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    【ライヴ・レビュー】ロイヤル・ブラッド初来日/2015年1月21日 恵比寿リキッドルーム

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    ロック・バンドの迫力が、そのメンバーの人数とは関係ないことは、既に歴史が証明してきた。

    ホワイト・ストライプスはたった2人で、野外フェスティバルのヘッドライナーとして数万人の大観衆を湧かせてきた。ブラック・キーズもブロークンなロック・サウンドで人気を博してきた。インモータル・リー・カウンティ・キラーズは残念ながら解散してしまったが、ステージ背後にスピーカーの壁を積み上げる大轟音バンド、ジュシファーもマニアックな支持を得ているが、彼らはいずれもミニマムの、2人編成のバンドだ。

    彼らの多くはギター+ドラムスという編成であり、ベース不在による低音部の不足をプラスに転じてガレージ・フィーリングのあるサウンドを前面に出してきた。

    それに対して、ベース+ドラムスのデュオで、自由に躍り暴れるグルーヴを武器にしてきたのがライトニング・ボルトやデス・フロム・アバヴ1979であり、ロイヤル・ブラッドだ。
    デス・フロム・アバヴ1979は一時解散していたが、2014年の再結成アルバム『フィジカル・ワールド』で見事な大復活ぶりを見せつけてくれた。
    そしてロイヤル・ブラッドは、たった2人でレッド・ツェッペリンやクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジを彷彿とさせるヘヴィ・グルーヴ・サウンドを生み出し、本国イギリスでブレイクを果たしている。既に音楽ファンの中では噂になっていた彼らが、全英チャートのナンバー1を記録したデビュー・アルバム『ロイヤル・ブラッド』を引っ提げて、初来日公演を行った。

    まだアルバム1枚を発表したのみの彼らだが、海外フェスなどでの大絶賛を経ての来日ということで、会場のリキッド・ルームは開演前に超満員。観客をかき分けながら前方へと向かっていくと、彼らが手にしたドリンクに何度もぶつかって、すっかり全身が酒臭くなっていた。

    「カム・オン・オーヴァー」から始まった彼らのショーは、1曲目から重厚なグルーヴが腰骨を突き動かす。それにしても凄いのが、その躍動感だ。ステージ上にいるのはベースのマイク・カーとドラムスのベン・サッチャーの2人だけ。マイクはヴォーカルも兼ねるためマイク・スタンドの前にいるし、ベンはドラム・キットの前に座っている。これといったステージ・セットもなく、ただ見ているだけではほとんど動きがないのだが、まるで2人がステージ狭しと飛び跳ねているような錯覚に陥ってしまう。それはもちろん彼らの演奏の厚みのあるグルーヴ感によるものだが、観衆がバンドのぶんまでジャンプし、熱い声援を送っていたこともあるだろう。

    2013年に結成したばかりで、まだアルバム1枚しか楽曲のストックがないこともあり、この日演奏されたのはいずれも『ロイヤル・ブラッド』からのナンバー(とその日本盤ボーナス・トラック)だ。もちろん曲順はシャッフルしているものの、サプライズのカヴァー・ソングを演奏するわけでもなく、「ユー・キャン・ビー・ソー・クルエル」「フィギュア・イット・アウト」「ユー・ウォント・ミー」…と、アルバム収録曲が続く。

    だが、どの曲が演奏されても、イントロだけで大きな歓声が沸き上がる。決してメインストリームのヒット曲こそない彼らだが、4枚のフィジカル・シングル(ダウンロードだけでない、店頭に並ぶシングル盤)をリリースしており、1曲1曲がファンにとってはグレイテスト・ヒッツなのである。

    ステージ・アクションがない状態ですらも会場内はマス・ヒステリア状態だったが、実際にメンバーが動きを見せると、さらにヒート・アップする。「テン・トン・スケルトン」の後、ベンがドラム・ストゥールの上に立ち上がって見得を切ると、何故そこまで?…と驚くほどの盛り上がりが見られた。

    アンコール「ルース・チェンジ」「アウト・オブ・ザ・ブラック」を含めてもトータルで約55分と、決して長いステージではなかった。だが、場内の空気をバターナイフで切れそうなほどの濃密なライヴ空間は、5時間ぶんの興奮を伴っていた。

    日本国内ではまだ会場を訪れた900人の観衆しか見ていないロイヤル・ブラッドのライヴだが、そのエクスペリエンスは、これから多くの音楽ファンによって共有されることになるだろう。夏フェス参戦も噂される状況下(現時点ではあくまで噂で、何ら具体性はない)、ぜひ実現させて欲しい。

    ミニマムな編成でマキシマムな効果を出すロイヤル・ブラッドは、2015年のロックのキーワードのひとつとなりそうだ。

    2015年2月19日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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