヴェルの演奏に触れることができる。ステージの真ん中に階段が設えてあり、その上部から指揮者が降りてくるというユニークな構造をもつ。聴衆も非常に親密的で温かく、気取らない。こういうホールで体験するクラシック音楽は、きっと旅の印象的な記憶になるに違いない。

    2017年3月30日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:伊熊よし子

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