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    【ライヴ・レビュー】マストドン/2015年4月1日 東京 原宿リキッドルーム

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    ヘヴィ・ロックの“新しい波”の到来をあらためて確信させたのが2015年4月、マストドン初の単独来日ライヴだった。

    マストドンの何がそんなに“新しい”のかをピンポイントで指摘するのは、容易ではなかったりする。それは変拍子を取り入れたリズムや、スピリチュアルなコンセプトを伴う歌詞もそうだし、モダン・ポップ・アーティストを起用したアルバム・ジャケットでもある。『ブラッド・マウンテン』(2006)『クラック・ザ・スカイ』(2009)のポール・ロマノ、『ザ・ハンター』(2011)のAJフォジック、『ワンス・モア・ラウンド・ザ・サン』(2014)のスキナーなどは、ホラー調マスコット・キャラクター(エディ、スナグルトゥース、ヴィック・ラトルヘッドなど)を見慣れたメタル・ファンにとっては、かなり斬新なものであった。

    初期からトゥール、ニューロシス、メルヴィンズなど、ヘヴィなロックとヴィジュアル・アートの融合を図ってきたバンドと密接な関わりを持ってきたことも、マストドンに“新しい”イメージをまとわせてきた。

    “ニュー・ロック”や“ニュー・ウェイヴ”など、新しいことを前面に出すアーティストは年月と共に古びてしまう運命にあるのだが、マストドンは普遍的な、それでいて彼らだけのアイデンティティを持った音楽性を急激に確立。デビュー15年目にしてヘヴィ・ロック・シーンに確固たるポジションを築いている。

    アメリカやヨーロッパでは既に大物バンドとして認知されているマストドンだが、日本においてはいささか微妙な扱いをされてきた。2002年11月の初来日時はまだデビュー間もない時期だったため、『EXTREME THE DOJO Vol.5』で4バンド中の2番手という扱いだったが(ヘッドライナーはハイ・オン・ファイアーだった)、『EXTREME THE DOJO Vol.11』ではコンヴァージに次ぐセカンド・ビルに昇格。ただ同じ2005年2月、なんと2日後に別バンドが出演する『〜Vol.12』が開催され、ややマニアックな『〜Vol.11』は割を食ってしまう結果となった。

    3度目の来日は『LOUD PARK 06』。日本の秋を彩る鋼鉄の祭典として定着しているこのフェスの記念すべき第1回への参戦だったが、なんと14時35分という早い時間の出番だった。同フェスではラム・オブ・ゴッド、ウィズイン・テンプテーション、ドラゴンフォース、オペスという、今をときめく大物がもっと早い時間帯に出演していたこともあるので、それを考えればマシかもしれないが、3度目の来日にしてこの扱いは、彼らの日本市場での未来が閉ざされたも同然だった。

    しかし海外で大注目される彼らを無視し続けることが出来るわけもなく、『SUMMER SONIC 09』で4度目の来日が実現する。真っ昼間、スタジアムの炎天下で熱演を繰り広げるマストドンの姿は感動的だったが、いかんせん暑すぎて、盛り上がるには命の危険すら感じるものだった。

    それから世界的にビッグになっていく彼らを横目で見ながら、ここまで人気の格差が出来てしまったらもう日本には来ないだろうなあ…と半分以上諦めていた日本のファンだが、2015年4月に東京と大阪でのライヴが決定。なんと5度目にして、初めての単独公演である!

    開演時間を待たずして、18時58分に会場は暗転。メンバー達がぞろぞろとステージに上がり、最新アルバム『ワンス・モア・ラウンド・ザ・サン』のオープニング・ナンバー「トレッド・ライトリー」からショーが始まる。続いて「ワンス・モア・ラウンド・ザ・サン」、「ブラスタロイド」と、新しめの曲が続く。

    ほとんどステージMCを挟むことなく、続いていく彼らのライヴ。それでも淡々とした印象は受けないし、無愛想にも感じない。それはバンドの演奏の緊張感とまっすぐな攻撃性ゆえだ。観衆でぎっしりの場内にも、どこかピンと張り詰めた緊張感があった。

    そんな空気がはじけたのは終盤、『リヴァイアサン』からの「メガロドン」、そしてラストの「ブラッド・アンド・サンダー」が演奏されたときだった。マストドンの“古典”といえる名曲に、観客たちは飛びはね、叫ぶ。凄まじい盛り上がりの中、ライヴは幕を下ろした。ドラマーのブラン・デイラーが「ありがとう、日本のみんな。また来るよ」と長めの挨拶をしていたのは、彼ら自身も緊張感から解き放たれたのであろう。

    5回目の来日、初の単独ジャパン・ツアーを終えて、マストドンの気持ちは既に6回目の来日に向かっている。伝統や現在に安住することなく、マストドンが“新しい”のは、常に未来を見据えた姿勢によるものなのだ。

    2015年4月 9日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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