音楽ジャーナリスト&ライターの眼 ~今週の音楽記事から~

新聞社の音楽記事、音楽ライターによる書き下ろし記事を集めたウェブサイトです。(毎週、月・木更新)

音楽ライター記事

つぶやく・ブックマークする

    サニー・ランドレス『バウンド・バイ・ザ・ブルース』/2015年、ブルースはまだまだ元気いっぱい

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    2015年5月14日にB.B.キングが亡くなったというニュースは、衝撃をもって迎えられた。89歳という年齢は天寿を全うしたといえるのだが、ブルース音楽を代表する不動の“キング・オブ・ザ・ブルース”が死ぬなんて、多くのファンが考えてすらいなかったのではないだろうか。

    20世紀に活躍したブルースメン/ウィメンの多くが去ってしまったが、これでブルースが“過去の音楽”になってしまったと決めつけるのは早計だ。デレク・トラックスやゲイリー・クラーク・ジュニアを筆頭に、ブルースを現代に受け継ぐアーティストは数多い。そしてサニー・ランドレスの『バウンド・バイ・ザ・ブルース』もまた、2015年においてブルースが生きていることを宣言するアルバムだ。

    現代の音楽シーンで屈指のスライド・ギタリストと評されるサニーはブルースやカントリー、ザディコ、R&Bなど幅広い音楽スタイルで知られるが、『バウンド・バイ・ザ・ブルース』では真っ正面からブルースと向かい合っている。

    彼がこれほどブルースにこだわったアルバムを発表するのは2003年の『ザ・ロード・ウィーア・オン』以来であり、並々ならぬ気合いが伝わってくる。

    全10曲中5曲がオリジナルで、5曲がカヴァーという構成の本作。ベーシックなバンド編成でレコーディングされており、“主人公”はサニーのスライド・ギターだ。スライドバーで魂の中身を絞り出すようなギター・プレイは生々しく、アドレナリンが迸りそうに鮮度が高い。

    カヴァー曲は比較的知名度の高いスタンダードが多く、ブルース・ファンならずともオリジナル、あるいは他のアーティストによるヴァージョンを聴いたことがありそうだ。

    サン・ハウスやロバート・ジョンソンで知られる「ウォーキン・ブルース」、スキップ・ジェイムズの「チェリー・ボール・ブルース」、ビッグ・ビル・ブルーンジーの「キー・トゥ・ザ・ハイウェイ」、エルモア・ジェイムズやタンパ・レッドで知られる「イット・ハーツ・ミー・トゥー」、ロバート・ジョンソンの「ダスト・マイ・ブルーム」はいずれも20世紀前半のオールド・ブルースだが、2015年ならではの新たな生命が吹き込まれている。

    サニー自身も1951年生まれなので、このアルバムの発表時点で64歳と、決して若くはないのだが、これを聴いてブルースが“過去の音楽”と言う人はいないだろう。

    サニーのオリジナル曲も秀逸だ。ハウンド・ドッグ・テイラーばりにダーティーなスライドが暴れる「シムコー・ストリート」、その正反対にモダンで都会的な「ホェア・ゼイ・ウィル」など聴きどころが多いが、涙なしでは聴けないのがジョニー・ウィンターに捧げた「ファイヤーバード・ブルース」だ。サニーは2012年、日本のステージでもジョニーと共演を果たしており、2014年に亡くなった彼へのトリビュートとしてインストゥルメンタル・スライド・ナンバーをプレイしている。

    アルバム発表後には精力的にツアーを行うのに加えて、サニーは2015年8月にはスティーヴ・ヴァイが主宰するギター・セミナー『ヴァイ・アカデミー』にゲスト講師として参加することが決まっている。ブルースをプレイするだけでなく、ブルースを教えることも、彼にとってこの音楽スタイルを次世代に伝えていく方法なのだ。

    2015年8月には黒人ブルースの大御所バディ・ガイの新作アルバム『ボーン・トゥ・プレイ・ギター』もリリースされる。21世紀に入って久しいが、ブルースはまだまだ元気いっぱいである。

    2015年7月 9日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

    音楽ライター記事一覧を見る

    洋楽 のテーマを含む関連記事

    リズム重視してアレンジ チーフタンズのリーダー パディ・モローニ

    アイルランドを代表する伝統音楽のグループ、チーフタンズが来日公演を行う。現地の文化に根ざしながら、親しみやすいサウンドを展開。度々グラミー賞に輝き、ローリング・ストーンズやジョニ・ミッチェルら、有名どころとの共演も多い。長きにわたる活動について、リーダーのパディ・モロー...

    ライブ盤に込めた思い ジャクソン・ブラウン 人間の良心 信じている 

     米国のベテランシンガー・ソングライター、ジャクソン・ブラウンが公演のため来日した。社会や個人のあり方を世に問う誠実な姿勢が、世界中で支持されている。混迷する世界情勢の中、ジャクソンは我々に何を伝えていきたいのか。最新のライブ盤「ザ・ロード・イースト」(ソニー)に込めた...

    【ライヴ・レビュー】イエスfeaturingジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマン/2017年4月17日 東京 Bunkamuraオーチャードホール

    2017年4月、イエスfeaturingジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマンのジャパン・ツアーが行われた。日本公演が発表された時点では、来日公演はアンダーソン、ラビン&ウェイクマン(ARW)という名義で行われることになっていた。だが直前の4月9...

    2017年、日本に吹く熱風 / サンタナ『ロータスの伝説 完全版』とジャパン・ツアー

    これまで洋楽アーティスト達は数多くの伝説的ライヴ・アルバムを日本で録音してきた。ディープ・パープル『ライヴ・イン・ジャパン』やチープ・トリック『at武道館』、ボブ・ディラン『武道館』、エリック・クラプトン『ジャスト・ワン・ナイト』、スコーピオンズ『蠍団爆発!トーキョー・...

    世界的ベーシスト、ネイザン・イーストの公開リハーサルで見た、演奏が練り直され新たな響きが生まれる瞬間

    (取材・文/飯島健一) 卓越したプレイで数多のミュージシャンに信頼され、音楽ファンも魅了するベーシストのネイザン・イースト。今年1月に2ndソロアルバム『Reverence(レヴェランス)』を発表して、2月に来日。ビルボードライブ東京での公演前夜に開催された今回のスペシ...

     

    ページの先頭へ戻る

    • RSS
    • お問い合わせ