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    井上鑑、神保彰、岡沢章の3人のAKIRAのプレイに、叫びだしたくなるほどの興奮が体中を駆け巡った

    配信日: | 配信テーマ:その他

    (取材・文/飯島健一)


     音楽プロデューサーでキーボーディストの井上鑑、ドラマーの神保彰、ベーシストの岡沢章という、日本のミュージックシーンを牽引する3人の“アキラ”によるスペシャルユニットAKIRA’S。恒例となったヤマハ銀座スタジオでのライヴ、今年は昼と夜の二公演が行われた。その夜の部の模様を、ユニークなMCも交えながらお届けしよう。
     
     約一年振りとなるAKIRA’Sのライヴは、井上作の「WALTZ FOR LADY」でスタート。タイトルのごとく優雅な井上のピアノと、寄り添うように響く岡沢のベース、そこに神保のジャジーなドラムが加わり、銀座の夜にふさわしい洗練された空間が生まれる。しかし、そのラグジュアリーな雰囲気を打ち破るようにタイトなドラムが鳴り、2曲目の「Tokyo Skyline」に突入。神保が1月にリリースしたアルバム『21』の収録曲で、「東京の美しい街並みをイメージした」という解説どおり、キーボードが奏でる都会的なメロディと、リズム隊の繰り出すシャープなビートが、首都高を疾走するようなイメージを脳裏に浮かばせる。

    「全員アキラということで始まったけど、それぞれ全然違う雰囲気の曲を持ち寄るので、音楽的にこんなに広がるとは、やってるアキラさんたちも知らず、非常に楽しんでいます」――そんな井上のMCに続いたのは、岡沢がセレクトしたマイケル・ジャクソンの「I Can’t Help It」。キーボードが木管系の音を奏で、サンバのリズムも加わったボサノヴァ風で演奏されたが、後半は岡沢と神保のリズムがどんどんダイナミックになってゆき、前半までは緩やかに揺れていた客席が激しくうねるほど、楽曲が大胆に変身していく。

    「Eleven Thirty」は、神保がベーシストのブライアン・ブロンバーグとのユニット“JBプロジェクト”でリリースした最新アルバムからのナンバーで、爆発的なドラミングで会場の温度はさらに上昇。その火照った体を冷ますように、今度は井上の穏やかなオリジナル2曲を披露。ジャズ・ナンバー「Absolute」のアーバンな雰囲気が、興奮に支配されていた身体を静かに落ち着かせ、美しいバラード曲の「Distant Guns Of August」では、井上の深みのあるボーカルが、興奮とは違う不思議な力を心の中に芽生えさせる。

     続いてMCでは、神保が本格的にドラムを始める前はギター弾きで、ジェームス・テイラーのコピーをしていたことが判明。すると井上と岡沢が、ジェームスのヒット曲「You’ve Got A Friend」を弾き始め、観客もはやしたてる。神保は照れながら冒頭のワンフレーズだけ歌ったが、世界的ドラマーの貴重なボーカルに、会場は大いに盛り上がった。

     そんな和やかな時間をはさんで、ライヴは岡沢セレクトの「Feeling Alright」で再開。ジョー・コッカーやジャクソン5も演奏したブルース・スタンダードで、岡沢はファンキーなベースを奏でながら迫力の歌声で熱唱。会場に熱気が戻ったところで演奏されたハービー・ハンコックの「Actual Proof」では、後半で強烈なインタープレイを披露。互いへの信頼が増した3年目ならではの真っ向勝負を観て、叫びだしたくなるほどの興奮が体中を駆け巡った。

     最後は、神保がMIDIドラム・トリガーシステムを使い、メロディやベースをドラムと一緒に鳴らす“ワンマンオーケストラ”の代表曲「JIMBOMBA」を、井上と岡沢も加わり情熱的にプレイ。

     演奏を終えて3人がステージを去っても、熱烈な拍手は止まず、アンコールで、岡沢のシブい歌声とアーシーなサウンドがマッチした「Stormy Weather」と、井上作のプログレッシヴなポップナンバー「Kick It Out」を演奏。それでも観客の興奮はおさまらず、ダブルアンコールで1曲目の「WALTZ FOR LADY」を今一度プレイ。オープニングよりもさらに柔らかい音色が心地よく、聴衆は宵闇に溶け込むような感覚を味わいつつ、ライヴは終了。

     この素敵な音楽体験をまた来年も味わいたいと、会場にいた誰もが思ったことだろう。



    「AKIRA’S Special Live Vol.3」

    日時:2017年2月25日(土)
    会場:東京・ヤマハ銀座スタジオ

    2017年3月24日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 

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