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    2016年、モダン・ロックふたたび。サード・アイ・ブラインド、ソウル・アサイラムが来日

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    2016年8月20日(土)から21日(日)、千葉・幕張と大阪で『サマーソニック2016』フェスティバルが開催された。

    レディオヘッドとアンダーワールドの2トップをメインに迎え、オフスプリング、アット・ザ・ドライヴ・イン、ウィーザー、THE 1975などが出演して日本のロックの夏を盛り上げたが、トップ・ライヴ・パフォーマーとしての存在感を見せつけたのがサード・アイ・ブラインドだった。

    幕張では初日の午後6時台、レインボー・ステージに出演した彼ら。1990年代からアメリカのロック・シーンの第一線で活動してきたライヴ・バンドならではの厚みのある演奏で、「セミ・チャームド・ライフ」「ジャンパー」などのヒット曲を披露。たまたま通りがかった彼らを知らない観客もふと足を止めて聴き入るほどだった。『サマーソニック2016』の隠れたヒーローが彼らだったと言えるかも知れない。

    だが、古くから彼らを知るファンからしてみれば、そのライヴの凄さはもはや当然と言っていいものだ。サード・アイ・ブラインドはアメリカのモダン・ロックを代表する実力派バンドのひとつなのである。

    彼らがデビューした1990年代半ばは、まだインターネットが普及しておらず、youtubeもストリーミングもなかった時代。MTVはあったものの、若手バンドは地道にツアー活動でファンを増やしていった。グリーン・デイやアラニス・モリセットですら最初の2作ではブレイクに至らず、3作目にしてようやく成功を掴んだのだった。

    サード・アイ・ブラインドのデビュー作『サード・アイ・ブラインド』は1997年に発表されて、全米チャート25位という中規模のヒットを記録した。だが彼らはそのレベルの成功に甘んじることなく精力的にライヴを行う。その結果、アルバムは108週間連続チャートインという快挙を果たし、アメリカだけで600万枚のセールスを記録した。

    近年、アメリカのモダン・ロックが再評価を得ているのは、きわめて納得がいくことだ。 ノンストップの苛酷なツアーで鍛え上げたロック・バンドには、叩き上げならではの迫力と説得力がある。しかも60代・70代が珍しくもない高年齢のクラシック・ロックと異なり、体力的にも脂の乗り切った年齢とキャリアだ。コレクティヴ・ソウル、カウンティング・クロウズ、マッチボックス20、近年ではブルース路線に転向したスピン・ドクターズなどは今もなお、世界のどこかでツアーを続けており、熱い声援を浴びている。

    ちなみにこの“モダン・ロック”という言葉は定義がはっきりせず、日本ではジャンルとして定着していないが、アメリカでは1960年代から1980年代までの“クラシック・ロック”に対して、1990年代以降にデビューしたロック・アーティストを指している。全米ラジオ局ではモダン・ロックとオルタナティヴ、グランジなどは厳密に分けることなく、ニルヴァーナもレッド・ホット・チリ・ペッパーズもデイヴ・マシューズ・バンドもサード・アイ・ブラインドも一緒くたにオンエアしていたし、米ビルボード誌で1988年にスタートした“モダン・ロック”チャートにはスージー&ザ・バンシーズなどもエントリーしていた(ちなみに“モダン・ロック”チャートは2009年6月に“オルタナティヴ・ソングズ”チャートと名前を変えている)。

    ただ、狭義のモダン・ロックは昔ながらのオーセンティックなロックを貫きながら新鮮なアプローチを志すアーティスト、と定義することが出来るだろう。

    そういう意味でモダン・ロックを象徴する存在が、ソウル・アサイラムだ。

    1981年結成と、かなりのベテランである彼らは初期はパンクやサイケデリアを加えたロックを志向、インディーズで活動していたが、1992年のアルバム『グレイヴ・ダンサーズ・ユニオン』で大ブレイク。シングル・カットされた「ランナウェイ・トレイン」は1990年代をあてもなく生きる若者のアンセムとなり、行方不明の未成年者を登場させたミュージック・ビデオも話題を呼んだ。

    続く『レット・ユア・ディム・ライト・シャイン』(1995)とシングル「ミザリー」もヒット。アメリカのモダン・ロックというと、真っ先に彼らの名前を挙げる音楽ファンも少なくない筈だ。

    現在でもシンガー兼ギタリスト、デイヴ・パーナーを中心に活動を続けるソウル・アサイラムが2016年11月、21年ぶりのジャパン・ツアーを行うことになった。一連のMTVヒット曲もさながら、筋金入りのライヴ・パフォーマーとして支持されている彼らゆえ、最高品質のモダン・ロックに酔いしれる夜になるだろう。

    なおサード・アイ・ブラインドとサンフランシスコの同郷で「ミート・ヴァージニア」「ドロップス・オブ・ジュピター」「コーリング・オール・エンジェルズ」などのヒットで知られるトレインは2016年、レッド・ツェッペリンの『レッド・ツェッペリンII』を完全再現した『ツェッペリンへ胸いっぱいの愛を/ダズ・レッド・ツェッペリンII』でファンをあっと驚かすなど、モダン・ロックは今、攻めの姿勢を失うことなく、ひとつのムーヴメントとして勢いに乗っているところだ。

    主要バンドはいずれも20年以上のキャリアを持つなど、決して“モダン”とは言えないかも知れないモダン・ロックだが、そのサウンドはいつまでもモダンな鮮度を保ち続ける。2016年、モダン・ロックが再びロック界を席巻しようとしているのだ。



    <公演情報>
    SOUL ASYLUM Japan Tour 2016

    11月8日(火) 東京TSUTAYA O-EAST
    開場18:00 / 開演19:00

    11月9日(水) 名古屋クラブクアトロ
    開場18:00 / 開演19:00

    11月10日(木) 大阪・梅田クラブクアトロ
    開場18:00 / 開演19:00

    問い合わせ:M&Iカンパニー 03-5453-8899 / http://www.mandicompany.co.jp

    2016年9月22日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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