音楽ジャーナリスト&ライターの眼 ~今週の音楽記事から~

新聞社の音楽記事、音楽ライターによる書き下ろし記事を集めたウェブサイトです。(毎週、月・木更新)

音楽ライター記事

つぶやく・ブックマークする

    【ライヴ・レビュー】キッス/2015年3月3日 東京ドーム

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    “世界で最もホットなバンド”には、スタジアムの大観衆が似合う。キッスの11回目となるジャパン・ツアーの最終公演は、東京ドームで行われた。

    1974年のデビュー以来、世界的な人気を誇ってきたのがキッスだ。彼らはまさにモンスター級のアルバム・セールスとマーチャンダイズの売り上げを誇り、各国でライヴの観客動員記録を塗り替えてきた。日本においても1977年3月から4月にかけての初来日公演以来、日本武道館をはじめとする大会場を熱狂の渦に叩き込んできた。

    キッスが初めて東京ドームのステージに立ったのは、1997年1月18日のことだ。ジーン・シモンズとポール・スタンレーという不動の2人にエース・フレイリー、ピーター・クリスが再合体したオリジナル・キッスによるライヴは、凄まじい盛り上がりで迎えられた。

    次に彼らが東京ドームを訪れたのは2001年3月13日のことだ。この時の来日は解散ワールド・ツアーの一環として行われ、やはり最高のライヴ・スペクタクルで有終の美を飾ることになった。

    いつの間にか解散は“なかったこと”になったが、それから何度も日本でプレイしてくれる彼らに感謝こそすれ、文句があろう筈がない。そして2015年、彼らは14年ぶりにBIG EGG(ほぼ死語)に戻ってきたのである。

    再結成や解散などをウリにせず行われた今回のライヴだが、キッスはとんでもない飛び道具を用意してきた。ももいろクローバーZとのステージ共演が実現することになったのだ。彼らは1月にコラボレーション・シングル「夢の浮世に咲いてみな」をリリース、テレビのワイドショーや音楽バラエティ番組、そしてスポーツ新聞やインターネットでの露出を図ることで、ドーム公演への道を盛り上げていくことになった。アリーナの観客席はほぼ満席、スタンドもキッス・アーミーとモノノフが集結、彼らのヒーローとヒロインが姿を現すのを待ちわびていた。

    この日のライヴは、“いつものキッス”であり、同時に“スペシャルな経験”でもあった。「デトロイト・ロック・シティ」で始まったライヴは、名曲のオンパレードだ。キッス流メタルの白眉「真夜中の使者」や再結成以来の代表曲「サイコ・サーカス」なども含め、死角のまったくないショーが繰り広げられる。2014年、ジーンは「ロックは死んだ」と宣言して論議を呼んだが、自らが最上級のロックをステージで披露するという、見事な自己矛盾をやってのける。

    デビューから40年オーバーの大ベテランである彼らゆえ、ジーンとポールは共に還暦を超えているが、そのステージ・パフォーマンスはまったく年齢を感じさせないものだ。ポールは宙吊りになって観衆の上空を飛び、ジーンは火を噴き、血を吐き、ステージ上空に舞い上がる。現在のリード・ギタリストであるトミー・セイヤーもギターのヘッドからロケット花火を放ち、エリック・シンガーもせり上がるドラム・キットで派手なプレイを聴かせるなど、極上のロックンロール・エンタテインメント・ショーを堪能させる。

    東京ドームにおいて、ロック・コンサートが初めて行われたのが1988年のことだ。当時は音がくぐもり、エコーしていたが、PAの進歩により、球場だということを思わせないクリアーなサウンドを楽しむことが出来る。また、かつては電光掲示板のようだったスクリーンも高画質になり、メンバー1人1人の顔面のシワすらも映し出されるようになった。また、以前は日本のライヴではまったく火を使用することがなかったが、近年ではある程度のパイロテクニックが使われ、この日もかなりの火炎噴射が行われていた。

