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    ロリー・ギャラガーが率いたテイスト、集大成CDボックスと1970年ワイト島フェス映像作品がリリース

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    アイルランドのギター・ヒーロー、ロリー・ギャラガーが47歳の若さで亡くなってから、20年の月日が経った。

    1966年にテイストの一員としてデビュー、1970年にソロに転向したロリーは『タトゥー』(1973)、『ライヴ・イン・アイルランド』(1974)などで世界的な成功を収めるが、病気に倒れ、1995年6月14日にこの世を去った。

    だが、ロリーの物語がそこで終わったわけではない。現在に至るまで、生前の彼の音源や映像がコンスタントに発掘され、オールド・ファンを喜ばせ、新しいファンを獲得してきた。

    現在ロリーの作品を管理しているのは、彼の弟でマネージャーだったドナル・ギャラガーと、ドナルの息子(ロリーの甥にあたる)ダニエルだ。彼らはロリーへの愛情と、常にハイ・クオリティな素材のみを世に出すポリシーで、再発プログラムを充実させてきた。

    近年では2011年に映像作品『ヒストリー・オブ・ロリー・ギャラガー』『ビート・クラブ・ライヴ1971-1972』、2012年には未発表アルバム『ノーツ・フロム・サンフランシスコ』、2014年には『ライヴ・イン・アイルランド』7CD+1DVD拡大盤ボックスと、毎年のように未発表音源/映像がリリースされてきたが、いずれも生前の作品に劣らない素晴らしい内容だ。ロリーの愛器フェンダー・ストラトキャスターは汗で塗装が剥げしまったことで有名だが、発掘作品も彼の汗がしたたってきそうな熱いものばかりである。

    そして2015年8月から9月にかけて、ロリーの原点となったテイストの作品集が2タイトル発売されて、ファンを驚喜させている。

    『I’ll Remember』はテイストの『テイスト』(1969)と『オン・ザ・ボード』(1970)という2枚のスタジオ・アルバムに初期セッションやアウトテイク、ライヴなどレア・トラックを加えたCD4枚組ボックスだ。アイルランドのインディー・レーベルから発売されたシングル「ブリスター・オン・ザ・ムーン」b/w「死神のブルース」もリマスターされて収録されている。

    1968年7月7日、ウォバーン・アビー・フェスティバルでの4曲は、同フェスでのジミ・ヘンドリックスのライヴを収めたオープン・リール・テープの“裏側”に録音されていたそうで、関係者が気付かなければそのまま埋もれてしまっていた可能性もあった。もちろん、この音源が公式リリースされるのは、これが初めてだ。

    1970年のBBCスタジオ・ライヴの未放送分を含む音源やストックホルムでのライヴなども、音質こそ満点とはいえないものの、内容は極上そのものだ。

    4枚のCDはいわゆるデジブックよりワンサイズ小さなハード・ブックに収められており、未発表写真やツアー・ポスター、世界各国(日本を含む)シングル盤ジャケットなどを含むブックレットも付けられている。

    もう1タイトル、ロリー・ファンにとって衝撃ですらあるのが、ブルーレイ/DVDとCDからなる『ホワッツ・ゴーイング・オン-テイスト ワイト島ライヴ1970』だ。1970年8月26〜30日、60万人といわれる大観衆が集まったワイト島フェスティバルではジミ・ヘンドリックスやザ・フー、フリー、エマーソン・レイク&パーマーらが出演。テイストは28日にステージに上がっている。

    ワイト島でのテイストのライヴは一部が『ワイト島のテイスト』としてアルバム化され、映画『ワイト島1970~輝かしきロックの残像』(1997)には2曲の映像が収録されたが、今回リリースされるのは未発表テイクをふんだんに収録したヴァージョンだ。

    既発ライヴ・アルバム『ワイト島のテイスト』は全6曲収録だったのに対し、今回のCDヴァージョンには全10曲を収録。また、映像パートにはライヴ7曲+エンド・タイトル1曲の全8曲が収められている。

    この時点でテイストはバンド内部の問題を抱え、4ヶ月後に解散するが、ライヴ・パフォーマンスは熱気あふれるもので、白目をむいて弾きまくるロリーのギター・プレイには鬼気迫るものがある。

    さらにブルーレイ/DVDには映像ドキュメンタリーが付けられ、ドナル・ギャラガーやテイストのドラマーだったジョン・ウィルソン、そしてロリーのファンだったブライアン・メイ(クイーン)、ボノ(U2)、実際にワイト島でテイストのステージを見たというボブ・ゲルドフ(ブームタウン・ラッツ)、ロリート共演経験のあるラリー・コリエルらが語っている。

    ブルーレイ/DVDの特典映像としてドイツのTV番組『ビート・クラブ』での未放映分を含むライヴ、シュールなコンセプチュアル・ビデオなども収録されており、テイストの映像集大成となっている。

    ただ、『I’ll Remember』と『ホワッツ・ゴーイング・オン-テイスト ワイト島ライヴ1970』でテイストの音源がコンプリートされているわけではない。

    ワイト島フェスティバル直後の1970年8月31日、モントルー・カジノでのライヴは『ライヴ・テイスト』としてアルバム化されているが、その拡大版ヴァージョンにも期待したい。また、1969年8月22日、ベルギーのビルゼン・ジャズ&ポップ・フェスティバルでの映像も存在が確認されているし、ほぼ未公認LPとしてリリースされた『Taste In Concert』の1968年10月25日、ロンドン・マーキー・クラブでのライヴもオフィシャルな形で再発して欲しいところだ。

    ボロボロのストラトで数々の名演を聴かせてきたロリー・ギャラガー。これからもさまざまな発掘作品によって、凄味あふれるギター・プレイで、我々を魅了し続けるに違いない。お楽しみはこれからだ。

    2015年9月10日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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