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    “知られざる名バンド”カルマ・トゥ・バーンが新作『Mountain Czar』を発表

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    アメリカのヘヴィ・ロック・バンド、カルマ・トゥ・バーンが2016年、新作『Mountain Czar』を発表した。

    ウェストヴァージニア州モーガンタウンで結成。ギタリストのウィリアム・ミーカムを中心に、インストゥルメンタル・ヘヴィ・ロック・トリオとして活動を行ってきた彼らはデビュー20周年を超えるが、ヘヴィでサイケデリック、怒濤のように畳みかけるアグレッシヴなサウンドがコアなファンから熱狂的に支持される一方で、その際だった個性ゆえにコマーシャルな成功とは一線を画してきた。

    まず彼らがインストゥルメンタル・バンドだということがある。歌詞のせいで音楽のイメージや世界観が狭められるのを避けるためにインスト路線を貫いてきた彼らだが、ビジネス面ではそれが必ずしもプラスには働いてこなかった。1995年にアナログ盤10インチEP『Wild, Wonderful』でデビューした彼らは大手インディーズ「ロードランナー」と契約するが、ファースト・アルバムに着手するにあたって、ヴォーカルを入れることを要請される。「オール・インストなら出さない」とまで言われて仕方なく、バンドはその場限りでジェイソン・ジャローズをシンガーに起用してアルバム『カルマ・トゥ・バーン』を制作。このアルバムは英米、そして日本盤CDも発売されたが、セールスは芳しくなく、バンドにとっても妥協の産物となってしまった。後に彼らはこのアルバムの楽曲を“本来あるべき姿”のインスト・ヴァージョンで再レコーディング、『Karma To Burn- Slight Reprise』(2012)として発表している。

    バンドがもうひとつ譲歩しなければならなかったのが、その曲タイトルだった。歌詞と同様に“世界観を狭めたくない”という理由で、EP『Wild, Wonderful』に収録された4曲には「One」「Three」「Seven」「Eight」という、数字のみのシンプルなタイトルが冠せられていた。だが「ロードランナー」はそれを許さず、『カルマ・トゥ・バーン』のヴォーカル曲には“普通の”英語タイトルが付けられている。

    バンドが再びインスト編成に戻ったこともあり、ファースト・アルバムがさほど成功を収めることもなかったせいか、レーベル側は彼らにあえてヴォーカル入りを無理強いすることなく、2作目のアルバム『Wild Wonderful... Purgatory』はインスト編成でリリースされた。この作品はヨーロッパのみ「ロードランナー」、アメリカでは「MIAレコーズ」からという変則的なスタイルで発売されているが、内容的には初期の最高傑作といえる素晴らしい出来映えとなっている。

    3作目『Almost Heathen』を2001年に発表したカルマ・トゥ・バーンだが、やはりブレイクを果たすことはなく、またベーシストのリッチ・マリンズのドラッグ問題によって、バンドは2002年に解散。メンバー達はそれぞれ別の道を進むことになった。

    ウィリアム・ミーカムはトレジャー・キャットに参加。リッチ・マリンズはスピーディーラーへの加入を経てイヤー・ロング・ディザスターを結成する。約7年の沈黙の後、カルマ・トゥ・バーンは2009年に再結成ライヴを行うことになった。このときリッチはイヤー・ロング・ディザスターのギタリストであるダニエル・デイヴィスを帯同。カルト的な人気を誇っていたヨーロッパでツアーを敢行している。
    (ダニエル・デイヴィスはキンクスのデイヴ・デイヴィスの息子。映画監督ジョン・カーペンターの音楽プロジェクトでもギターを弾いている)

    それから紆余曲折を経て、カルマ・トゥ・バーンはミーカムを中心に活動を続けている。3作のフルレンス作とツアーを経て、2016年にリリースされたのが『Mountain Czar』だ。

    全5曲、トータル23分という本作は“EP”あるいは“ミニ・アルバム”と呼ぶことも出来るが、バンド自身は“アルバム”と呼んでいる。スレイヤーの『レイン・イン・ブラッド』も29分で“アルバム”と呼ばれているし、本作はひとつのトータル性を生み出しているため、彼らにとっての最新アルバムといって差し支えないだろう。

    収録されているのは「Sixty-two」、「Sixty-one」、「Sixty」、「Sixty-three」というインスト曲と、トム・ペティの「ランニン・ダウン・ア・ドリーム」をイタリア語でカヴァーしたヴォーカル入りナンバー「Uccidendo Un Sogno」だ。歌っているのはイタリアのロック・バンド、NOONのステファニア・サヴィであり、バンドの音楽性に新たなディメンションを加えている。

    とはいえ、彼らのサウンドは初期から一貫しており、ミーカムはそのスタイルを“ヘヴィ・ロックにウェスタン音楽と1950年代のサーフ・ミュージックを加えた”と説明している。

    ちなみに彼らの作品のジャケットにはしばしば山羊頭の魔王や五芒星(ペンタグラム)など、サタニックなイメージが使われているが、歌詞のないインストのため、サタンや裸女などの要素はあくまでロックの“デンジャラス”な側面を表現しているそうだ。『Mountain Czar』のジャケットでも銃を手にした魔王が描かれている。

    残念なことに『カルマ・トゥ・バーン』以来日本盤CDはリリースされていないものの、その音楽は常にレッドゾーン圏内をキープしてきた。そして20年、機は熟した。“知られざる名ヘヴィ・ロック・バンド”カルマ・トゥ・バーンに再び注目すべき時が来たのだ。

    2017年1月12日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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