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    2014年1月、Y&T・ウィンガー・ファイアーハウスが来日 / デイヴ・メニケッティ(Y&T)インタビュー

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

     2014年は新年から熱い!発熱源は 川崎と難波。『KAWASAKI ROCK CITY』『NAMBA ROCK CITY』と銘打たれたイベントで、Y&T、ウィンガー、ファイアーハウスという3大アメリカン・ハード・ロック・バンドが来日を果たすのだ。

     いずれも息の長い人気を誇るベテラン・バンドだが、今回”主役”を務めるのはY&Tだ。彼らはヘッドライナーとして出演するのに加えて、デビュー40周年を記念する単独ライヴも発表されている。

    「40周年のアニヴァーサリー・イヤーを日本で始めるなんて、最高の気分だ」と語るのはY&Tのギタリスト兼シンガー、デイヴ・メニケッティだ。彼に日本公演への抱負と、40年の軌跡にまつわる秘話を語ってもらった。

    ●2014年1月の来日公演は、どのようなライヴを期待できるでしょうか?

     単独公演とウィンガー、ファイアーハウスとのジョイント、それぞれ異なったセットになるんだ。単独公演では40周年を記念して、特別なセットリストを用意している。Y&Tの前身バンドのイエスタデイ&トゥデイ時代の2枚のアルバムを含め、すべての作品からピックアップした、ヒストリー・ライヴとなる。今まで日本で一度も演奏したことのないサプライズも考えているし、きっと楽しいものになるよ。3バンドでのライヴは、それより演奏時間は少し短くなるけど、Y&Tのファンが求める曲の多くを網羅するベストな選曲だ。「ミッドナイト・イン・トーキョー」や「フォーエヴァー」は必ずプレイするよ。どちらのショーも、最高のニュー・イヤー・パーティーになるだろう。日本のみんなと一緒に新年を祝うんだ。

    ●2011年1月以来の来日ですね。

     うん、前回の来日は、とても辛い状況下で行われた。Y&Tのオリジナル・ベーシスト、ケニー・フィル・ケネモアが亡くなった直後だったんだ。日本に着く数日前、俺はフィルのベッドの脇にいて、彼が去っていくのを見守った。ずっと一緒にやってきた仲間なのに、もういないんだ。その数日後にY&Tのショーをやるのは正しいことなのか、何度も考えた。でもフィル自身も、我々が前に進んでいくことを望んでいた。日本のファンも事情を知っていて、フィルに捧げるトリビュート・ライヴになったよ。決して後ろ向きになってしまうのではなく、バンドとファンが愛を通わす、彼の人生のセレブレーションとなった。

    ●2011年の来日公演では『ブラック・タイガー』完全演奏が行われましたが、どのような経緯で行われたのですか?

     日本で特別なショーをやりたかったんだ。川崎で2日連続公演を行うことにしたとき、片方を企画ライヴにしようと思った。それで『ブラック・タイガー』を全曲演奏しようと考えたんだ。2006年、『ブラック・タイガー』と『ミーン・ストリーク』のCD再発を記念して、サンフランシスコのインディペンデントって会場で、2枚のアルバムを完全再現する2回のスペシャル・ライヴをやったことがあった。その翌年、同じ会場で『アースシェイカー』と『イン・ロック・ウィ・トラスト』を再現するショーもやった。『ブラック・タイガー』をプレイしたのは、そのとき以来だよ。2012年には世界各地で2、3回やったかな。全世界で5回ぐらいしかやっていない。バンドにとってもファンにとっても、特別なエクスペリエンスだった。

    ●今回『KAWASAKI ROCK CITY 2014』に出演するウィンガーとファイアーハウスとは、1980年代から交流はありましたか?

     いや、両バンドとも、比較的最近知り合った仲だよ。ウィンガーと初めて一緒にショーをやったのは1990年代に入ってからだった。数年前、Y&Tがサンフランシスコのフィルモアでライヴをやったとき、キップ・ウィンガーがソロ・アコースティックで前座を務めてくれたこともある。ファイアーハウスとも一緒にやる機会がなかったんだ。初めてやったのは2000年頃になってからだった。今ではみんな友達だし、3バンドで日本に行くなんて、男子校の修学旅行みたいだな(笑)。

    ●Y&Tは他の2バンドより若干先輩で1974年、サンフランシスコで結成していますが、1960年代末のヒッピー・ムーヴメントは当時もう終わっていましたか?

     ああ、サンフランシスコのフィルモアは既に閉鎖していたし(後に再オープン)、ヒッピー世代のウェスト・コースト・ロック・シーンは終わっていた。ただ、サンタナやグレイトフル・デッドはベイ・エリアで人気を誇っていたし、我々もウィンターランドやカウ・パレスといった伝説のライヴ会場でライヴをやることが出来た。イエスタデイ&トゥデイはヒッピー・ムーヴメントが燃え尽きた焼け跡から登場した、新世代ロック・バンドだったんだ。あの頃、ベイ・エリアでハード・ロックをプレイしていたのはモントローズと俺たちぐらいだった。あと、俺たちが初めて契約したマネージャーはジャーニーも手がけていたんだ。彼らはファースト・アルバムを出したばかりで、1970年代中盤に、12、3回は一緒にプレイしたはずだ。

    ●1982年7月の初来日公演について、どんなことを覚えていますか?

