音楽ジャーナリスト&ライターの眼 ~今週の音楽記事から~

新聞社の音楽記事、音楽ライターによる書き下ろし記事を集めたウェブサイトです。(毎週、月・木更新)

音楽ライター記事

つぶやく・ブックマークする

    【インタビュー】ジョン・アンダーソン/アンダーソン・ポンティ・バンド、そしてイエス時代の盟友クリス・スクワイアを語る

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    イエスのシンガーとして英国プログレッシヴ・ロック黄金時代を築いたジョン・アンダーソンと、マハヴィシュヌ・オーケストラやフランク・ザッパ、アラン・ホールズワースとの活動で知られるジャズ/フュージョン・バイオリンの名手ジャン=リュック・ポンティによる双頭ユニット、アンダーソン・ポンティ・バンドがデビュー・アルバム『ベター・レイト・ザン・ネヴァー〜真世界への旅』を発表した。

    前回記事(※)ではジャン=リュック・ポンティにインタビューを敢行したが、今回はジョン・アンダーソンに話を訊いた。彼はイエス時代と同様の天使のヴォイスで、現在の心境を語ってくれた。

    ●『ベター・レイト・ザン・ネヴァー〜真世界への旅』は当初の予定から発売延期となりましたが、それはあなたの体調不良が理由だったのでしょうか?

    いや、確かに副鼻腔の手術もあったけど、それが原因ではないよ。もう71歳になるし、ちょっとした故障はあるものだ。もう全快したし体調は万全だよ。それに発売延期といっても、そんなに大幅に遅れたわけでもない。アルバムに収録されているライヴは、去年(2014年)にコロラド州アスペンのオペラハウスで録音したんだ。それから2ヶ月して聴き直して、とても良い出来だと思った。ただギターのサウンドがあまり良くなかったのと、私が歌詞を何箇所かトチっていた。ジャン=リュックも直したい箇所があったし、その作業で1ヶ月かかった。さらにビデオの編集や音声のミックスにも時間がかかったんだ。それで発売が少々遅れたけど、待っていてくれた世界中のファンには感謝しているよ。アルバムのタイトルは、私がジャン=リュックに言ったことから名付けたんだ。「遅れはしたけど、発売しなくなるよりはマシだろ?Better late than neverだよ」って言ったんだよ。今回はクラウドファンディング・サイトの『キックスターター』で制作費を募ったんだ。私にとって新しい試みだったけど、ファンと直接コネクトすることが出来て、興味深い経験だったね。

    ●ジャン=リュック・ポンティとはいつから交流があったのですか?

    ジャン=リュックの演奏を初めて見たのは1970年代初め、彼がマハヴィシュヌ・オーケストラにいた頃だった。イエスとマハヴィシュヌが一緒のライヴに出たこともあったし、彼がフランク・ザッパのバンドにいたことで、話が合ったんだ。私がロサンゼルスに住んでいた頃、フランクの近所に住んでいたからね。フランクの子供たちと私の子供たちは、遊び友達だったんだよ。

    ●ドウィージルやアーメットですか?

    そうだよ。彼らは良い子たちだった。フランクもナイス・ガイだったよ。少しばかりクレイジーだったけどね。「今度のライヴではオーケストラを呼んで、まったく演奏させずに、演奏するフリをさせるんだ」とか、おかしなことを言っていた。でも、それは彼の中では意味をなすことだったんだ。

    ●ジャン=リュックとプロジェクトを組む計画は、いつからあったのですか?

    最初に話し合ったのは1983年、ロサンゼルスでのことだった。イエスの『ロンリー・ハート』を完成させた直後で、私はヴァンゲリスとのプロジェクトのためにロサンゼルスにいたんだ。意気投合して、ぜひ何か一緒にやろうと話したけど、私はイエスでツアーに出ることが決まっていたし、ジャン=リュックも自分のプロジェクトをやっていたから、実現出来なかった。

    ●それから30年以上が経って、何故今になってアンダーソン・ポンティ・バンドを結成することにしたのですか?

    数年前、私はビル・キルパトリックとバイオリン・コンチェルト『Violin Stories』に取りかかっていた。その経験から、自分のヴォーカルとバイオリンとの可能性をもっと掘り下げたかったんだ。それでネットを通じてまたジャン=リュックと連絡を取るようになって、彼の曲に私が歌詞をつけたものを送った。彼はそれをとても気に入ってくれて、本格的にバンドがスタートしたんだよ。

    ●アルバムにはイエスやジャン=リュックの曲のリメイクや、2人で書いた新曲が収録されていますが、どのように演奏する曲を選んだのですか?

    2人の直感に頼ったんだ。とてもナチュラル だったよ。まず一緒にライヴをやろうと話し合ったんだ。私はお客さんを楽しませるためには、彼らが知っている曲をプレイするべきだと感じた。それで「ラウンドアバウト」や「ロンリー・ハート」をプレイすることにしたんだ。ただ全体のセットリストは、とてもオーガニックに組み上がっていった。リハーサルでキーボード奏者のウォリー・ミンコにBのキーで弾いてくれと言って、それに乗せて私が「不思議なお話を」を歌い始めたりね。私たち2人だけでなく、バンドの全員がインスピレーション源となった。彼らはみんな自由な精神を持っていて、インプロヴィゼーションに長けているんだ。

    ●ライヴで候補となりながら、結局プレイしなかった曲はありますか?

    「スターシップ・トゥルーパー」を試してみたけど、頭でイメージしていたものと異なっていたんだ。それで代わりに私がヴァンゲリスと書いた「ステイト・オブ・インディペンデンス」をプレイすることにした。

    ●お互いの曲をプレイするにあたって、どこまでオリジナルを残して、どこまで自分のカラーを加えましたか?

