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    イギリスのチャートに見るブルースの活躍。ジョアン・ショウ・テイラー、ローレンス・ジョーンズらの台頭

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

     日本やアメリカではオリコンやビルボードなど、出版事業を兼ねた企業がヒット・チャートを発表する他、ショップのチェーンが独自のチャートを作成しているが、イギリスではオフィシャル・チャーツ・カンパニー(OCC)という専門機関が“公式”チャートを発表している。

     OCCは英国レコード産業協会(BPI)とエンタテインメント小売業団体(ERA)が共同出資して設立された団体で、イギリス国内の小売店(ダウンロード、ストリーミングを含む)の95%以上を網羅しているという。

     OCCによるイギリス公式チャートはウェブサイト(※)で見ることが出来る。筆者(山崎)の年齢か不勉強によるものか、シングル・チャートに入っているアーティストの半分以上、名前すら知らなかったりする。

     イギリスのチャートで見ていて面白いのは、“インディペンデント・アルバム・チャート”だ。“オフィシャル・アルバム・チャート”は編集盤や再発盤も対象となるため、2016年も終わろうというのにマイケル・ジャクソンやボブ・マーリーのベストやフリートウッド・マック『噂』などがエントリーしているが、“インディペンデント”チャートはインディーズを対象にしている。インディーズといっても『XLレコーディングス』のアデルやレディオヘッド、『ドミノ・レコーディングス』のアークティック・モンキーズなども“インディーズ”扱いなので、現在進行形のUKシーンを最もダイレクトに反映しているチャートだといえるだろう。

     2016年10月14日付のインディペンデント・チャートではオルター・ブリッジの『ザ・ラスト・ヒーロー』が1位となっているが、興味深いのはブルースあるいはブルース・ロックが多くエントリーしていることだ。2位にはアメリカの遅咲きブルースマン、シーシック・スティーヴの『キーピン・ザ・ホース・ビトウィーン・ミー&ザ・グラウンド』が初登場。20位のジョアン・ショウ・テイラー『ワイルド』は英国ブルース・ギター・ウーマンによる新作で、前週に7位でデビューしている。前々週に4位でデビューしたジョー・ボナマッサの『ライヴ・アット・グリーク・シアター』もチャートインしている。

     ジョアン・ショウ・テイラーがイギリスではかなりの人気を誇り、ロンドンでは2千人収容のシェパーズ・ブッシュ・エンパイアでコンスタントに公演を行っていることは、日本でもブリティッシュ・ブルース・マニア(どれだけの数いるかは不明)に知られているが、驚かされるのは30位にエインズリー・リスターの『アイズ・ワイド・オープン』が初登場していることだ。1990年代にデビュー、ブルースを軸にしたギタリスト・シンガー・ソングライターとして支持される彼の通算10作目となるスタジオ・アルバムはブルースの渋さとクオリティの高いロック・ソングライティングを兼ね備えた秀作だが、チャートインしたのは少なからず意外だった。

     2016年7月にはブリティッシュ・ブルース界の若手ブライテスト・ホープ、ローレンス・ジョーンズの『テイク・ミー・ハイ』もインディペンデント・チャートの33位にランクインしている。1992年生まれの彼は英国ブルース大賞『ブリティッシュ・ブルース・アワード』の“ヤング・アーティスト”部門で2012年に次点となったのを皮切りに、2013・2014・2015・2016年と 連続して受賞。永遠の若手っぽい扱いを受けていたが、本作でメインストリームに王手をかけることになった。

     ローリング・ストーンズやヤードバーズ、エリック・クラプトン、フリートウッド・マックなど、数々の優れたアーティストを生んできたブリティッシュ・ブルースだが、第一線ミュージシャンの高齢化と若手不足により徐々に弱体化。2016年8月にブルース専門の月刊誌『Blues Magazine』が休刊となり、期待株だったオリー・ブラウンがレイヴンアイでヘヴィ・ロックへ転向するなど、近年やや勢いを失いかけてきた。だが最新インディペンデント・チャートを見ると、英国のブルースはまだまだ元気だ。

     アメリカで生まれたブルースがイギリスに渡り、独自の進化を遂げてきたブリティッシュ・ブルース。古くて新しいこの音楽スタイルに、これからも注目していきたい。


    ※OCCによるイギリス公式チャート http://www.officialcharts.com

    2016年10月27日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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