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    【ライヴ・レビュー】ドラゴンフォース/2015年9月10日 東京・赤坂BLITZ

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    現代ヘヴィ・メタル界をリードするバンドのひとつ、ドラゴンフォースが2015年9月、最新アルバム『マキシマム・オーヴァーロード』を引っ提げてのジャパン・ツアーを行った。

    2003年、ドラゴンフォースのアルバム『ヴァレイ・オブ・ザ・ダムド』でのデビューは、超高速メロディック・スピード・メタルと凄まじいばかりのテクニックで衝撃を呼んだ。また、王道メタルが瀕死状態だったイギリスから、彼らのように真っ向からメタルで体当たりしてくるバンドが登場したことも、世界のメタル・コミュニティを驚かせた。

    彼らは2004年2月、ハロウィンのサポートとして早くも日本初上陸。全速力で駆け抜けたライヴ・パフォーマンスは、終演後「今のは何だったんだ…」とハロウィン・ファンを唖然とさせたほどだった。

    それからドラゴンフォースは毎年のように日本を訪れ、毎年秋のメタルの祭典『ラウド・パーク』にも2006・2008・2012・2014年と4回参戦。ブラック・サバスやジューダス・プリーストなど還暦オーバー上等のメタル界において、とびっきりイキが良いのが彼らなのである。

    「トゥモロウズ・キングス」から始まったライヴも、とにかくエネルギーではちきれんばかりの演奏で押しまくる。そんなエネルギーに憑依されたかのように、場内には瞬時に複数のサークル・ピットが生まれ、観衆はバターになりそうな勢いでグルグル回り始めた。

    バンドのメンバー達も、ステージ狭しと走り回る。サム・トットマンとハーマン・リの超音速ギター・デュオはもちろん、ベーシストのフレデリク・ルクレルク、そして加入5年目でまだフレッシュな印象の残るシンガー、マーク・ハドソンも若さに任せて縦横無尽に駆け巡る。キーボード奏者のヴァディム・プラツァノフもショルダー・キーボードを抱えてバトルに身を投じる。ドラマーのジー・アンザローネも、もし持ち運び出来るドラム・キットがあったならば、飛び込んでいったに違いない。

    デビュー10年を超えて、既にベテランと呼んでも過言でない彼ら。サムはステージ上でも帽子を取ることがなく、ハーマンは2階席から見ると落ち武者ぶりに磨きがかかっていたが、そのライヴの鮮度の高さはまったく衰えることを知らない。

    筆者(山崎)が彼らのライヴを初めて見たのは2000年のロンドン、彼らがまだドラゴンハートと名乗っていた頃だが、それから時間が止まったかのような若さとテンションにあふれるステージだった。

    新旧取り混ぜた最強ナンバーで1時間半を疾走したこの日のライヴ。初期の名曲のひとつでありながら一時期セットリストから消え、『ラウド・パーク14』で復活を果たした「ブラック・ウィンター・ナイト」もプレイされ、観衆の「オーオオッオッオ、オーオーオー」という大合唱で迎えられた。

    本編ラストを「ヴァレイ・オブ・ザ・ダムド」でいったんステージを後にした彼らだが、まだ突っ走り足りないとばかり戻ってくる。「マイ・スピリット・ウィル・ゴー・オン」に続いて、ジョニー・キャッシュの有名曲を壮絶メロスピ・アレンジした「リング・オブ・ファイアイー」、そして「スルー・ザ・ファイアー・アンド・フレイムス」の3連打で、燃えカスすらも残らない完全燃焼ライヴを締めくくった。

    ドラゴンフォースの特徴は、ヘヴィ・メタル音楽の様式と伝統を踏襲しながら、“メタル村”の固定観念に凝り固まることなく、フレキシブルに外部カルチャーとの接点を持ってきたことだ。「オペレーション・グラウンド・アンド・プラウド」のミュージック・ビデオではサムとハーマンがオタク丸出しのゲーマーぶりを見せているし、彼らはメタル・ファンから賛否があるBABYMETALとも何の躊躇もなく共演、「Gimme Chocolate(ギミチョコ!!!)」まで嬉々とプレイしている。

    今回の来日公演でサポートを務めたJUPITERも、一部の保守的なメタル・ファンが“ビジュアル系”と拒否反応を示すタイプのバンドだが、彼らはそんな偏狭な視点を持たず、良い演奏をすると思ったバンドには舞台を提供するのだ。

    そんな彼らのオープンな姿勢が、“一見さんお断り”的なメタルのイメージを払拭させて、新しいファンを呼び込むことに成功しているのは間違いない。
    今回も超絶スピードで駆け抜けていったドラゴンフォールのライヴ。平日、しかも雨という状況下、決して満員とはならなかったものの、昨年来てから間を置かずして、2日間でのべ2千人(推定)を動員したのだから、彼らの人気はもはや盤石だといえるだろう。

    雨の降る中、傘も差さずに駅に向かって突っ走っていく観客がいたのは、まだライヴの余韻に浸っていたのだろうか。

    2015年9月24日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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