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    【ライヴ・レビュー/前編】フジ・ロック・フェスティバル’15/2015年7月24日(金)〜26日(日)新潟県・苗場スキー場

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    『フジ・ロック・フェスティバル’15』が2015年7月24日(金)から26日(日)、新潟県・苗場スキー場で行われた。

    第19回目を迎えるこのフェスティバル。23日(木)の前夜祭を含めるとのべ11万5千人の大観衆が集まり、約200アーティストが繰り広げるライヴを楽しんだ。

    筆者(山崎)は1997年の第1回から毎年参戦、その歴史を追ってきたが、2015年のフジロックは歴代で最も快適なもののひとつだった。3日間、一度も雨が降らず、夏の太陽の下で音楽を楽しむことが出来たということも大きかったし、観客のリピーターが増えたことで多くの人々がフェスを“判って”おり、ステージ移動などがスムーズになったこともあるだろう。

    それに加えて、会場そのものも徐々に進化してきた。1999年、初めて苗場で開催された頃にはステージ間の通路はデコボコして、雨が降ると足首まで泥沼に浸かるエリアもあった。また、“近道”であるボードウォークもまだなかった。我々はまさに音楽と不便と悪天候を楽しみに、フジロックに向かっていたのだ。

    だがそれから16年、通路は平らに均され、砂利が敷かれた。足を取られて転ぶこともなくなった。だだっ広い会場の端から端に行く時間も、かつての1時間から30分ぐらいに短縮された(と思う)。

    会場を訪れ、周囲を見回してみると、ずいぶん景色が変わったことを実感する。数年前にはなかった巨岩が会場のあちこちにあるのは、どこかの山から転がり落ちてきたのだろうか、それとも持ってきたのだろうか? また、かつてフードエリア“オアシス”とトイレエリアを直接繋いでいた橋が撤去されたことも大きな変化だった。

    メイン・ステージである“グリーン・ステージ”の脇の茂みは(大きな声ではいえないが)“立ちションの聖地”として長年愛されてきた。奥まで行くと足下が危なっかしかったのだが、今年は転ばないように足場が整備されていた。

    JR越後湯沢駅からのシャトルバスが有料となったが(往路のみ。復路は無料)、そのぶん乗客を詰め込まずに余裕を持たせるなど、新たな試みも行われていた。

    同じフジロックが2度続くことはない。常に変化していくのがフジロックなのだ。

    “グリーン・ステージ”のヘッドライナーは、フー・ファイターズ、ミューズ、ノエル・ギャラガー&ハイ・フライング・バーズという顔ぶれ。いずれも最高のソングライティングとステージ・パフォーマンスで知られる、2015年のロック界を代表するアーティストだ。他のステージでも優れたアーティストがライヴを繰り広げていたが、多くの観客を“グリーン・ステージ”に引き寄せるマジックを、この3大アーティストは備え持っていた。

    フー・ファイターズはデイヴ・グロールが来日前、スウェーデンのフェスでステージから転落して足を骨折したが、デイヴは“玉座”に座って演奏、さらに転落ビデオを流すなど、アクシデントをショーの一部にしてしまった。

    最新アルバム『ドローンズ』が6月に出たばかりのミューズだが、観衆は皆、バンドと一緒に歌う。約1時間半の演奏時間だったが密度は極濃で、おなじみの映画『ウェスタン』イントロから始まったアンコール「ナイツ・オブ・サイドニア」も大合唱で迎えられた。

    ノエル・ギャラガーはオアシス時代の「シャンペン・スーパーノヴァ」「ザ・マスタープラン」などを交えながら、フェス最終日のヘッドライナーとして、ラスト「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」は大団円となった。

    上原ひろみ feat アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップスは既に単独ツアーを行っているが、野外の夏フェスで聴く実力派たちのジャズ・バトルはまた格別だった。大観衆を前にして、ステージMCで「圧倒されてます」と話していた上原だが、その演奏に圧倒されていたのは我々だった。

    ジョニー・マーはソロとして出演。古巣スミスの「ゼア・イズ・ア・ライト」「ハウ・スーン・イズ・ナウ?」、エレクトロニックの曲、デペッシュ・モードのカヴァーなどを惜しげもなく披露する。午後3時過ぎという時間枠のせいか、動員は思ったより少なかったが、このセットリストが事前に知れ渡っていたら、もっと多くの観客が詰めかけていただろう。

    そして、モーターヘッドである。初日のセミとして出演した彼らのショーは、2015年のフジロックで最も思い出深いものとなった。次回・後編では彼らのステージについて、私見を交えながらレビューしてみたい。

    (つづく)

    2015年8月13日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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