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    ゲイリー・ハズバンド・インタビュー/超一流ドラマーが語る、超一流ミュージシャン論

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

    ジャズとロックを股にかけて活躍してきたドラマー、ゲイリー・ハズバンドが2014年9月に来日した。今回はアラン・ホールズワース・バンドの一員としてライヴを行った彼だが、その多彩なスタイルは、さまざまな超一流ミュージシャン達から引っ張りだこだ。アランのバンドのドラマーとして来日する直前には、ビリー・コブハム・バンドのキーボード奏者としてプレイしていたという多芸ぶりを見せるゲイリーに、その多彩な人脈と音楽性について語ってもらった。

    インタビューが行われたのは2014年9月30日で、ジャック・ブルースが亡くなるちょうど1ヶ月前のことだったが、ジャックとの思い出も語ってくれた。

    ●ビリー・コブハムのバンドでキーボードを弾き 、その次の週にアラン・ホールズワースのバンドでドラムスを叩くという、超一流のミュージシャンのバックで異なった楽器をプレイするという離れ業には、敬服します。

    僕自身は離れ業だと考えてないけどね。ドラムスもキーボードも、どちらも僕にとってはメイン楽器なんだ。それに昨日今日始めたわけではなく、もう何十年も前から両方ともプレイしている。すっかり今のスタイルが身体に馴染んでいるんだ。ジョン・マクラフリンとのライヴではドラムスとキーボードの両方をプレイするから、難易度は一番高いかも知れないな。

    ●アランやビリー、ジョン・マクラフリンをはじめ、あなたは数多くのトップ・ミュージシャンとプレイしてきましたが、今後一緒にやってみたい人はいますか?

    ジェフ・ベックやジョン・スコフィールドとやれたらいいな。ジェフとは10年ぐらい前に何かのセッションで一緒にやったけど、アルバムを作ったりツアーをしたり、新しい音楽を育むまでには至らなかった。僕が一緒にやりたいのは、ギタリストが多いんだ。ギタリストのファンなんだよ。

    ●超高度なテクニックを持つギタリスト達と共演するのと並行して、ロビン・トロワーやミッキー・ムーディーなどブルージーなギタリストとも共演してきましたが、あなた自身のプレイは異なりますか?

    いや、やることは同じだよ。ブルース・スタイルで叩くときは、よりベーシックでソリッドなプレイに徹することが多いけど、そんな中で自分の個性を出すようにしている。僕は高度なテクニックの応酬よりも、音楽家としての表現力を重視するんだ。アランにしてもジョンにしても、単に速く弾けるだけではなく、とてもエモーショナルなギタリストだよ。

    ●アラン・ホールズワースとは30年以上、一緒にやってきましたが、彼はギタリストとして、ミュージシャンとして、どのように変化してきましたか?

    彼は昔から凄いテクニックを持っていたけど、さまざまな人生経験を積んできたことで、そのギター・プレイにも人間的な厚みと奥行きが生まれたと思う。アランとの活動が、自分にとって本格的なキャリアのスタートだと考えているんだ。それ以前にもビッグ・バンドで3枚ぐらいアルバムを出したし、セッション・ワークはやってきたけど、扉を開け放ったのは『I.O.U.』(1982)だったと思う。

    ●アランと初めて会ったときを覚えていますか?

    僕がバーバラ・トンプソンのバンドでやっていた頃だった。1979年だったかな? アランが見に来たんだ。彼はちょうど新しいバンドを組もうとしているときで、僕に声をかけることにした。同じライヴを、ジャック・ブルースも見に来ていたのを覚えているよ。それからずっと後になって、ジャックとも一緒にやることになったんだから、不思議な縁だね。

    ●バーバラ・トンプソンの夫であるジョン・ハイズマンはブリティッシュ・ジャズ/ロック・ドラマーとしてコロシアムやニュー・ジャズ・オーケストラで活躍していましたが、彼のプレイについてどう思いますか?

    僕はブリティッシュ・ジャズよりもアメリカのジャズ・ドラマーを聴いて育ったんだ。だからジョンの参加アルバムをすべて聴いたわけではないけど、素晴らしいドラマーだと思う。バーバラのバンドでは1年半ぐらいやっていたから、ジョンとも面識があるんだ。とても良い人だよ。彼のアルバムで一番好きなのは、テンペストのファースト・アルバム(1973)かな。アランがギターを弾いていて、聴きどころが多いよ。それからジョンがジャック・ブルースと作った『シングス・ウィ・ライク』(1970)も素晴らしい。ジョンとアラン、そしてジャックは、『I.O.U.』のちょっと前に3人でデモを録っていて、聴かせてもらったことがあるんだけど、それも最高だった。

    ●あなたはしばしばジャック・ブルースと共演してきましたね。

    うん、彼は最高のジャズ&ロック・ベーシストであり、ピアニストであり…“離れ業”というのは、ジャックみたいな人を言うんだよ。彼とは何度も一緒にやったことがあるけど、クリームの曲をプレイするよりも、フリーフォームで共演する方が楽しかった。彼はとてもインスピレーションに富んだミュージシャンなんだ。

    ●あなたがゲイリー・ムーアと知り合ったのも、ジャックを通じてですか?

