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    フランク・カタラーノ & ジミー・チェンバレン・クインテット、2016年5月来日。スマッシング・パンプキンズのドラマーが奏でる本気のジャズ

    配信日: | 配信テーマ:ジャズ洋楽

    1991年にアルバム『ギッシュ』でデビュー、ロックの第一線で活動してきたスマッシング・パンプキンズ。『サイアミーズ・ドリーム』(1993)、『メロンコリーそして終りのない悲しみ』(1995)などのヒット作を発表、活動休止を挟みながら今日でも熱狂的に支持される彼らは『ティアガーデン・バイ・カレイドスコープ』三部作の完結編となるアルバムを2016年に発表する予定だ。さらに2016年3月には現在ソロで活躍する、元メンバーのジェームズ・イハと16年ぶりにライヴ共演するなど、常に話題を提供し続けている。

    ヴォーカリスト兼ギタリストのビリー・コーガンが大半の曲を書き、実質彼のワンマン・バンドともいわれるスマッシング・パンプキンズだが、そのビリーが最も信頼を置くドラマーがジミー・チェンバレンだ。ビリー以外のメンバー交替が相次ぐ中、ジミーはバンドの黄金期を支え、一時は離脱するも、2015年に復帰を果たしている。

    そのジミーが本格派ジャズ・ドラマーであることは、熱心なファンだったらよく知るところだ。彼の父親と兄ポールの影響で9歳のときにドラムスを始めた。彼は、後にヤニーのバンドに加入するチャーリー・アダムズの元で学び、ジーン・クルーパやバディ・リッチのプレイから影響を受けている。

    セミプロ・バンドで演奏していた彼を誘ったのが最初期のスマッシング・パンプキンズだった。当時ライヴでドラム・マシンを使っていた彼らの演奏を見て、あまりのヘタクソぶりに唖然としたジミーだったが、ビリーのソングライティングに大きな可能性を感じて、バンド加入を承諾したのだという。

    そんなジミーがジャズ愛を解き放つのが、サックス奏者フランク・カタラーノとの双頭ユニットだ。

    フランクはシカゴ在住のミュージシャンで、ジャズを軸にしながら様々なスタイルでプレイしてきたサックス奏者だ。十代の頃からプロとして活動してきた彼はティト・プエンテからトニー・ベネット、ジェニファー・ロペス、デスティニーズ・チャイルド、ミニストリー、レス・クレイプールなどと共演してきた。

    あらゆる音楽スタイルに精通しながらジャズを愛するジミーとフランクが合体するのは、もはや必然だった。彼らは長年友人として交友を育んできたが、初めて共演することになったのが2011年だった。

    交通事故に遭ったフランクは(飲酒運転の自動車に追突された)、入院中に「ジョン・コルトレーンの『至上の愛』を模倣せず、魂を受け継いだ音楽をやりたい」と思い立つ。そんな理想を実現させるために声をかけられたのがジミー、そして元メガデスのクリス・ポーランド(ギター)、元ジミー・チェンバレン・コンプレックスのアダム・ベンジャミン(キーボード)だった。彼らは2014年にEP『Love Supreme Collective』を発表している。

    2人のコンビネーションにマジックを感じたフランクとジミーは、続いてアルバム『God’s Gonna Cut You Down』を2015年に発表。そして“三部作の完結編”となる『Bye Bye Blackbird』を2016年4月にリリースする。コルトレーンやマイルス・デイヴィスもプレイしてきたジャズ・スタンダード「バイ・バイ・ブラックバード」をタイトルに冠した本作には、デヴィッド・サンボーンも参加している。

    「三部作で“ジャジーエスト=最もジャズしている”」と2人が断言する『Bye Bye Blackbird』だが、このアルバムを発表するタイミングで、初の共演来日公演が実現することになった。2016年5月、“フランク・カタラーノ & ジミー・チェンバレン・クインテット”名義で行われるこのライヴでは、ジャズを内側からも外側からも熟知し、そして愛してやまない彼らならではの強力なステージ・パフォーマンスが繰り広げられるだろう。

    彼らと共にプレイするのは、ジョン・エサリッジとの共演作もあるヴィック・ジュリス、ニューヨークの若手トップ・ジャズ・ピアニストのテオ・ヒル、シカゴのセッション・シーンの最前線で活躍するベーシストのステイシー・マクマイケルという3人だ。

    フランクとジミーの来日公演は、アルバム三部作から新たに未来へと撃ち出される音楽のカタパルト(射出機)だ。伝統から革新へ、2016年、彼らはジャズをどこにいざなおうとするのか。



    <公演情報>
    FRANK CATALANO & JIMMY CHAMBERLIN QUINTET
    フランク・カタラーノ & ジミー・チェンバレン・クインテット

    日時:2016年5月10日(火)- 5月13日(金)
    [1st.show] open 5:00pm / start 6:30pm
    [2nd.show] open 8:00pm / start 9:00pm

    メンバー:Frank Catalano (sax), Jimmy Chamberlin (ds),
    Theo Hill (p), Vic Juris (g), Stacy McMichael (b)

    公演公式ウェブサイト:
    http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/frank-catalano_jimmy-chamberlin/

    2016年4月 7日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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