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    オランダからとびっきりイキの良いブルース・ロック・バンド、モジョ・マンが登場

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    オランダは音楽王国である。

    古くはショッキング・ブルーの「ヴィーナス」やゴールデン・イヤリングの「レーダー・ラブ」などがヒットしているし、1990年代には2アンリミテッドの「ノー・リミット」がユーロビート・シーンでブイブイ言わせた。プログレッシヴ・ロックではフォーカス、ヘヴィ・メタルではヴァンデンバーグ、ハードコアではB.G.K.、エレクトロニカではジャンキーXLなどが日本でも知られている。

    彼らはいずれも英語の歌詞で歌うなど、インターナショナル市場での活動を視野に入れているが、オランダ語で歌うアーティストだと国外での知名度がガクンと落ちてしまう。一例を挙げると、メロディック・パンクのヘイデローシェズは国民的バンドといわれるほどだが、オランダ語ヴォーカルのせいもあってか国外での活躍はままならず、パンクの名門「エピタフ」レーベルとの契約も短期間で終わってしまった。

    そしてオランダは、ブルースが盛んな国でもある。元フォーカスのヤン・アッカーマンは「オランダは貿易国で、昔から国外の文化が入ってきやすい土壌があった」と語っていたが、イギリスより以前から多くのアメリカ黒人ブルースメンが訪れ、自国ネーデルラント産の“ネーデルブルース”シーンも活況を呈してきた。

    1960年代後半にはネーデルブルース・ブームが起こっている。ジョン・メイオールズ・ブルースブレイカーズやフリートウッド・マックで知られるイギリスのプロデューサー、マイク・ヴァーノンが手がけたリヴィン・ブルース、そして後にパンク・ロック界で名を成すハーマン・ブルードが在籍したキュービー&ザ・ブリザーズらが代表的なブルース・アーティストだろう。

    それから40年以上経つが、今日でもブルースは盛んで、アムステルダムやハーグ、ロッテルダムなどの大都市のみならず、かなり小さな町でもクラブやパブでブルースの生演奏が行われている。近年ではジュリアン・サスが登場、オランダのブルース・シーンはさらに厚みを増している。

    英米のミュージシャンでも、オランダを拠点にブルース路線の活動を行っている人もいる。かつてピンク・フロイドのツアー・ギタリストであり、シン・リジィにいたこともあるスノーウィ・ホワイトがそうだし、TOTOやポール・ギルバートとの活動で知られるトニー・スピナーもソロ・キャリアではオランダを中心にブルース色の濃い音楽を追究している。

    そんな“ブルース激戦区”のオランダで、デビューからわずか1年半でトップ級の人気を獲得したのがモジョ・マンだ。シンガー兼リズム・ギタリストのマルセル・デュプレックスを中心に結成されたこのバンドが初めてライヴを行ったのが2014年5月。それから精力的なクラブ・サーキットやフェスティバル出演で支持を得るようになり、2015年12月に日本でもデビュー・アルバム『モジョ・マン』がリリースされることになった。

    ジミ・ヘンドリックス、オーティス・レディング、ローリング・ストーンズなどから影響を受けた彼らは気合いの入ったブルース・ロック&ロールで魅せてくれるが、興味深いのはその編成。ベーシックなロック・バンド編成に5人のホーン・セクションが加わった9人でステージに立つのだ。

    気合い一発の「スケアクロウ」からオーティスの「アイ・キャント・ターン・ユー・ルース」を思わせる「アイム・ア・マン」、ドライヴ感満点の「ワイルド・フラワー」など、ガツンと“カチ食らわす”ブルース・ロックが全編を貫くこのアルバムは、分厚いホーン・サウンドを得て、さらにパワー・アップしている。テオ・ファン・ニールJrのリード・ギターも極上で、予備知識なしにこのアルバムを聴いた人は、ひっくり返ること間違いなしだ。

    マディ・ウォーターズの「ゴット・マイ・モジョ・ワーキン」を筆頭に、モジョ(ヴードゥーのお守り)といえばブルースの定番のキーワード。それをバンド名にするのはありきたりともいえるが、その音楽は鮮度が高いものだ。

    オランダでは“ブラック・クロウズ以来の衝撃のデビュー作”という声もあり、ネーデルブルースの総本山ウェブサイト(bluesmagazine.nl)は早くも彼らを“2015年オランダ国内ベスト・バンド”に挙げ、このアルバムをニール・ヤングの『ブルーノート・カフェ』と共に年間ベスト・アルバムに挙げている。

    2015年には“キング・オブ・ザ・ブルース”B.B.キングが亡くなり、元気がなかったブルース界だが、とびっきりイキの良い若手バンドが登場してきた。モジョ・マンに注目だ。

    2015年12月24日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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