    そうだよ。1992年、ジャックのバンドからブルース・サラセノが突然脱退して、ジャックが急遽、代わりにゲイリーに参加してもらうことになったんだ。3人で意気投合して、「ブルース・フォー・ナラダ」というインストゥルメンタルを録音したよ。その後、ゲイリーの『ダーク・デイズ・イン・パラダイス』(1997)でプレイして、ツアーもやったんだ。

    ●ゲイリー・ムーアはどんなミュージシャンでしたか?

    ゲイリーもテクニックを持ち備えていたけど、まず第一にソウルフルなプレイヤーだった。とても情熱的なミュージシャンで、自分が何を求めているか熟知していた。ギター・プレイと同じぐらい、熱い人間だったよ。ただ、当時の彼には脆いところがあったのを覚えている。とてもシャイでナイーヴだった。離婚問題などもあったし、彼にとって決してハッピーな時期ではなかったんだ。それと彼は自分の音楽に対する確固たるアイディアがあって、それを他のメンバーにも求めていた。だから僕にも「こう叩いてくれ」と事細かに指示していたよ。彼はステージで大きなサプライズは求めていなかったんだ。僕は基本的に即興ミュージシャンだから、それを窮屈に感じることもあった。

    ●『ダーク・デイズ・イン・パラダイス』の音楽性については、どう感じましたか?

    あの当時、ゲイリーはドラムン・ベースに傾倒していたのを覚えている。当時のモダンなサウンドを、いかに彼のスタイルと融合させるか、実験していたんだ。…正直、僕にはよく判らなかった。結果として、バランスの悪いアルバムになってしまった気がする。ドラムン・ベースのリスナーはギターを聴くことを欲していなかったし、ゲイリーのファンはテクノロジーに興味がなかった。このアルバムで本当に素晴らしかったのは、「ホェア・ディド・ウィ・ゴー・ロング?」と「ライク・エンジェルズ」というバラードだった。ドラムン・ベースと関係ない曲だよ。この2曲では、ゲイリーは僕に自由に叩かせてくれた。彼はこの曲でのプレイを、とても気に入ってくれたよ。彼とはもう1枚、『ア・ディフェレント・ビート』(1999)というアルバムも作ったけど、やはりギターとテクノロジーの部分がうまく混じり合っていなかった。ゲイリーとはブルースをプレイするツアーも一緒にやったんだ。こちらの方が楽しかったよ。

    ●1998年7月にジャック・ブルース、ゲイリー・ムーアとあなたのトリオで、クリームの曲を中心にプレイするライヴを行いましたが、あの時はインプロヴィゼーションの要素も大きかったのではないでしょうか?

    うん。でも、自由度は決して高くなかった。インプロヴィゼーションといっても、クリームの曲が根っこにあるからね。ジンジャー・ベイカーの代役でいることは、決して楽しいことではなかったよ。それはレヴェル42でやったときも同じだった。他の誰かがプレイしたスタジオ・テイクをそのままコピーするのは、自分には向いていないんだよ。もちろん僕は元々セッション業界出身だし、プロの仕事としてベストを尽くすけどね。ジャックとゲイリーとプレイしたときも、自分の最上の部分を叩き出すようにしたよ。

    ●最近の若手ギタリストで気に入っている人はいますか?

    アレックス・マカチェクは凄いね。彼と作ったデュオ・アルバム『ナウ』(2013)はギリギリまで精神を集中して、緊迫感の強い作品になった。ただ、セールス的には厳しかったんだ。だから次のアルバムを作っても、出してくれるレコード会社がいないかも知れない(苦笑)。アレックスとは2012年にUKとしてもツアーしたんだ。ビッグな音楽だったし、セッション・ワークの中では楽しかったよ。ただ、あれはテリー・ボジオの代役だったし、エディ・ジョブソンは僕よりもテクニカルなドラマーを求めているんじゃないかな。またオファーがあったら、前向きに考える仕事のひとつだよ。

    ●今後の予定について教えて下さい。

    ドイツのNDRビッグ・バンドとのセッションや、ジョン・マクラフリンとのツアーがあるし、いろんなゲストを迎えたプロジェクト『ダーティ&ビューティフル』の第3弾も作業が進んでいる。さらに、『ダーティ&ビューティフル』シリーズの曲をライヴでプレイするバンドを組みたいとも思っているんだ。もちろんアランとも一緒にツアーを続けるつもりだよ。アランも僕も歳を取ったし、ツアーの規模を縮小するかも知れないけど、今の音楽ビジネスではレコードやCDで生計を立てるのは難しいし、これからも老体に鞭を打ってツアーを続けるよ。…引退?誰が?アラン?…ないない(笑)。

    (2014年9月30日、東京都内にて)

    Special thanks: ビルボードライブ

    2014年11月20日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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