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    フランスの誇るシンセサイザー奏者ジャン・ミッシェル・ジャールが『エレクトロニカ』二部作で豪華ゲストたちと共演

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    2016年5月にジャン・ミッシェル・ジャールのニュー・アルバム『エレクトロニカ2:ザ・ハート・オブ・ノイズ』が発売となった。

    フランス出身のシンセサイザー・ミュージックの大御所であるジャールの新作は『エレクトロニカ1:ザ・タイム・マシーン』(2015)に続く2部作の後編だ。彼と新旧ミュージシャンとのコラボレーションからなるこの作品、『1』には3D(マッシヴ・アタック)、モービー、ヴィンス・クラーク(イレイジャー)、ピート・タウンゼント(ザ・フー)、タンジェリン・ドリーム、ジョン・カーペンターらがゲスト参加していたが、『2』にもペット・ショップ・ボーイズ、プライマル・スクリーム、ハンス・ジマー、ゲイリー・ニューマン、ジ・オーブ、YELLOら、そしてアメリカの機密情報をリークして海外逃亡中のエドワード・スノーデンが何故か参加している。

    『幻想惑星』(1976)、『軌跡』(1978)、『磁界』(1981)などのアルバムによって、日本でもよく知られるジャールだが、本国フランスでは国民的アーティストだ。そもそもヨーロッパ大陸では、シンセ・インストが日常的に聴かれている。クラフトワークやマイク・オールドフィールド、クラウス・シュルツェのソロ作などは“プログレッシヴ・ロック”でなく、一種のムード・ミュージック的なポジションで、一般リスナーにも受け入れられているのだ。

    日本においても、1998年のサッカー『FIFAワールドカップ』公式テーマソングとしてジャールと小室哲哉の共演ナンバー「TOGETHER NOW」が使われたり、リングス・ロシアのヴォルク・ハンが入場テーマ曲にアルバム『スペース・ランデヴー』(1986)からの「セカンド・ランデヴー」を使用するなど、知らずして彼の音楽を耳にしている人は日本にも多くいるだろう。

    ジャールの人気をはかるひとつのバロメーターとして、その観客動員数がある。彼が1979年7月14日、パリのコンコルド広場で行ったフリー・コンサートには100万人が集まり、ギネスブックに掲載された。それから1986年4月5日、アメリカのヒューストンで行われたテキサス州150周年コンサートには150万人、そして1990年7月14日、フランス革命200周年記念コンサートでは250万人と、次々と記録を更新。1997年9月6日、ロシアのモスクワ設立850周年記念式典の一環として行われたライヴにはジャールやルチアーノ・パヴァロッティ、エフギニー・キーシンらが出演、350万人という観客数は現在でもギネスブックの世界記録だ(ロッド・スチュワートが1994年に行ったコパカバーナでのライヴとタイ記録)。

    彼はまた1981年には西洋の音楽家としては初めて中国の北京で2公演・上海で3公演のライヴを行い、12万人を集めた。この模様は『コンサート・イン・チャイナ』としてライヴ・アルバム化されている。
    (余談だが日本のゴダイゴはそれに先駆けて1980年、ネパールのカトマンズで6万人を集めた公演を行っている。1985年のワム!北京公演は1万5千人だった)

    また、1998年7月14日にはパリのエッフェル塔前広場で『RENDEZ-VOUS '98 ELECTRONIC NIGHT』を開催。60万人とも100万人ともいわれる観衆が目撃したこのライヴ・イベントでは小室哲哉やアポロ440らエレクトロニック・アーティスト達との共演が実現した。ちなみにこのライヴにはマーク・パンサーも出演している。

    ジャールと小室はプロジェクト“THE VIZITORS”を結成、2000年の大晦日には沖縄で21世紀記念コンサート『Rendez-vous In Space 2001』も行っている。このイベントには『2001年宇宙の旅』などの作家アーサー・C・クラークも参加したが、小室ファミリーのブームの終焉のせいもあり、プロジェクトは長続きせず。当初予定されていたツアーも実現しなかった。

    なお、ジャールの観客動員に関しては異論もあり、フランス革命記念日などの祭典・イベントは彼のライヴがなくとも数百万人が集まったのでは……?という疑問もある。

    確かに、同じフランス出身のダンス・アーティスト、セローンは1991年に東京湾花火大会でコンサートを行っているが、「セローンの東京でのライヴには80万人が集まった」といわれると、ちょっと違う気もする(注:セローン本人の公式サイトにはそう記されていない。あくまで外部による彼に関する記述)。

    とはいえ、ジャールが世界で最も大勢の人間の目に触れたアーティストの一人であることは間違いないだろう。

    彼の音楽活動が壮大なスケールなのは、 『アラビアのロレンス』などで知られる映画音楽の巨匠モーリス・ジャールを父に持ったことも関係があるのかも知れない。

    ところでジャールがヨーロッパのお茶の間で有名なのはその音楽活動に加えて、その女性遍歴、ゴシップ的な関心も理由だと思われる。

    彼の2人目の奥方は女優のシャーロット・ランプリング。『愛の嵐』での彼女を見て、サスペンダー&ナチ帽のフェチになった男性も少なくないだろう。そして漫画『リングにかけろ』でドイツJrのスコルピオン(男)が同じ格好をしているのに激怒した日本のファンもいるに違いない。

    一見近寄りがたいクール・ビューティでありながら、『未来惑星ザルドス』(1974)や『オルカ』(1977)、『マックス、モン・アムール』(1986)など、絶妙な出演作品のチョイスでもファンの多い彼女。矢作俊彦が漫画『気分はもう戦争』(画・大友克洋)で「シャーロット・ランプリングまであと一歩だあ」と言うのも納得だ。

    シャーロットとの離婚後に彼が交際したのがイザベル・アジャーニというのもポイントが高い。ヴェルナー・ヘルツォークの『ノスフェラトゥ』やリュック・ベッソンの『サブウェイ』などのヒロインを演じた女優の彼女だが、忘れてはならないのが『ポゼッション』で地下道でギョエーと叫びながら暴れてゲロを吐いてタコとファックする役柄だ。この映画で彼女の夫を演じるのが『オーメン3』の大人になったダミアンことサム・ニールというのも、本稿とまったく関係ないが言及しておきたい。

    イザベルとは結婚には至らなかったジャールだが、彼女との破局後に結婚したのがやはり女優のアンヌ・パリロー。『ニキータ』のニキータである。さすがジャールとしか言いようがない。

    アンヌとは2010年に離婚、2016年8月に68歳となるジャールゆえ、さすがにロマンスは封印かも知れない。だが、その音楽活動は止まることがなく、ブラーのデーモン・オルバーンらが参加するプロジェクト、ゴリラズとのコラボレーションも行われるという。

    デビューから45年、大観衆を魅了してきたジャン・ミッシェル・ジャール。彼のシンセサイザーは、今もなお鳴り響く。

    2016年7月28日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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