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    ゲーム・ソフト『ギター・ヒーロー ライヴ』は音楽シーンをどう変えるか

    配信日: | 配信テーマ:洋楽その他

    ロック・ファンを熱狂させたゲーム・ソフト『ギター・ヒーロー』が2015年秋、約5年ぶりに復活することが発表された。

    ギター形の専用コントローラーを操作してロックの名曲やヒット曲を“演奏”するこのゲームは2005年に発売されるや、欧米で大ヒット。第2弾『ギター・ヒーローII』(2006)はプレイステーション2とXbox 360の2フォーマットで合計300万本という、音楽ゲームとしては異例のセールスを記録した。

    『ギター・ヒーロー』シリーズの課題曲としてエアロスミスやブラック・サバス、ガンズ&ローゼズなどのベテラン・ロック・バンドの楽曲が収録されたことは、彼らが若い世代の音楽ファンに認知されるきっかけになった。その影響力は、しばしば音楽シーンについて辛辣な意見を吐くことで知られるイングヴェイ・マルムスティーンですら認めるものだった。彼は2009年の来日時に、筆者(山崎)とのインタビューでこう語っている。

    「グランジのせいで一度音楽は死んだけど最近、『ギター・ヒーロー』のおかげで、またギターがメインストリームになりつつあるんだ。息子を連れてゲーム店に行ったら、俺のことを知っている店員が『こんなゲームがあるんですよ』って、プラスチックのギター型のコントローラーを見せてくれた。今では誰もがあのゲームに夢中なんだ」

    イングヴェイ自身は本格的にこのゲームにのめり込むことはなかったものの、軽くトライしてみて「あまり高得点ではなかった」と苦笑していた。Mp3やyoutubeなど、気に入らない新しいメディアに対して強い口調で非難することもある彼だが、『ギター・ヒーロー』がギター・ミュージックを生かし続けていることをポジティヴに評価しているのが興味深かった。

    一大ブームとなったことで、『ギター・ヒーロー』(2005)、『ギター・ヒーロー2』(2006)、
    『ギター・ヒーロー3 レジェンド オブ ロック』(2007)、『ギター・ヒーロー ワールド・ツアー』(2008)、『ギター・ヒーロー5』(2009)、『ギター・ヒーロー ウォリアーズ・オブ・ロック』(2010)というオフィシャル6作品に加えて、『ヴァン・ヘイレン編』『メタリカ編』『エアロスミス編』、『DJヒーロー』『バンド・ヒーロー』などの外伝も発売されたこのシリーズ。あまりに短期間で多くのタイトルを発売したこともあってか、『5』『ウォリアーズ・オブ・ロック』のセールスは急降下していった。2011年、『ギター・ヒーロー7(仮題)』が開発中というニュースが報じられたが、それが発売されることはなかった。

    また日本市場においては、洋楽ロックを題材としたゲームへの馴染みがなく、また発売元のアクティビジョン社の日本法人が2008年に撤退したため、欧米ほどのヒットはしなかった。

    だが2015年4月14日、ニューヨークのベスト・バイ・シアターで『ギター・ヒーロー』復活の記者会見が行われた。『ギター・ヒーロー ライヴ』と題された新作は、プリインストールされている楽曲にローリング・ストーンズやグリーン・デイ、キラーズといった大物バンド、そしてブラック・キーズ、ウォー・オン・ドラッグス、エド・シーラン、ゲイリー・クラーク・ジュニアも含まれると発表されている。さらにはオプションのダウンロードで100曲以上をプレイ出来ることになるそうで、これまで以上に音楽スタイルの幅を拡げたゲームになりそうだ。

    また、コントローラーがこれまで以上に、本物のギターに似たシェイプになっているのも、よりリアルにギター・ヒーローを疑似体験できる仕様となっている。

    この記者会見には元マイ・ケミカル・ロマンスのジェラルド・ウェイとフォールアウト・ボーイのピート・ウェンツも出席、彼らの曲もゲームでプレイ出来ることが明らかになった。人気バンドの彼らが楽曲を提供したことで、若いファン層を取り込むことが期待される。

    なお彼らは2人とも重度のゲーマーで、ジェラルドはアルバム『ザ・ブラック・パレード』(2006)制作中にはスタジオに初代『ギター・ヒーロー』を置いて、曲作りに影響があったと語っている。

    はたして『ギター・ヒーロー』の復活はどのように受け入れられ、2015年の音楽シーンにどのような影響をおよぼすだろうか。話題の『ギター・ヒーロー ライヴ』、日本発売にも期待したい。


    2015年4月23日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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