音楽ジャーナリスト&ライターの眼 ~今週の音楽記事から~

新聞社の音楽記事、音楽ライターによる書き下ろし記事を集めたウェブサイトです。(毎週、月・木更新)

音楽ライター記事

つぶやく・ブックマークする

    【ライヴ・レビュー】 KNOTFEST JAPAN 2014/幕張メッセ2014年11月15日(土)・16日(日)

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    2014年11月15日(土)・16日(日)、千葉・幕張メッセで“KNOTFEST JAPAN 2014”が開催された。2012年にアメリカのアイオワ州とウィスコンシン州で第1回が行われたこのフェスティバルだが、続いて2014年10月にカリフォルニア州サンバーナーディノで第2回が行われたのに続いて、日本上陸が実現したのである。

    フェス名からも明らかなとおり、両日のヘッドライナーはスリップノットだ。最新アルバム『.5: ザ・グレイ・チャプター』が日本でもオリコン総合チャート1位を獲得、現代メタルのトップ・バンドに君臨する彼らをトリに、洋楽邦楽を問わずヘヴィなバンドが総勢24組出演、凄演を繰り広げた。

    同じヘヴィ系フェスということで、どうしても比較されてしまうのが、前月にさいたまスーパーアリーナで行われたばかりの“LOUD PARK 14”だろう。今回“KNOTFEST”に出演する洋楽バンドは、実はすべて“LOUD PARK”でブッキングされたことがある。KoЯn、リンプ・ビズキット、トリヴィアム、パパ・ローチ、ラム・オブ・ゴッド、アモン・アマースまで、いずれも“LOUD PARK”のOBだ。唯一の例外であるファイヴ・フィンガー・デス・パンチも2010年、一度は発表されながら、出演キャンセルとなっている。さらに日本勢のCROSSFAITHも2013年の“LOUD PARK”に出演している。

    ただ、“KNOTFEST”と“LOUD PARK”は大きく性質を異にするイベントでもある。

    2013年に開催された“OZZFEST JAPAN”と同様に、“KNOTFEST”はアーティストの名前を冠した、中央集権のフェスだ。さまざまな出演バンドを楽しむにしても、まずはヘッドライナーありきであり、もしスリップノットが何らかの事情で来日不能となったら、フェス自体が中止となっていただろう。

    それに対して“LOUD PARK”は2006年以来、日本の秋を彩る鋼鉄の祭典となっており、メタル・ファンが1年に一度集う“場”としてのポジションを確保している。このフェスでは2013年のキング・ダイアモンド、2014年のマノウォーと、2年連続してヘッドライナーが出演をキャンセルする事件が起きたが、観衆はクールにそれを受け入れ、他のバンドのステージ(少しずつ持ち時間が増えた)を楽しんでいた。特に2014年の場合、かなり早い時間帯からラウドネスなどの大物が出演したため、“メタル漬けの2日間”という性質が強かった。1969年の伝説の“愛と平和の3日間”ウッドストック・フェスティバルにも絶対的なヘッドライナーがいなかったことを考えると、“LOUD PARK 14”はロック・フェスの原点に立ち返ったと言えなくもない。

    もうひとつ大きな相違点は、出演アーティストのチョイスである。“KNOTFEST”では、比較的若い世代のバンドを中心としたラインアップが集められていた。KoЯnやイン・フレイムスのような20年選手のベテランもいるが、中心となるのは若手アーティストだ。特にONE OK ROCKやSiM、MAN WITH A MISSIONのように、若くて才能あふれるバンドがありったけのエネルギーを放出するライヴを行って、若いオーディエンスたちも有り余ったアドレナリンがすっからかんになるまで盛り上がるという、“本来の”ロックのライヴのあり方を堪能させてくれた。

    一方“LOUD PARK”はメタルという音楽の多様性を実感させてくれるフェスだ。サンダーやヴァンデンバーグズ・ムーンキングスなどのヴィンテージな味わいのハード・ロックがあれば、ベルフェゴールのような豚の血をかぶってブラストビートで突っ走るブラック・メタルもある。グラマー・オブ・ザ・キルのようなイキの良い若手もいれば、ザ・ラスト・イン・ラインのように、主人公が亡くなっている追悼バンドまでがいる。老若男女、メタルを愛する人すべてのためにあるのが“LOUD PARK”なのだ。

