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    ●“帰れない夏フェス”「サマーソニック2015」。マニックスとFFSは絶対に見なければならない

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    「サマーソニック2015」は“帰れない夏フェス”だ。

    2015年8月15日(土)・16日(日)、千葉・幕張と大阪・舞洲で同時開催されるサマソニ。2000年にスタート、数々の大物アーティストからマニアックなカルト・バンド、期待の新人から老境のベテランまでが出演してきた日本を代表する夏フェスのひとつだが、2015年もケミカル・ブラザーズとファレル・ウィリアムズをヘッドライナーに、マリリン・マンソンやマニック・ストリート・プリーチャーズ、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン、郷ひろみなど豪華な顔ぶれが出演することが決まっている。

    東京・大阪の中心部から約1時間の距離で開催され、ライヴが終わったら帰宅することも可能な都市型フェスとして発展してきたサマソニだが、2015年はちょっと様子が異なる。金曜の夜から日曜の夜まで、帰ることが出来ないのである。

    サマソニ本編は土日の午前11時から夜9時ぐらいまでというのは例年通りだが、2015年の幕張会場では2つのサブ・フェスティバルが開催される。ひとつは14日(金)夜の「ソニックマニア」、もうひとつは15日(土)夜の「ホステス・クラブ・オールナイター」だが、どちらもオールナイト・フェスだ。しかも前者はプロディジーやマリリン・マンソン、後者はトム・ヨークやFFS(フランツ・フェルディナンド&スパークス)、スピリチュアライズドなど、本編とまったく遜色のない強力なラインアップが登場する。

    真夏ということもあり、昼間はゆっくり休んで日が暮れてから出陣したいところだが、2015年ブライテスト・ホープのひとつともいわれるヘヴィ・パンク・デュオ、スレイヴスや3年ぶりの来日となる再結成キャストなどを筆頭に、かなり早い時間から注目アーティストが登場する。体力温存など許さない、それが2015年のサマソニなのだ。

    そんな中で、何が何でも見ておかねばならないイチオシアーティストが、マニック・ストリート・プリーチャーズとFFSだ。

    マニックスは1995年のサード・アルバム「ザ・ホーリー・バイブル」完全再現を含むスペシャル・ライヴを行う。「ファスター」「PCP」「リヴォル」など名曲の数々を収録、リッチー・ジェイムズ・エドワーズ失踪前に発表された、彼にとって最後のアルバムであり、ファンの思い入れが強い作品ゆえ、絶対に見逃すわけにはいかない。

    そしてFFSである。フランツ・フェルディナンドとスパークスというクセ者バンドが合体した混成プロジェクトで、2015年6月にアルバム『FFS』がリリースされたが、日本でのライヴが実現することになった。フランツは2014年の「フジ・ロック・フェスティバル」で堂々メイン・ステージのヘッドライナーを務めたばかりだが、深夜の「ホステス・クラブ・オールナイター」への登場となる。

    2015年になってアルバムとツアーが実現したFFSだが、実はこのプロジェクトは10年越しで実現したものだった。筆者(山崎)が2006年1月、スパークスのシンガーであるラッセル・メエルにインタビューしたとき、彼は「初めてその話が出たのは1年半ぐらい前だった」と語っている。この時点ではフランツのシンガー兼ギタリストのアレックス・カプラノスが中心となってスパークスのベスト盤を選曲、2曲でコラボレーションするという話だったが、両バンドとも多忙のためいつの間にか話題に出なくなっていた。スパークスは“工藤かずや/池上遼一の漫画『舞』を映画化して、スパークスが音楽を担当する”など、突拍子もない話が突然出てきたりするので、これも立ち消えか…と思わせたが、それから10年、なんとアルバム1枚で共演という形で実現したのだった。

    多くのミュージシャンから支持されているスパークスだが、ラッセルによると「ザ・ダークネスのジャスティン・ホーキンスやモリッシーは『キモノ・マイ・ハウス』派だし、フランツ・フェルディナンドは『恋の自己顕示(プロパガンダ)』(74年)がお気に入りで、「アチョー」をカヴァーしたと言っていた。どうしても上手く出来なかったらしいけどね(笑)。デペッシュ・モードのマーティン・L・ゴアはエレクトロ期が好きだと言っているけど、何故か初期の「家には帰れない」をカヴァーしていた」とのことだ。

    アルバム『FFS』はまさに“フランツ+スパークス”の音楽性のアルバムだ。先行公開された「ピス・オフ」はタイトルからして“くたばれ!”“死ね!”という意味の、イギリス的な罵倒語。アメリカではあまり使われないが、2014年のモンティ・パイソン再結成ショーの最後に観客に「さっさと帰れ!」と画面に“ピス・オフ”と映し出すなど、イギリスでは日常的に使われている卑語だ。スパークスはアメリカ出身のバンドだが、イギリスを活動拠点にしていたこともあり、そのヒネリを効かせたユーモアが“イギリス的”と形容されることもあるため、「ピス・オフ」は実に彼ららしいタイトルだ。

    さらに「コラボレーションス・ドント・ワーク」(コラボレーションなんてうまく行かない)という、やはりヒネったジョークの曲もあったりする。

    近年のスパークスのアルバムに必ずある固有名詞フィーチュア曲(イングマル・ベルイマンやモリッシー、ノートルダム大聖堂、カーネギー・ホール、アエロフロート、リベラーチ、チャーリー・パーカー、ツイ・ハークなど)がないのはやや意外だが、全編フランツとスパークスの濃い音楽性が凝縮された作品となっている。

    アルバムの曲に加えて、テレビ出演時にはスパークスの「ディス・タウン」とフランツの「テイク・ミー・アウト」をメドレー形式で共演するという見せ場もあり、それが日本でも披露される可能性は十分だ。

    数多くのハイライトが散りばめられたサマソニ2015だが、マニックスとFFSは絶対に見なければならないのである。


    <イベント情報>
    ●サマーソニック2015
    2015年8月15日(土)・16日(日)
    東京会場:QVCマリンフィールド&幕張メッセ
    大阪会場:舞洲サマーソニック大阪特設会場

    ●ソニックマニア2015
    2015年8月14日(金)22:00〜
    幕張メッセ

    ●ホステス・クラブ・オールナイター
    2015年8月15日(土) 開演時間は別途発表
    幕張メッセ

    公式サイト:http://www.summersonic.com/
    (各イベントはそれぞれ別料金)

    2015年6月18日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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