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    【ライヴ・レビュー】オーペス 2015年4月30日/東京・六本木EXシアター ゴールデンウィークを揺るがしたプログレッシヴ・メタル

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    大型連休となった2015年のゴールデンウィーク。有給休暇をくっつけて行楽に出かけた人も多かったようだが、ロックンロールにゴールデンウィークはない。むしろかき入れ時だとばかり、東京都内では連日さまざまなアーティストのライヴが行われた。それらを見に行っていたら連休が終わってしまったという強者も少なくなかっただろう。

    さらにいえば、同じ日にお気に入りのアーティストの公演が重なってしまい、頭を抱えてしまった人もいたに違いない。その最たるものが4月30日、中野サンプラザでのUK解散コンサートと、六本木EXシアターでのオーペス公演だった。どちらも広義のプログレッシヴ・ロックと呼ぶことの出来るバンドで、ファン層もかなり重複していたのでは。筆者(山崎)は悩みに悩んだあげく、EXシアターに足を運ぶことにした。

    傑作と呼ばれるアルバム『ペイル・コミュニオン』に伴うジャパン・ツアーは、大阪と東京で行われた。「エターナル・レインズ・ウィル・カム」から「カスプ・オブ・エタニティ」と、新作の1曲目・2曲目からスタートしたため、昔の曲はスルーか?と思わせたが、続いて披露されたのは『ブラックウォーター・パーク』(2001)からの「ザ・ドレイプリー・フォールズ」、『スティル・ライフ』(1999)からの「ザ・ムーア」と遡っていき、なんと2作目のアルバム『モーニングライズ』(1996)からの「アドヴェント」までが演奏された。いずれも初期オーペスのスタイルでプレイされ、ミカエル・オーカーフェルトは当時と同じデス・ヴォイスで場内を震わす。バンドの軌跡を一周して、再び最新作からの「エリジアン・ウォウズ」に戻ってくると、観衆からはフウッ…と、安堵したようなどよめきが洩れた。

    それからも「ウィンドウペイン」「デヴィルズ・オーチャード」「エイプリル・エセリアル」と、その豊潤なキャリアから満遍なくピックアップ。いわゆるヒット・シングルとは無縁な彼らではあるが、どの曲も作品のツボとなる重要曲であり、イントロが奏でられるたびに大きな歓声が沸き上がった。サークル・ピットもステージ・ダイヴも要らない。決して超満員というわけではなかったこの日の公演だが、観衆が発する熱量は、まだ春だというのに汗が滲んでくるものだった。

    それにしても驚かされるのが、バンドの演奏のタイトなことだ。ミカエルとフレデリック・オーケソンのギターのコンビネーションも“完璧”と言っても過言ではないもので、ヨアキム・スヴァルベリのキーボードと共にオーペス・ワールドを形作っていく。アルバムごとに音楽性を変化させてきた彼らだが、ミカエルを中心とした世界観が確立されているゆえに、違和感をおぼえさせられることがない。

    さらに、ライヴの音の良さも特筆すべきだろう。メタル色もあるオーペスゆえに、ディストーションや大音量は欠かすことが出来ないが、各楽器のセパレーションやクリアーさなど相当なこだわりを感じさせる。

    それほどキッチリとした演奏を聴かされると、窮屈になってしまいそうだが、そうさせないのが、ミカエルのステージMCだ。彼は曲間ごとにジョークを交えたトークで観衆を笑わせてくれる(時にベタ過ぎて苦笑するときも)。この日、何度かミカエルのギターの音が出ず、ギター・テクを呼び込んだが、そのたびに「ごめんね、俺たちはボン・ジョヴィじゃないから、こういうこともあるんだ」と言ったり、場内の外国人観客とコミュニケーションを取ったりもする。メンバー紹介のときも、全員を紹介した後、「こんばんは、カルメン・マキです」と言って、日本のファンを笑わせていた。

    また、ギター・テクいじりも再度行われた。「彼はソドマイザーっていうんだ。凄い名前だろ?」と発言していたが、彼はカタトニア(ミカエルがサポート・ギタリストを務めたこともある)のギタリストだったペル・エリクソン。彼とミカエルは共にデス・メタル・スーパーグループ、ブラッドバスに在籍したこともある盟友だ。

    ライヴは後半、緊迫感を増し、「ロータス・イーター」「ザ・グランド・コンジュレイション」は誇張でなく手に汗を握るライヴ・パフォーマンスでいったん幕を下ろした。そしてアンコールでの「最後の曲だ」という宣言には「1曲だけ?」という声も上がったが、その1曲が15分におよぶ「デリヴァランス」なのだから、文句が出るわけがない。

    まったく息を抜く暇のないステージは、あっという間のように思えた。しかし確実に2時間が経過したことは、会場から出たときの心地よい疲労が物語っていた。観衆の虚脱感を漂わせる表情は、2015年のゴールデンウィークのハイライトがオーペスのライヴだったことを証明するものだった。

    2015年5月21日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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