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    異色のコラボレーションで選曲のセンスが冴える!~荘村清志&SINSKEデュオ・コンサート

    配信日: | 配信テーマ:その他

    (取材・執筆/岡田聖夏)


    創作する上でも演奏する上でも、“意外性”は音楽をより魅力的にするためのエッセンスである。日ごろ演奏する機会の少ない楽器同士のコラボレーションなら、楽器の組み合わせそのものが意外性だ。

    春の兆しが見え隠れする2月11日(土)の午後、エレガント・タイム・コンサートに、ギターの荘村清志とマリンバのSINSKEが登場。円熟の域に達したギタリストとベテランながら多彩な活動でいつもフレッシュな若手マリンバ奏者という異色の競演。ここにもまた嬉しい意外性があった。

    モノトーンの出で立ちでステージに現れた二人は非常に絵になる。開口一番「ギターとマリンバのデュオは初めて」と口を揃え、高揚した面持ちで最初に取り上げたのは、思いがけないバロックの名曲、ヘンデルのソナタ イ短調(HWV362)。憂いを帯びながらも正確に時を刻むギターと、柔らかい音色のマリンバが繰り広げる世界は幻想的だ。撥弦楽器のギターと打楽器のマリンバという、共に音が減衰する性質を持つ楽器の響きがここまで豊かになるのだと、1曲目で早くも実感させられた。

    続いてはソロで互いの妙技を聴かせる。まず荘村が演奏したのは、スペイン生まれのギタリストF.ソルの曲、モーツァルトの「魔笛」の主題による変奏曲。「フィガロの結婚」にもギター伴奏により伯爵廷でアリアが歌われる場面があるが、荘村の手にかかると鮮やかなパッセージにもどこか宮廷風のゆとりが漂う。一方SINSKEは2本だったマレットを4本に増やし、スペインの流れからカタルーニャ地方の民謡を基にした「鳥の歌」を演奏する。パブロ・カザルスの編曲で親しまれるようになったチェロの名曲が細かい連打で歌われると、あたかも鳥のさえずりのように聴こえてくる。

    前半最後は、加藤昌則による「ケルト・スピリッツ」。スカボローフェアやグリーンスリーヴス、ダニーボーイなどの懐かしい民謡はやがて激しいアイリッシュダンスへと変わっていく。照明や足踏みなどの効果も取り入れた圧巻のステージは、雰囲気を一気にライヴ感あるものへと押し上げた。

    後半はプログラムに合わせてか、荘村がカラフルなジゴロ風シャツ、SINSKEがツィード風ジャケットに赤いネクタイへと衣装チェンジ。トークも軽やかになったところで荘村は、フランス生まれの打楽器奏者E.セジョルネの“カリエンタ”マリンバとギターのための二重奏曲は、まるで恐怖の“カリエンタ”だったと告白。確かにダイナミクスの差がはっきりして攻守の入れ替わりも目まぐるしい曲だ。対し、SINSKEは一音一音がはっきり響くこのホールで、ヘンデルのような曲をギターの巨匠と共演するのは恐怖だと明かす。

    続いて2曲はそれぞれのソロ。マリンバという楽器は正面を向いてステージに配置されると、演奏者がマレットを通して自身の音楽をどう表現したいのかを客席からつぶさに見ることができる。現代風のアレンジでテクニカルな一面から、ジャジーでゆったりした一面まで、幅広い表現が求められるガーシュウィンの「ポギーとベス」。この曲の細部にまで神経を研ぎ澄ましたSINSKEの表現は、聴き応えはもちろん視覚的にも大変見応えがある。一方、好対照を成していたのが荘村のヴィラ=ロボスだ。しんみりと紡がれるギターの名曲「5つの前奏曲」から第3番、第5番は艶やかな音色と絶妙なルバートが冴えわたった。

    マリンバとギターのレパートリーは少ないが、その分、選曲の自由度が高いとも言える。今回のように意外な楽器同士のコラボレーションでは、演奏者自身のプログラムの妙技が生きる。

    この日最後の曲はピアソラの「タンゴの歴史」。もともとフルートとギターで、アルゼンチン・タンゴの変遷を4楽章にわたって描いた大作だ。楽章ごとに様相の異なるタンゴが魅力的に歌い分けられ、二人の変わらぬ集中力とテンションで第4楽章「現代のコンサート」のクライマックスに到達した時には万雷の拍手が沸き起こった。

    アンコールには童謡の「浜千鳥」、イベールの「間奏曲」、ピアソラの「リベルタンゴ」と大サービスの内容で、再び喝采を浴びた二人のすがすがしい表情が実に印象的だった。



    「Elegant Time Concert~上質な時間を貴方に~ 荘村清志&SINSKE デュオ・コンサート」

    日時:2017年02月11日(土)
    会場:東京・ヤマハホール

    2017年3月16日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 

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