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    2015年新春、川崎&なんばがスウェーデン化。ヨーロッパらが『KAWASAKI / NAMBA ROCK CITY』で来日公演

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    2014年から開始したライヴ・イベント『KAWASAKI / NAMBA ROCK CITY』。ハード・ロック/ヘヴィ・メタルのベテラン・バンドを中心としたラインアップで、第1回にはY&T/ウィンガー/ファイアーハウス、第2回にはウィンガー/スローターが出演、どちらもオールド・ファンから若い音楽リスナーまでを動員して大成功を収めたが、早くも2015年1月に第3回が行われることになった。

    『KAWASAKI / NAMBA ROCK CITY Vol.3』と題されたこのイベントは、いわば“スウェーデン編”といえるものだ。ヘッドライナーにヨーロッパを迎え、トリートとクラッシュダイエットが参戦することが決まっている。

    ヨーロッパといえばスウェーデンから初めて世界的な成功を収めたハード・ロック・バンドであり、大ヒット・アルバム『ファイナル・カウントダウン』(1986)を筆頭に、全世界で2,000万枚のセールスを誇っている。今もなお高い人気を誇り、2013年の『ラウド・パーク13』フェスでは実質的なヘッドライナーといわれた実力者(セミ・ファイナルの彼らを見て帰った観客もいた)ゆえ、2015年の念頭を飾る好ライヴになることは間違いないところだ。

    また、トリートは1990年8月以来の来日となる。1993年に解散、2006年に再結成と、ブランクのあった彼らだが、日本でのライヴは、かつて“北欧のボン・ジョヴィ”と呼ばれた彼らがインターナショナル・アクトとして復活の狼煙を上げる式典だ。

    グラム・メタルとバッド・ボーイズ・ロックンロールの精神を現代に伝えるクラッシュダイエットは2000年結成と、他2バンドと較べると若手の部類に入るが、乗り越えてきた修羅場の数は劣らない。2006年には初代シンガーのデイヴ・レパードが亡くなり、2013年にもマネージャーの事故死で初来日公演が中止になるなど、彼らは悲劇のバンドとも呼ばれてきた。だが、遂に実現する日本上陸で、彼らは不屈のロックンロールを堪能させてくれるだろう。

    しかし、それにしても驚かされるのは、スウェーデンの生み出してきたロック・バンドの数の多さと、そのクオリティの高さだ。ポップ界ではアバやロクセット、エース・オブ・ベイス、カーディガンズなどが世界的な大成功を収めてきたが、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの分野においても、数々のバンドが登場、世界へと羽ばたいていった。

    ヤンネ・スタークが著したスウェーデンのメタル事典『The Heaviest Encyclopedia of Swedish Hard Rock and Heavy Metal Ever!』には、3,600バンドが掲載されている。自らがオーヴァードライヴのギタリストであり、2014年8月に来日ライヴを行っているスタークは、スウェーデンが多くのバンドを育んできた理由について(1)公立の音楽学校があり、少ない金銭負担で音楽を学べる、(2)各自治体に無料あるいは安価なリハーサル・スペースやスタジオがある、(3)ミュージシャン達の国外の音楽に対してオープンな気質、(4)勤勉で妥協を許さない国民性を挙げている。

    それに加えて、スウェーデンは歴史的に貿易国であり、英語の普及率が高い。それゆえに英語の歌詞で、国際的な市場に打って出る土壌があったこともいえるだろう(同じく英語を話せる人が多いオランダも、早くからショッキング・ブルーやゴールデン・イヤリングなどが世界でヒットしている)。

    スウェーデンにおけるハード・ロックの歴史の扉を開けたのは、ノヴェンバーとネオン・ローズという2大バンドだ。クリームやマウンテンと比較されたトリオ編成のノヴェンバーは3枚のアルバムを発表、いずれも北欧ハードの名盤として今もなお聴かれ続けている。ちなみに前身バンドにあたるトレインには、後にピンク・フロイドやシン・リジィと活躍するイギリス人ギタリスト、スノーウィ・ホワイトが在籍していたことでも知られている。一方のネオン・ローズはハードなサウンドからプログレッシヴな曲展開、哀愁漂う北欧メロディを兼ね備えた名バンドであり、前述のスタークも“スウェーデン史上最高のハード・ロック・バンドのひとつ”と絶賛している。

