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    祝・アントニオ猪木vsモハメド・アリ戦DVD化!/「炎のファイター」に関する考察

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

     歴史に残る世紀の異種格闘技戦、アントニオ猪木vsモハメド・アリが38年の月日を経て、遂にDVD化される。

     1976年6月26日、日本武道館で行われた3分15ラウンドの死闘。当時は“世紀の凡戦”と酷評されたが、今日では伝説の名勝負として語り継がれてきた。2014年5月、ポール・マッカートニーの武道館公演のチケットが10万円というのが話題を呼んだが(中止になった)、猪木vsアリ戦のロイヤル・リングサイド席は30万円。当時の貨幣価値を考えると、ポールの武道館公演をはるか凌ぐスケールの興行だったことが判るだろう。

     これまで権利関係がクリアーされず、商品化されてこなかったこの試合が、『燃えろ!新日本プロレス』エキストラ編として2014年6月26日にDVDリリースされることになったのだ。

     ドローという結果になったこの試合だが、その後、2人の間には友情が生まれ、アリが猪木に自分の主演映画『アリ/ザ・グレーテスト』のテーマ曲をプレゼントしたという逸話は有名だ(その真偽のほどはともかく)。それが、日本人だったら誰でも知っている名曲「炎のファイター」である。

     この曲を書いたのは、シカゴ出身の作曲家マイケル・マッサーだ。ダイアナ・ロスの歌う「マホガニーのテーマ」が日本のネスカフェTVCMに使われたことで、お茶の間でも知られているマッサーだが、『アリ/ザ・グレーテスト』の映画音楽を担当。後にホイットニー・ヒューストンがカヴァーしてヒットする挿入歌「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」や、ジョージ・ベンソンが歌うエンディング・テーマ「いつも一緒に」も彼が作曲したものだ(後者の作詞は2014年6月19日に亡くなったジェリー・ゴフィン)。

     ちなみにプロレス会場で猪木の入場テーマとして使用されていたのは映画サウンドトラックではなく、日本で独自にレコーディングされたヴァージョンだ。この会場使用ヴァージョンはオリジナルのファンキーなギター・カッティングなどがなく、よりストレートなアレンジに仕上がっている。シングルとして発売されたこともあるこの会場ヴァージョン、演奏は“アントニオ猪木とザ・ファイターズ”とクレジットされているが、実際の演奏者は不明だ。

     1977年に発売されたこのアナログ・シングル盤のB面は、映画ではジョージ・ベンソンが歌った「いつも一緒に」の日本語カヴァーだが、ここで歌うのは当時猪木の奥方だった倍賞美津子だ。松竹歌劇団出身の豊かな声量を生かしたヴォーカル・パフォーマンスは、戦いに赴く夫を気遣う妻のエモーションを表現した見事なものである(日本語詞はなかにし礼によるもの)。

     それから20年以上が経った1999年、サンタナのアルバム『スーパーナチュラル』を聴いた日本のプロレス・ファンは、驚愕にひっくり返ることになる。収録曲「エル・ファロル」のメロディが、「炎のファイター」とまるで同じだったのである。全米ナンバー1を獲得したこのアルバムで、カルロス・サンタナが情熱的なフィーリングを込めて弾く猪木のテーマは、ハイライトのひとつだった。

     この曲の作曲クレジットはマイケル・マッサーでなく、カルロス・サンタナとプロデューサーのK.C.ポーターとなっている。もしかしてひとつの伝承メロディがあって、それをマッサーとサンタナが別々にアレンジしたのではないか…などと考えを巡らせてみたが、それは憶測に過ぎない。その後、サンタナにインタビューする機会に恵まれたので、本人に直接訊ねてみることにした。

     結論からすると、「偶然」だった。サンタナはそもそも『アリ/ザ・グレーテスト』という映画の存在すら知らず、マッサーによるテーマ曲も聴いたことがなかったという。また、「エル・ファロル」には元ネタとなるトラディショナル・メロディもなく、まったくのオリジナル曲として書かれたものだそうだ。

    「確かに、『エル・ファロル』のメロディは世界に一つだけのオリジナルではない。『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』にもちょっと似ているしね。どこかで耳にして、無意識のうちに影響を受けた可能性もあるけど、意識してコピーしようとはしていないよ。…イノキ?それは誰だい?」と彼は語っている。

     なお奇妙な偶然だが、サンタナはウィル・スミスがアリを演じた『ALI アリ』(2001)の映画音楽の依頼があったと話していた。結局プロデューサーと意見が合わず、スケジュールの問題もあったため、この話は流れてしまったが、もし実現していたら、彼はどんな音楽を書いていただろうか。

     猪木vsアリ戦のDVDは、日本のプロレス・ファン達の魂をふたたび燃え上がらせることになるだろう。そして彼らの脳内では、例外なく「炎のファイター」が鳴り響いている。

    2014年6月26日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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