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    ピンク・フロイドのレア映像/音源アーカイヴ『The Early Years 1965 - 1972』が2016年11月発売

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    2016年11月に発売となるピンク・フロイドの27枚組CD & DVD/Blu-rayボックス『The Early Years 1965 - 1972』が衝撃を呼んでいる。

    1960年代、サイケデリア全盛のロンドンでデビュー。イギリスを代表するプログレッシヴ・ロック・グループとなった彼らが1973年に発表したアルバム『狂気』は全世界で4,500万枚という空前のヒット。米ビルボード誌のアルバム・チャートでは1973年から1988年まで、741週連続チャートインという前人未踏の記録を樹立している。

    今回のボックスは『狂気』に至る直前までの初期のピンク・フロイドのレアな映像や音源を集めたものだ。TV用に撮影されたライヴ・パフォーマンスやラジオ音源、プライベート・リールなどが詰め込まれており、映像が15時間35分、音源が12時間以上というから凄まじい。

    『ライヴ・アット・ポンペイ』や1967年ロンドンUFOクラブでのライヴ、また劇場映画『モア』『ラ・ヴァレ』などの“定番”映像も収録されているが、1969年ベルギーでのフランク・ザッパが飛び入りした「星空のドライヴ」、未発表アルバム『ザ・マン』『ザ・ジャーニー』リハーサル映像、1971年の『箱根アフロディーテ』でのライヴなど、気絶しそうな歴史的映像/音源が幾つも収められている。

    発売前から、本作は『ビートルズ・アンソロジー』以来の重要なアーカイヴ作品と呼ばれている。それは決して誇張ではないだろう。

    これだけの超巨編となると気になるのはお値段だが、本稿を書いている2016年8月の時点で、6万〜7万円台になりそうな按配だ。これだけの大ボリュームと内容を考えれば決して高額とはいえない本作だが、やはりお財布には相当のダメージを食らう。既発アルバムのデラックス・エディションのボーナス・トラックを一度聴いたら満足してそれっきり...ということも少なくないし、二の足を踏むファンもいるだろう。筆者(山崎)は輸入盤を通販サイトで購入、発売日(=引き落とし日)までに円高が進んで値段が下がることを祈っているところだ。

    しかも、出費を強いられるのは今回だけではない。公式発表はないものの、これから『1973-1976』『1977-1983』『1987-2015』(年度分けはテキトウ)という後続ボックス・セットが発売されるならば、トータル100時間を超えることが想像される。そうなると出費も20万円を超えることになるだろうし、部屋の置き場所にも頭を悩ますことになりそうだ。

    ピンク・フロイドの場合、ちゃんと最後までシリーズが続くかというのも心配だ。2011年から2012年にかけて、“イマージョン”シリーズとして『狂気』『炎』『ザ・ウォール』の3作のデラックス・エディションが発売。未発表デモ・テイクやコンサート時にスクリーンに映し出される映像などを収録、それぞれ5〜7枚という内容のため、これから全アルバムが“イマージョン”シリーズで発売されたらどうなってしまうのだ!?...と世界中のファンを恐怖におののかせた。ただ、このシリーズは3タイトルで打ち止めに。ファンは少なからず残念に思った一方で、ほっと胸をなで下ろしたのだった。

    ロジャー・ウォーターズやデヴィッド・ギルモアはソロ・アーティストとして活動を続けるが、ピンク・フロイド再結成はもうないと明言している。オリジナル・アルバムも2014年の『永遠』で打ち止めのようだ。現役バンドとしてのピンク・フロイドは終止符を打ったと言っていい。だが彼らは膨大な映像と音源を我々ファンに残してくれた。『The Early Years 1965 - 1972』は、偉大なる軌跡を記録した歴史的アーカイヴ第1弾だ。世界中の数多くのファンが本作を購入し、ピンク・フロイドの音楽に浸ることになるだろう。だから彼らの半世紀におよぶ映像の旅路を収めたこのシリーズを、ぜひ完結させてもらいたい。


    <リリース情報>
    ピンク・フロイド 『THE EARLY YEARS 1965-1972』(ソニー・ミュージックジャパン)
    2016年11月11日発売
    700セット限定 輸入盤Only 27枚組Box Set (ヨーロッパ・プレス)
    27枚組(10CD+9DVD+8BD)/全7巻書籍形式のパッケージ

    ボックスからのハイライト盤2CD『The Early Years - CRE/ATION』(国内盤/品番・価格他検討中)も発売予定。

    2016年8月11日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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