    1970年代のハード・ロックから1980年代のヘヴィ・メタルへと時代の橋渡しをしたのが、ヘヴィ・ロードだった。彼らのデビュー・アルバム『Full Speed At High Level』(1978)はタイトル通りスピード感あふれる、攻撃的でメタリックなサウンドで、スウェーデンのロック・キッズを魅了している(後にキャンドルマスを結成するレイフ・エドリングもその一人だった)。続いて彼らは1970年代末のイギリスのメタル・ブーム(N.W.O.B.H.M.)に触発された『白夜伝説Death Or Glory』(1982)をリリース。上半身裸のおっさんが斧でシロクマと戦うジャケットは気が遠くなるほどダサかったが、音楽の質は極めて高いアグレッシヴなハード・ロックで、3作目『邪悪の化身 Stronger Than Evil』(1983)にはシン・リジィを解散させたばかりのフィル・ライノットがゲスト参加している。

    また、ヘヴィ・ロードのデビューと同じ1978年にスウェーデンのハード・ロック・ファンを騒然とさせたのが、パワーハウスのデモテープだった。このセミプロ・バンドの音楽性はまだ垢抜けないものの、15歳の天才少年ギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンの登場は衝撃であり、レイフ・エドリングは学校にあるラジカセで仲間たちと共に大音量で聴いたと述懐している。

    そのエドリングは1979年にトリロジーを結成。ドラマーは後にヨーロッパに加入するイアン・ホーグランドだった。このバンドは後にキャンドルマスへと発展していく。また、ヨーロッパの前身バンドであるフォース(UFOのアルバム『フォース・イット』から命名したものだった)が結成されるのも、同じ1979年だった。2015年に来日するトリートの前身バンドであるボーイズが結成したのは少し遅れて、1981年のことだ。

    1983年はスウェーデンのメタル・シーンにおいて、ターニング・ポイントとなる年だった。トーチが『暗黒からの脱出 Torch』、グローリー・ベルズ・バンドが『Dressed In Black』を発表。アンダーグラウンド・シーンでは17歳のクォーソンがバソリーを結成している。後に北欧ブラック・メタルの始祖のひとつと呼ばれるようになるこのバンドの初期ドラマーはヨナス・アカーランドだったが、彼は後にミュージック・ビデオ監督へと転身して、プロディジーやマドンナ、コールドプレイ、マルーン5などのビデオを手がけている。そしてこの1983年、ヨーロッパのデビュー・アルバム『幻想交響詩』が発表された。

    かくしてスウェーデンのハード・ロック/ヘヴィ・メタル・シーンは成長を遂げ、今日の隆盛を誇ることになるのだった。

    今回の来日公演は、セカンド・アルバム『明日への翼』(1984)のちょっと遅れた30周年セレブレーションという意味合いもあり、アルバム完全再現も単独公演と大阪・名古屋公演で行われる。2015年の新春に向けて、川崎&なんばのスウェーデン化計画が、着々と進行中である。


    <KAWASAKI/NAMBA ROCK CITY Vol.3 2015 スケジュール>

    ●カワサキ・ロック・シティVOL.3 2015
    日時:1月10日(土)/11日(日) 
    会場:川崎・CLUB CITTA’
    出演:ヨーロッパ/トリート/クラッシュダイエット

    ●なんば・ロック・シティVOL.3 2015
    日時:1月14日(水)
    会場:大阪・なんばHatch
    出演:ヨーロッパ/トリート
    ※ヨーロッパは『WINGS OF TOMORROW』完全再現+ベスト・ヒッツ

    ●ヨーロッパ単独公演
    日時:1月9日(金)
    会場:川崎・CLUB CITTA’
    ※『WINGS OF TOMORROW』完全再現+ベスト・ヒッツ

    日時:1月13日(火)
    会場:名古屋・ボトムライン
    ※『WINGS OF TOMORROW』完全再現+ベスト・ヒッツ


    総合案内: CLUB CITTA’(http://clubcitta.co.jp/001/citta-rockcity/)

    2014年12月11日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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