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    懐かしのポプコンは、鮮やかに思い出を呼び覚まし、 新たなエネルギーを与えてくれた

    配信日: | 配信テーマ:Jポップその他

    (取材・文/飯島健一)

     1970~80年代の日本のポップス・シーンを鮮やかに彩った、ポプコン出身のアーティストが集結したライヴイベントが、4/29(金)に府中の森芸術劇場でおこなわれた。懐かしの曲で若き日々を思い返しながら、今なお走り続けるアーティストたちの姿にパワーをもらえたコンサートの模様をお送りしよう。

     ヤマハポピュラーソングコンテスト、通称ポプコン。1969年から86年まで開催され、プロの世界を目指すアマチュア・ミュージシャンたちが登竜門として挑んだ音楽コンテストだ。ここで実力を認められた人たちが後にプロ・デビューし、ヒット曲を次々に世に送り出したことから、ポプコンは当時の若者たちにとって良質な音楽の発信源であり、純粋な憧れでもあったに違いない。

     会場には “当時の若者”たちが大集合。ステージ下手から三浦和人とChageが開演宣言のために登場し、会場は盛大な拍手に包まれた。

     デビュー当時、渋谷でふたりが遭遇したという貴重なエピソードで会場を温めたところで、三浦のステージがスタート。彼が組んでいたフォーク・デュオ“雅夢”のデビュー曲で、第19回ポプコンで優秀曲賞を受賞した「愛はかげろう」。その美しいピアノのイントロとスタイリッシュなサウンド、そしてせつなげな歌声に、会場からため息が聞こえる。発表された1980年から30年以上が経っているのに、いまだに心を揺さぶることができるとは……コンサートが始まってほんの数分だが、いきなり音楽の力の強さを思い知らされた。

     三浦に紹介されて登場した相曽晴日は、第20回の入賞作「コーヒーハウスにて」を演奏。さまざまな人が集う喫茶店の風景と、恋人に別れを告げられた青年の心模様を描く感情たっぷりの歌声が、リリカルなピアノにのせて客席の隅々にまで届けられる。それを聴いていて、音楽で胸をときめかせた日々の感覚が呼び覚まされたのだろう、拍手に交じるざわめきが大きくなった。

     続く下成佐登子は、第15回九州本選会でグランプリを獲得した「秋の一日」を弾き語りで披露。彼女のデビュー曲でもあるこの曲は、もともとしっとりと切ないナンバーだったが、弾き語りによってその繊細な世界観がさらに引き立てられ、アーティストとともに楽曲が“成熟”しているのを感じさせてくれる。

     4番手の渡辺真知子は、第9回で川上賞(審査員特別賞)を受賞した「オルゴールの恋唄」を弾き語りで演奏し、2曲目に大ヒット曲「かもめが翔んだ日」を用意していた。コンサート冒頭から、どちらかといえばじっくりと聴くタイプの曲が続いていたが、一転、彼女のパワフルな歌声に引っ張られて手拍子が始まり、会場は熱気で包まれていった。

     コンサート後半に入り、再び登場した三浦の紹介で、Chageのステージがスタート。演奏したのは、第15回福岡大会で、Chageがソロでグランプリを獲得した「夏は過ぎて」。アコースティック・ギターで参加した三浦とのハモリで会場を沸かせ、さらに、こちらもアマチュア時代から歌い続けているというバラード曲「終章(エピローグ)〜追想の主題」を披露。じっくりと歌い上げるChageに、会場からは熱烈な拍手が贈られた。

     そのChageに呼ばれて登場したのは、26年振りのステージ復帰となる石川優子。大ヒット曲「シンデレラ サマー」を歌うその声はいまだみずみずしく、ファンの心を盛り上げたところで、Chageも加わって大ヒット曲「ふたりの愛ランド」を熱唱。これには会場も総立ちで、熱烈な手拍子と声援でふたりのステージをバックアップ。かつて夏を盛り上げたこの曲で、一足早い夏気分が堪能できた。

     7組目に登場したのはスリーハンサムズ。NSPの中村貴之と平賀和人に、ふきのとうの細坪基佳が加わったスペシャル・ユニットで、「あせ」「白い冬」といった、それぞれのグループの代表曲を披露。惜しくも2005年に亡くなったNSPのリーダー、天野滋作詞・作曲のヒット曲「夕暮れ時はさびしそう」では、♪ごめんごめん~という歌詞に合わせて、頭をぽかぽかと叩く振り付けのユーモラスなステージングで楽しませてくれた。

     そしてこの日の最終章は、出演者全員がステージに揃い、クリスタルキング、あみん、アラジン、中島みゆきといった、ポプコン出身アーティストのヒット・メドレーで鮮やかに締めくくった。かつて素敵な音楽で胸をときめかせてくれたアーティストたちが、何十年を経た今でも、かつてと変わらず胸を躍らせてくれる。アーティストのパワー、音楽のパワーを、多くの人が実感したことだろう。



    「僕らのポプコンエイジ~Forever Friends, Forever Cocky Pop~」
    日時:4月29日(金)
    会場:東京・府中の森芸術劇場


    ※同イベントは、以下でも開催。

    日時:5月14日(土)
    会場:千葉・市川市文化会館(大ホール)

    日時:5月21日(土)
    会場:埼玉・さいたま市文化センター(大ホール)

    2016年5月19日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 

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