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    ドゥーム・メタルの伝説アンアースリー・トランスがふたたび現実となった日

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    ニューヨークの伝説のドゥーム・メタル・バンド、アンアースリー・トランスが再結成して話題を呼んでいる。

    2000年に結成、デビュー・アルバム『Seasons Of Séance, Science Of Silence』(2003)の時点でライアン・リプスキー(ギター、ヴォーカル)、ジェイ・ニューマン(ベース)、ダレン・ヴァーニ(ドラムス)という鉄壁のラインアップを確立させたアンアースリー・トランスは、無慈悲なまでにヘヴィに引き摺るスラッジ・ドゥーム・サウンドで世界の暗黒音楽シーンを席巻。ウィンターやコラプテッドらと比較されるサウンドを引っ提げて『サザン・ロード・レコーディングス』『ライズ・アバヴ・レコーズ』『リラプス・レコーズ』というドゥームの名門レーベルを渡り歩き、5枚のアルバムと数枚のシングルを発表してきたが、2012年7月に活動停止を宣言した。バンドが封印されたことにより、彼らは“伝説”のバンドと呼ばれてきた。

    だが日本のファンにとっては、彼らは別の意味で“伝説”とされてきた。

    2011年3月に行われたライヴ・イベント『EXTREME THE DOJO Vol.26』にはメルヴィンズ、ハイ・オン・ファイアーという強力な布陣に加えて、アンアースリー・トランスが出演することが決定。3月9日・大阪、10日・名古屋の公演に続いて、11日には東京・渋谷O-EASTでライヴが行われることになっていたが、開演直前、メルヴィンズがサウンドチェックしているときに東日本大震災に襲われ、中止になってしまったのである。

    筆者(山崎)は大阪まで密航、初日の公演を見ており、東京で再びその激重スラッジ・ドゥームに打ちのめされるのを楽しみにしていたが、それは実現しなかった。地震が起こったとき会場にいたメンバー達は外に出て、少しだけ話すことが出来たが、普段経験したことのない地震に明らかに動揺しており、仮にライヴが強行されたとしても、ベストな演奏は望めなかったと思われる。

    結局彼らは東京のステージを踏むことなく帰国、日本のファンは再来日を待ちわびていたが、その矢先の活動停止宣言。絶望や苦悩を題材とすることが多いドゥーム・メタルではあるが、我々はガックリ肩を落とすしかなかった。そうしてアンアースリー・トランスは日本でも“伝説のバンド”となったのだった。

    アンアースリー・トランスがなくなっても、メンバー達が活動を止めてしまったわけではない。ライアン、ジェイ、ダレンの3人は元エレクトリック・ウィザード〜ラメセスのティム・バグショー(ギター)と合体。サーペンタイン・パスを結成する。ファースト・アルバム発表後には元ウィンターのスティーヴン・フラム(ギター)が加入、このバンドはドゥーム界のスーパーグループとして熱狂的に迎えられた。彼らは2014年7月に2作目のアルバム『エマネイションズ』を発表、アメリカでライヴ活動を行ってきた。

    だが、アンアースリー・トランスの伝説は死ぬことがなかった。サーペンタイン・パスはメンバー3人が重複しながら、あくまで“別バンド”であることを強調。アンアースリー・トランスの曲をライヴで演奏することはなかった。そのせいもあり、ドゥーム・ファンの間では再結成が長く求められてきた。2014年、バンドがリリースしてきたシングルやコンピレーションの未CD化音源を2時間、2枚組CDに詰め込んだアンソロジー『Ouroboros』がリリースされたことも、彼らの復活を望む声をさらに強めていった。

    そんな要望に応えて、2015年5月、アンアースリー・トランスは遂にステージへの復帰を決意。2015年5月24日、バンドの地元であるニューヨーク・ブルックリンの『セイント・ヴァイタス・バー』でのライヴが行われた。さらに夏にかけて複数回の公演が決定している。

    ちなみにサーペンタイン・パスも並行して活動を続けるようで、アンアースリー・トランスの復活ライヴの前日、5月23日にはサーペンタイン・パスとして『メリーランド・デスフェスト』フェスに出演している。

    『リラプス・レコーズ』からアンアースリー・トランスとしての通算6作目となるニュー・アルバムがリリースされることも発表されており、あとひとつ我々が切望するのは、再来日だろう。ドゥームの伝説が2015年、ふたたび現実となった。彼らが日本のステージに戻ってくる日は、決して遠くはない。

    2015年6月10日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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