     当時俺たちは初めてアメリカを出て、ヨーロッパでショーをやるようになったばかりで、日本でプレイするというのは、とてつもなく大きな出来事だった。日本の音楽シーンがどんなものか、まったく何も知らなかったんだ。初めて聴いた日本のバンドは、ラウドネスだった。信じられないほどのテクニックとエキサイティングな演奏力で、この国のロックのレベルの高さにショックを受けたよ。さらに衝撃だったのは、Y&Tの曲から名前をとった日本のプロ・バンドがいることだった!アースシェイカーというバンド名は、単なる偶然だと思ったんだ。そしたら本人たちから「いや、Y&Tからとったんだよ」と言われた。彼らもグレイトなバンドで、名前を使ってもらえて誇りに思ったよ。

    ●当時の日本のオーディエンスからは、どんな反応がありましたか?

    「日本の観客は静かに椅子に座って、おとなしく手拍子を打っている」と言われていたけど、とんでもない大ウソだった!みんな立ち上がってクレイジーになって、大声を上げて拳を突き上げていたよ。しかも到着した日に地震があって、帰国日は台風だったんだ。ワイルドなおもてなしだと思ったよ(笑)。初めて日本に行ったときの興奮は「ミッドナイト・イン・トーキョー」で歌っているんだ。

    ●Y&Tは日本に先駆けて、ヨーロッパにも進出していますね。

    『アースシェイカー』はリリース当時(1981年)、アメリカではパッとしなかったけど、ヨーロッパで大受けしたんだ。オランダのロック・チャートで1位になったりね。当時所属していたレコード会社『A&M』にはハード・ロック・バンドは俺たちしかいなかったし、担当者もどう扱っていいか判らなかったから、「なんかヨーロッパでウケているみたいだし、イギリスでレコーディングさせて、何回かライヴをやらせよう」ということになった。

    ●4枚組ボックス『Earthquake: The A&M Years 1981-85』には1982年レディング・フェスと1984年モンスターズ・オブ・ロック・フェスのライヴ音源が収録されていますが、レディング出演にはどんな思い出がありますか?

    『ブラック・タイガー』のレコーディングでイギリスに来ていて、レコード会社に「せっかく来ているんだから、フェスに出てみたら?」と言われた。それでレディング・フェスに出演したんだ。そうしたら何故かヘッドライナーのマイケル・シェンカー・グループのひとつ前という、最高に良いポジションだった。イギリスのキッズからの反応も良かったし、その後レコードのセールスも急激に伸びたんだ。しかもレディングのステージをAC/DCのメンバー達が見ていて、俺たちを全英ツアーのサポートに起用してくれたんだよ。

    ●1980年代にはアメリカでヘヴィ・メタル・ブームが起こりましたが、あなた達はどう感じましたか?

     モトリー・クルーやポイズンの音楽はフックのあるロックンロールだし、話してみるとナイス・ガイだけど、Y&Tがやっている音楽とは一線を画していた。俺たちは長髪だったけど、普段着でステージに上がっていたしね。レコード会社から「ヘア・スタイリストと衣装担当を雇え、MTV向けにビデオを作れ」と言われたけど、「いや、それは俺たちじゃないから」と肩をすくめて無視した。でも80年代の音楽シーンには勢いがあったし、活気にあふれていた。俺たちはチャートの1位にはならなかったけど、ライヴはソールドアウトを連発していたし、エキサイティングな時代だったよ。

    ●Y&Tの音楽、特にあなたのギター・プレイには、多くのメタル・バンドになかったブルースからの影響がありましたね。

     ギターを始めた頃、ブルースのフレーズをよく練習したんだ。B.B.キングやアルバート・キング、フレディ・キングはもちろん、ジャンゴ・ラインハルト、オールマン・ブラザーズ・バンドのような、厳密にいえばブルースメンではないアーティストをコピーしたよ。デュエイン・オールマンは俺にとってヒーローだったんだ。彼のエモーショナルなブルース・ギター・プレイからは影響を受けたね。それともう一人、マウンテンのレスリー・ウェストは理想的な形でブルースとロックを融合させていた。彼のプレイとトーンにはありったけの感情が込められていたよ。

    ●あなたのソロ名義での作品はさらにブルース色が濃いですが、今後ソロ・キャリアは続けることになるでしょうか?

     今ちょうど、新しいソロ・アルバムを作ろうとしているんだ。少しずつ曲を書きためて、半分ぐらい出来たところだよ。Y&Tのツアーで忙しいし、ホテルの部屋で曲を書いたりしない方だから、しばらく時間がかかりそうだけど、遠くない将来、完成させたいね。

    ●Y&Tとしてのニュー・アルバムは期待できそうでしょうか?

     今年は40周年を記念してワールド・ツアーに出て、80回ぐらいライヴをやることになる。だから新作スタジオ・アルバムは2015年になってしまうけど、その前に、過去の代表曲をスタジオ・ライヴでレコーディングした再録ベスト・アルバムを2014年内に出すつもりだ。かなり異なったアレンジの曲もあって、エキサイティングな仕上がりになっているよ。サンフランシスコでアニヴァーサリー・ライヴをやって、それをDVD用に撮影することも決まっているんだ。Y&Tを始めたとき、こんなに長いあいだ続くとは考えもしなかった。日本のファンに直接会って感謝したいから、ぜひ会場に遊びに来て欲しい。


    協力: CLUB CITTA’

    【公演情報】
    2014年
    1月10日(金)
    Y&T デビュー40周年記念ライブ(単独公演)
    会場:川崎 CLUB CITTA'
    OPEN 18:00 / START 19:00

    1月11日(土)、12日(日)
    Y&T / WINGER / FIREHOUSE
    -ウィンガー 25周年記念公演-
    会場:川崎 CLUB CITTA'
    OPEN 16:00 / START 17:00

    1月13日(祝・月)
    Y&T / WINGER
    -ウィンガー 25周年記念公演-
    会場:大阪 なんばHatch
    OPEN 16:00 / START 17:00

    【公演特設ページ】
    http://clubcitta.co.jp/001/kawasaki-namba-rockcity-2014/


    2013年12月12日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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