    特に明確な一線は引いていないし、ジャン=リュックのインストゥルメンタル・ナンバーに歌詞をつけたり、自由にアレンジしたよ。ただ、原形を留めないぐらい改変して、ライヴを見に来たお客さんがどの曲だか判らないようなことはしなかった。曲を聴いて、最初のインパクトを生かしながら、自分のアイディアを加えていくんだ。

    ●「時間と言葉」は2011年にリック・ウェイクマンとやったアンダーソン/ウェイクマンでのライヴと同様に、レゲエ・ヴァージョンでプレイ、途中にビートルズの「シー・ラヴズ・ユー」を挿入していますね。

    うん、ここ数年、「時間と言葉」はレゲエ・アレンジでやっているんだ。他のヴァージョンだと違和感をおぼえるほどだよ。このバンドでやるときも、私が普段どおり演奏を始めて、みんながそれに合わせたんだ。

    ●あなたはヴァンゲリスと“ジョン&ヴァンゲリス”、リック・ウェイクマンと“アンダーソン/ウェイクマン”など、インストゥルメンタル奏者との双頭ユニットを幾つも結成してきましたが、アンダーソン・ポンティ・バンドはそれらとどんな点が共通していて、どんな点が異なっているでしょうか?

    彼らに共通点があるとしたら、私の人生を一変させたことだよ。彼らは2人とも素晴らしいパフォーマーで、マエストロ(達人)だ。作曲のプロセスも似ている。誰と共演するときも、作曲はとても自然な、流れるようなプロセスなんだ。ただ、そうして生まれる音楽は、それぞれまったく異なったものになる。それが面白いんだよ。

    ●今年(2015年)、イエスの1972年アメリカ・ツアーの7公演の音源を集めた12枚組CD『プロジェニー』がリリースされましたが、あなたは聴きましたか?

    うん、全部ではないけど、部分的に聴いてみた。私がポップ・スターだった時代のライヴだ(笑)。バンドの演奏は素晴らしいし、自分がこのバンドにいたことを誇れる内容だと思った。

    ●『プロジェニー』の制作には何らかの形で関わりましたか? 今後リリースしたい過去の発掘ライヴはありますか?

    まったく関わっていないし、特に発掘したいライヴもないよ。私は今の自分の音楽をやっているので忙しいんだ。

    ●イエスのベーシストだったクリス・スクワイアが今年6月27日に亡くなりましたが、彼と最後に連絡を取ったのはいつでしたか?

    クリスが病気だと知って、私から連絡をしたんだ。 それからメールで、元気になったら食事をしに行こうとか、気を強く持ってとか、何度かやり取りをした。でも彼はコンピューターに向かう力がなくなって、しばらく連絡がつかなくなった後に亡くなってしまったんだ。クリスの人生が私と共にあったことに、今でも感謝している。私はイエスを脱退したけど、私たちはいつだって音楽の兄弟だった。もしクリスがいなかったら、私は音楽を続けていなかっただろう。



    ※「【インタビュー】ジャン=リュック・ポンティ/マハヴィシュヌ・オーケストラ、フランク・ザッパ、そしてアンダーソン・ポンティ・バンドを語る」の記事は下記リンク先をご覧ください。
    http://www.yamaha.co.jp/ongakukiji/news.php?no=15479

    2015年11月19日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

    音楽ライター記事一覧を見る

    洋楽 のテーマを含む関連記事

    リズム重視してアレンジ チーフタンズのリーダー パディ・モローニ

    アイルランドを代表する伝統音楽のグループ、チーフタンズが来日公演を行う。現地の文化に根ざしながら、親しみやすいサウンドを展開。度々グラミー賞に輝き、ローリング・ストーンズやジョニ・ミッチェルら、有名どころとの共演も多い。長きにわたる活動について、リーダーのパディ・モロー...

    ライブ盤に込めた思い ジャクソン・ブラウン 人間の良心 信じている 

     米国のベテランシンガー・ソングライター、ジャクソン・ブラウンが公演のため来日した。社会や個人のあり方を世に問う誠実な姿勢が、世界中で支持されている。混迷する世界情勢の中、ジャクソンは我々に何を伝えていきたいのか。最新のライブ盤「ザ・ロード・イースト」(ソニー)に込めた...

    【ライヴ・レビュー】イエスfeaturingジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマン/2017年4月17日 東京 Bunkamuraオーチャードホール

    2017年4月、イエスfeaturingジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマンのジャパン・ツアーが行われた。日本公演が発表された時点では、来日公演はアンダーソン、ラビン&ウェイクマン(ARW)という名義で行われることになっていた。だが直前の4月9...

    2017年、日本に吹く熱風 / サンタナ『ロータスの伝説 完全版』とジャパン・ツアー

    これまで洋楽アーティスト達は数多くの伝説的ライヴ・アルバムを日本で録音してきた。ディープ・パープル『ライヴ・イン・ジャパン』やチープ・トリック『at武道館』、ボブ・ディラン『武道館』、エリック・クラプトン『ジャスト・ワン・ナイト』、スコーピオンズ『蠍団爆発!トーキョー・...

    世界的ベーシスト、ネイザン・イーストの公開リハーサルで見た、演奏が練り直され新たな響きが生まれる瞬間

    (取材・文/飯島健一) 卓越したプレイで数多のミュージシャンに信頼され、音楽ファンも魅了するベーシストのネイザン・イースト。今年1月に2ndソロアルバム『Reverence(レヴェランス)』を発表して、2月に来日。ビルボードライブ東京での公演前夜に開催された今回のスペシ...

     

    ページの先頭へ戻る

    • RSS
    • お問い合わせ