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    2016年4〜5月、元カジャグーグーのリマールとニック・ベッグスが相次いで来日

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    カジャグーグーは1980年代UKポップ・ミュージックを代表するバンドのひとつである。1983年にデュラン・デュランのニック・ローズがプロデュースした「君はToo Shy」でデビューした彼らは一躍イギリスを代表するポップ・グループとなり、“先輩”であるデュラン・デュランやカルチャー・クラブ、スパンダー・バレエなどと共に世界進出を成し遂げた。同年発表されたデビュー・アルバム『君はToo Shy』(原題『White Feathers』)も全英チャートのトップ5入りを果たし 、世界的なヒットを記録している。

    だが、カジャグーグーの成功は長くは続かなかった。同年秋、看板シンガーだったリマールが解雇され、ベーシストのニック・ベッグスがヴォーカルも兼任することになる。その原因は“音楽性の相違”とされているが、リマールは電話1本でクビになったことについて「裏切られた。バンドに成功をもたらした結果が、この仕打ちだった」と語っている。

    その後、カジャグーグーはアルバム『アイランズ』(1984)、そしてカジャと改名して『カジャ3』(1985/原題『Crazy People’s Right To Speak』)を発表するが、セールスは振るわなかった。バンドは1985年の終わりに解散を発表する。

    バンドの2人のソングライターだったリマールとニックのその後のキャリアは、きわめて対称的なものだった。

    リマールはソロ歌手に転じ、「オンリー・フォー・ラヴ」で復活。続く「ネバーエンディングストーリーのテーマ」も大ヒットしている。近年ではチャートとはすっかり疎遠になってしまったものの、現在でも活動を続けている。彼のステージは「君はToo Shy」や「ネバーエンディングストーリーのテーマ」など、懐かしの80sヒットのオンパレードであり、それに加えてカルチャー・クラブの「君は完璧さ」やソフト・セルで知られる「汚れなき愛」など、自分の曲でなくとも遠慮なく披露している。“アーティスト”にこだわることなく、観客を楽しませることを最優先するポップ・エンタテイナーぶりは、潔いほどだ。

    一方のニック・ベッグスは、すっかりプログレッシヴ・ロック畑のミュージシャンとなった感がある。アルバム『君はToo Shy』でもインストゥルメンタル「カジャグーグー」でフュージョンに接近したテクニカルなアプローチを取っていた彼だが、1990年にケルティック・プログレッシヴ・ロック・バンド、イオナに加入。1999年12月には元レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズのソロ来日公演にも同行している。

    ニックの最新プロジェクトが2016年1月にリリースされたザ・ミュート・ゴッズ名義のアルバム『ドゥ・ナッシング・ティル・ユー・ヒア・フロム・ミー』だ。ニックとロジャー・キング(キーボード、プログラミング)、マルコ・ミンネマン(ドラムス)というクセ者揃いのトリオが生み出すサウンドは、随所で高度なテクニックをフィーチュアしたプログレッシヴなものだが、往年のニック節に通じるくっきりしたメロディを随所で聴くことが可能だ。

    かたやエンタテイナー、かたやプログレッシヴ・アーティストという異なった道を選んだ2人が2016年、相次いで日本のステージに立つというのは、もはや音楽の神様の悪戯といえるかも知れない。

    まず4月には“Back To 80s”と題して、リマールの公演が東京・大阪の『ビルボードライブ』で行われる。このライヴではカジャグーグーやソロでのヒット曲、もしかしたら他アーティストのナンバーまでも交えた、ショーアップされたステージが披露される。1980年代に青春を過ごした、少しばかり歳をとったお兄さんお姉さんにとっては、涙腺が緩みっぱなしのライヴとなるだろう。

    そして5月にはニックが、スティーヴ・ハケットのバンドの一員として日本を訪れる。英国プログレッシヴ・ロックを代表するバンドのひとつ、ジェネシスのギタリストだったハケットの公演では「魅惑のブロードウェイ」「シネマ・ショウ」なども演奏される。今回はサイドマンとしての来日だが、彼のチャップマン・スティックやベースを駆使したプレイも楽しむことが出来るに違いない。
    (ちなみにカジャグーグーのギタリストだったスティーヴ・アスキューも現役ミュージシャンで、2013年には元マリリオンのフィッシュのツアー前座を務めるなど、どちらかといえばニック寄りの音楽志向だ)

    21世紀に入って何度かのカジャグーグー再結成プロジェクトを挟み、2008年にはアルバム『Gone To The Moon』も発表されたが、現在では彼らが同じステージに立つ可能性はきわめて低い。今回のリマールとニックの来日も日程が約1ヶ月離れているため、共演はあまり考えられない。

    だが、両者のライヴを前後して体験することで、かつて流行った3Dステレオグラム絵本のように、1980年代のポップ・シーンを席巻したカジャグーグーの存在が立体的に浮かび上がってくる。その姿は、我々を“あの時代”にタイムスリップさせてくれるだろう。



    <公演情報>

    ●Limahl リマール~BACK TO 80s~

    会場:ビルボードライブ大阪
    日時:2016年4月19日(火)
    1stステージ開場17:30 開演18:30
    2ndステージ開場20:30 開演21:30

    会場:ビルボードライブ東京
    日時:2016年4月21日(木)~22日(金)
    1stステージ開場17:30 開演19:00
    2ndステージ開場20:45 開演21:30

    http://www.billboard-live.com


    ●ROCK LEGENDSスティーヴ・ハケット
    "ACOLYTE" to "WOLFLIGHT"
    plus Genesis Classics

    会場:川崎 CLUB CITTA'
    日時:2016年5月21日(土) 開場17:00 開演18:00

    会場:大阪 なんばHatch
    日時:2013年5月23日(月) 開場18:00 開演19:00

    (※ニック・ベッグス<b>参加)
    http://clubcitta.co.jp/001/steve-hackett2016/


    ●ROCK LEGENDS
    PROGRESSIVE ROCK FES 2016
    プログレッシヴ・ロック・フェス 2016
    キャメル/スティーヴ・ハケット/【Opening Act】 原始神母 ~Pink Floyd Trips~

    会場:東京 日比谷野外大音楽堂
    日時:2016年5月22日(日) 開場15:00 開演16:00

    (※スティーヴ・ハケットのバンドでニック・ベッグス<b>参加)
    http://clubcitta.co.jp/001/progfes4/

    2016年3月10日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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