音楽ジャーナリスト&ライターの眼 ~今週の音楽記事から~

新聞社の音楽記事、音楽ライターによる書き下ろし記事を集めたウェブサイトです。(毎週、月・木更新)

音楽ライター記事

つぶやく・ブックマークする

    エアボーンが「イッツ・オール・フォー・ロックンロール」でモーターヘッドをリスペクト

    配信日: | 配信テーマ:洋楽



    オーストラリア出身のハード・ロック・バンド、エアボーンが2017年に公開したミュージック・ビデオ「イッツ・オール・フォー・ロックンロール」が話題を呼んでいる。

    彼らの最新アルバム『ブレイキン・アウタ・ヘル』(2016)からのこのナンバーは、2015年12月28日に亡くなったモーターヘッドのレミー・キルミスターに捧げる曲だ。“ハードで速く、自由なロックンロール”をプレイし続けたレミーを讃える歌詞が、ハードな曲調に乗せて胸にズンと来るが、ビデオにはさらに彼への敬意を込めている。

    レミーの映像を挿入しているのに加え、このビデオで注目なのはエアボーンが“ボマー”を頭上にして演奏していることだ。“ボマー”はモーターヘッドのステージでお馴染みの爆撃機型の照明機材で、1970年代以来バンドを照らし続けてきた。全英チャート1位を達成した名盤ライヴ・アルバム『極悪ライヴ』(1980)のジャケットでも、この“ボマー”を見ることが出来る。

    エアボーンは「イッツ・オール・フォー・ロックンロール」ビデオのために、レミーが亡くなってから封印されてきた“ボマー”を遺された関係者から借り受け、使用しているのだ。

    実はエアボーンとモーターヘッドの交流は長い。エアボーンのデビュー・アルバム『ランニン・ワイルド』(2007)から第1弾シングルとしてリリースされた「ランニン・ワイルド」のビデオはトラックの荷台でバンドが大音量で演奏し、パトカー軍団に追いかけられるという内容だが、トラックを運転しているのがなんとレミーだった。

    ただ、レミーは車を運転できないため、実際にはただ演技しただけだった。

    ちなみに彼は「1966年以来一度も運転をしていない」そうで、「ロサンゼルスに住んでいて、車がなくて困らないですか?」という筆者(山崎)の問いに対して、こう答えている。

    「女の子が俺に会いに来てくれるから問題ない。女の子と会う以外、大した用事なんてないだろ?普段世界中を飛び回っているから、家にいる時ぐらいゆっくりしたいんだ。歩ける距離にある酒場とストリップ・バーぐらいにしか行かない」

    なおレミーは2011年、フー・ファイターズの「ホワイト・リモ」ミュージック・ビデオにもカメオ出演しているが、このときもリムジンを運転する役柄だった。もちろん実際には運転していない。

    2008年に『ラウド・パーク08』フェスで初来日、約40分間の火を噴くようなステージで観衆を吹っ飛ばしたエアボーンだが、そのときのインタビューで筆者にこう語っていた。

    「俺たちはアイアン・メイデンやモーターヘッドのような、ラジオに尻尾を振らない、誇り高いロックンロール・バンドを尊敬している。だから俺たちも妥協したことはないし、これからもあり得ない。彼らからの影響はエアボーンの音楽性の血となり肉となっているよ」

    最後の来日となった2015年の『フジ・ロック・フェスティバル'15』で、レミーは最後の生命エネルギーを振り絞るようなライヴ・パフォーマンスを我々の心に刻みつけ、その5ヶ月後に旅立っていった。だが、その精神は後進のロックンロール・バンド達に受け継がれていく。エアボーンが「イッツ・オール・フォー・ロックンロール」で歌っているように、“彼の魂は今なおステージ上にいる”のである。

    2017年3月 2日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

    音楽ライター記事一覧を見る

    洋楽 のテーマを含む関連記事

    リズム重視してアレンジ チーフタンズのリーダー パディ・モローニ

    アイルランドを代表する伝統音楽のグループ、チーフタンズが来日公演を行う。現地の文化に根ざしながら、親しみやすいサウンドを展開。度々グラミー賞に輝き、ローリング・ストーンズやジョニ・ミッチェルら、有名どころとの共演も多い。長きにわたる活動について、リーダーのパディ・モロー...

    ライブ盤に込めた思い ジャクソン・ブラウン 人間の良心 信じている 

     米国のベテランシンガー・ソングライター、ジャクソン・ブラウンが公演のため来日した。社会や個人のあり方を世に問う誠実な姿勢が、世界中で支持されている。混迷する世界情勢の中、ジャクソンは我々に何を伝えていきたいのか。最新のライブ盤「ザ・ロード・イースト」(ソニー)に込めた...

    【ライヴ・レビュー】イエスfeaturingジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマン/2017年4月17日 東京 Bunkamuraオーチャードホール

    2017年4月、イエスfeaturingジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマンのジャパン・ツアーが行われた。日本公演が発表された時点では、来日公演はアンダーソン、ラビン&ウェイクマン(ARW)という名義で行われることになっていた。だが直前の4月9...

    2017年、日本に吹く熱風 / サンタナ『ロータスの伝説 完全版』とジャパン・ツアー

    これまで洋楽アーティスト達は数多くの伝説的ライヴ・アルバムを日本で録音してきた。ディープ・パープル『ライヴ・イン・ジャパン』やチープ・トリック『at武道館』、ボブ・ディラン『武道館』、エリック・クラプトン『ジャスト・ワン・ナイト』、スコーピオンズ『蠍団爆発!トーキョー・...

    世界的ベーシスト、ネイザン・イーストの公開リハーサルで見た、演奏が練り直され新たな響きが生まれる瞬間

    (取材・文/飯島健一) 卓越したプレイで数多のミュージシャンに信頼され、音楽ファンも魅了するベーシストのネイザン・イースト。今年1月に2ndソロアルバム『Reverence(レヴェランス)』を発表して、2月に来日。ビルボードライブ東京での公演前夜に開催された今回のスペシ...

     

    ページの先頭へ戻る

    • RSS
    • お問い合わせ