    両フェスのどちらが“正しい”かを議論するつもりはない。ふたつのメタル・フェスが共存し、選ぶことが出来るのは、ファンにとっては嬉しいことだ。もちろんフェスのチケット代は安いものではないし、「ドリーム・シアターも見たいしスリップノットも見たい…!」と苦渋の選択を迫られたファンも少なくないに違いない。両フェスに行って、財政危機に陥ったファンも多いだろう。ただ言えるのは、“LOUD PARK”も“KNOTFEST”も、最高に盛り上がる空前のイベントだったということだ。

    ヘッドライナーのスリップノットのライヴは巨大な悪魔の頭部を飾ったセットとイルミネーション、両サイドが昇降するパーカッション台、吹き上がる炎などをフィーチュアしたスペクタクルだったが、それよりも数段パワフルだったのがバンドの演奏である。2日とも基本進行は共通していたものの、中盤で曲目を変更して、両日訪れているファンを熱狂させる。“KNOTFEST”にこれだけ強力なラインアップを集めたのは、それでも自分たちが最強であるという自信の現れだったのかもしれない。

    2ステージを並べて交互にライヴを行っていくという趣向だった“KNOTFEST”。バンドの演奏ごとに5分から10分のインターバルが置かれ、イベント招聘のH.I.P.社が今後行う公演の告知映像が流されたが、ひときわ大きな歓声が上がったのが、“OZZFEST JAPAN 2015”の開催が発表されたときだった。ヘヴィ・メタルの帝王オジー・オズボーンがトリを務めるのか? 開催はいつなのか? どんなアーティストが出演するのか? 今後の発表が待たれる。

    “KNOTFEST JAPAN 2014”は終わったが、ヘッドバンギングは終わらない。鋼鉄の2015年が、轟音の足音を響かせながら訪れる。


    2014年11月27日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

    音楽ライター記事一覧を見る

    洋楽 のテーマを含む関連記事

    リズム重視してアレンジ チーフタンズのリーダー パディ・モローニ

    アイルランドを代表する伝統音楽のグループ、チーフタンズが来日公演を行う。現地の文化に根ざしながら、親しみやすいサウンドを展開。度々グラミー賞に輝き、ローリング・ストーンズやジョニ・ミッチェルら、有名どころとの共演も多い。長きにわたる活動について、リーダーのパディ・モロー...

    ライブ盤に込めた思い ジャクソン・ブラウン 人間の良心 信じている 

     米国のベテランシンガー・ソングライター、ジャクソン・ブラウンが公演のため来日した。社会や個人のあり方を世に問う誠実な姿勢が、世界中で支持されている。混迷する世界情勢の中、ジャクソンは我々に何を伝えていきたいのか。最新のライブ盤「ザ・ロード・イースト」(ソニー)に込めた...

    【ライヴ・レビュー】イエスfeaturingジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマン/2017年4月17日 東京 Bunkamuraオーチャードホール

    2017年4月、イエスfeaturingジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマンのジャパン・ツアーが行われた。日本公演が発表された時点では、来日公演はアンダーソン、ラビン&ウェイクマン(ARW)という名義で行われることになっていた。だが直前の4月9...

    2017年、日本に吹く熱風 / サンタナ『ロータスの伝説 完全版』とジャパン・ツアー

    これまで洋楽アーティスト達は数多くの伝説的ライヴ・アルバムを日本で録音してきた。ディープ・パープル『ライヴ・イン・ジャパン』やチープ・トリック『at武道館』、ボブ・ディラン『武道館』、エリック・クラプトン『ジャスト・ワン・ナイト』、スコーピオンズ『蠍団爆発!トーキョー・...

    世界的ベーシスト、ネイザン・イーストの公開リハーサルで見た、演奏が練り直され新たな響きが生まれる瞬間

    (取材・文/飯島健一) 卓越したプレイで数多のミュージシャンに信頼され、音楽ファンも魅了するベーシストのネイザン・イースト。今年1月に2ndソロアルバム『Reverence(レヴェランス)』を発表して、2月に来日。ビルボードライブ東京での公演前夜に開催された今回のスペシ...

     

    ページの先頭へ戻る

    • RSS
    • お問い合わせ