    ポールは「初めて日本でプレイしたとき、この国のことはほとんど知識がなかった。知っているのは全米ナンバー1になった、キュー・サカモトのこの歌ぐらいだった」という前置きのステージMCに続けて、「上を向いて歩こう」を日本語のアカペラで熱唱。続く「ラヴィン・ユー・ベイビー」「ラヴ・ガン0「ブラック・ダイアモンド」」の3連打で、4万(推定)観衆の脳天は撃ち抜かれた。

    ライヴ本編はキッスの独壇場で、ももクロだけが目当てのファン達はサイリウムを持て余していたが(キッスを生で見て“改宗”したファンもいたかも?)、アンコールになってスクリーンにキッスとももクロのロゴが交互に映し出され、「夢の浮世に咲いてみな」でステージ共演が実現する。キッスのメンバー達が高いスタックヒールのブーツを履いていることもあり、大人と子供というより、もはや同じ生物なのか?と訝りたくなるほどの身長差に驚かされるが、そんな対照的なヴィジュアルや、ヴォーカルの掛け合いなど、メリハリの効いたステージ・パフォーマンスは両者の世界観をクロスオーヴァーさせて楽しめるものだった。そしてラストは「ロックンロール・オール・ナイト」で、キッスもももクロも観衆も一体となって合唱して、ショーはクライマックスを迎えた。

    キッスの生々しいステージ・パフォーマンスは距離感をおぼえさせず、まるで目の前1メートルぐらいで演奏しているように錯覚させた。あっという間に終わってしまったように思えたショータイムも、実は2時間近く、全17曲というものだった。最高のロックンロール・ショーは、時空の感覚を狂わせるものである。

    2015年3月12日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

    音楽ライター記事一覧を見る

    洋楽 のテーマを含む関連記事

    リズム重視してアレンジ チーフタンズのリーダー パディ・モローニ

    アイルランドを代表する伝統音楽のグループ、チーフタンズが来日公演を行う。現地の文化に根ざしながら、親しみやすいサウンドを展開。度々グラミー賞に輝き、ローリング・ストーンズやジョニ・ミッチェルら、有名どころとの共演も多い。長きにわたる活動について、リーダーのパディ・モロー...

    ライブ盤に込めた思い ジャクソン・ブラウン 人間の良心 信じている 

     米国のベテランシンガー・ソングライター、ジャクソン・ブラウンが公演のため来日した。社会や個人のあり方を世に問う誠実な姿勢が、世界中で支持されている。混迷する世界情勢の中、ジャクソンは我々に何を伝えていきたいのか。最新のライブ盤「ザ・ロード・イースト」(ソニー)に込めた...

    【ライヴ・レビュー】イエスfeaturingジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマン/2017年4月17日 東京 Bunkamuraオーチャードホール

    2017年4月、イエスfeaturingジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマンのジャパン・ツアーが行われた。日本公演が発表された時点では、来日公演はアンダーソン、ラビン&ウェイクマン(ARW)という名義で行われることになっていた。だが直前の4月9...

    2017年、日本に吹く熱風 / サンタナ『ロータスの伝説 完全版』とジャパン・ツアー

    これまで洋楽アーティスト達は数多くの伝説的ライヴ・アルバムを日本で録音してきた。ディープ・パープル『ライヴ・イン・ジャパン』やチープ・トリック『at武道館』、ボブ・ディラン『武道館』、エリック・クラプトン『ジャスト・ワン・ナイト』、スコーピオンズ『蠍団爆発!トーキョー・...

    世界的ベーシスト、ネイザン・イーストの公開リハーサルで見た、演奏が練り直され新たな響きが生まれる瞬間

    (取材・文/飯島健一) 卓越したプレイで数多のミュージシャンに信頼され、音楽ファンも魅了するベーシストのネイザン・イースト。今年1月に2ndソロアルバム『Reverence(レヴェランス)』を発表して、2月に来日。ビルボードライブ東京での公演前夜に開催された今回のスペシ...

     

    ページの先頭へ戻る

    • RSS
    • お問い合わせ