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    【続】ヘイ!ヘロー! インタビュー/ジンジャーが語る、ワイルドハーツ復活と日本のファン気質

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

     ジンジャー・ワイルドハートの勢いが止まらない。2012年、制作費をファンから事前に募るクラウド・ファンディング形式で作られたアルバム『555%』(とダイジェスト盤『100%』)が成功を収め、続くソロ名義の『ミューテイション』と新プロジェクト、ヘイ!ヘロー!の『ヘイ!ヘロー!』もわずか1日で目標額を達成。『ヘイ!ヘロー!』に至っては、全英ロック・チャートでナンバー1を記録してしまった。

     2013年8月には新たに、ジンジャー・ワイルドハート・バンドとしてのアルバム『プラクティカル・ミュージシャン』のプレオーダー・キャンペーンをクラウド・ファンディング・サイト『プレッジミュージック』で開始。たった一晩で目標額の200%を突破している。

     転換期にある音楽業界の新しいビジネス・モデルとして注目を集めるジンジャーは去る2013年7月に『ヘイ!ヘロー!』のプロモーションで来日。本サイトでも先日、『ワイルドハーツのジンジャーが語る、新しいビジネスと新しいロックンロール』としてインタビュー記事を掲載したが、文字数の関係もあって、幾つかの話題に焦点を絞った編集ヴァージョンとなった。今回は『ヘイ!ヘロー!』全英ロック・チャート1位獲得記念として、彼とヘイ!ヘロー!の相棒、ヴィクトリアのインタビュー続編を掲載したい。

    『555%』『ヘイ!ヘロー!』ともに、制作費捻出に協力したファンの名前はCDブックレットにクレジットされているが、気付くのは、日本のファンが多いことだ。ジンジャーと日本のファンは、長い相思相愛関係を育んできた。

    「日本のファンはいつもフレンドリーで、熱狂的に迎えてくれる。日本のツアーが終わると、いつも『帰りたくない。ずっとここにいたい』って気分になるんだ。一度、本当にそのまま日本に居残って、数ヶ月東京で暮らしたことがある。最高に楽しい経験だったね。日本の食べ物も好きだよ。納豆以外はね」(ジンジャー)

     そこまで話して、差し入れられたカレーパンを口にした彼だが、ちょっと微妙な顔をする。「あと、カレーパンもあまり口に合わないかも知れない(苦笑)」

     2012年6月に行われたジンジャーの来日公演に帯同、今回のプロモーション来日でもインストア・ライヴで共演したヴィクトリアも、日本におけるジンジャー人気には驚いたそうだ。

    「日本のファンは探求心があって、常に自分の好みに合う音楽を探していると思う。インストア・ライヴをやった時、たまたま売り場にいた人が『誰だろう?』って足を止めて、演奏を聴いて、最後にCDを買っていた。ジンジャーもあらゆる音楽を好きで、さらに常にいろんな音楽を探求してきたアーティストだから、そんな気質が日本のファンと共通しているんじゃないかしら」

     ジンジャーはこう語る。

    「日本は経済的に豊かな国だけど、CDだってタダじゃない。みんな労働の対価として得た報酬の一部から買ってくれているんだ。だから俺も日本の人々と同じぐらいハードに働いて、彼らがCD代の元を取れるように心がけているよ」

    『ヘイ!ヘロー!』最大の魅力が音楽そのものであることはもちろんだが、ショップの店頭で目を捕らえるのは、そのカラフルでキャッチーなジャケットである。このアートワークを手がけたのは、アメリカのグラフィック・アーティスト、フランク・コジックだ。オフスプリングやメルヴィンズ、ラルク・アン・シエルなどのアートワークを担当するなど、ロック音楽と縁が深いアーティストだ。

    「コジックみたいなデザインが欲しいと思った。だったら本人に頼んでみよう!ってことになったんだ。『ミューテイション』のジャケットを描いてくれたジョー・ペタグノもそうだよ。モーターヘッドの『オーヴァーキル』ジャケットのイメージは、俺がガキの頃に目指したイメージそのものだった。『555%』のジャケットは、スウィートの『明日なき青春 Off The Record』みたいなイメージを欲しかった。それで、『明日なき青春』を手がけたアーティストのテリー・パスターに連絡をとってみた。彼はデヴィッド・ボウイのジャケットも何枚か手がけた人だけど、さすがに高齢だし、現役を退いているだろうから、直系の弟子がいたら紹介してもらおうとしたんだ。そうしたら「私がやるよ」って言ってくれた。...この話の教訓は、”ダメ元で、とにかく頼んでみること”だよ」(ジンジャー)

     ところでコジックはかつて自らの音楽レーベル『マンズ・ルイン・レコーズ』を主宰しており、2001年に閉鎖した後もカルトな人気を誇っているが、ジンジャーのお気に入りのアーティストの作品を何枚もリリースしていた。

    「ヘラコプターズの『スーパーシッティ・トゥ・ザ・マックス』はトーマス・スコグスベリがプロデューサーだったけど、頭がいかれてるとしか思えないサウンドだった。バイクが自分の顔面に突っ込んでくるような、ドラッグでぶっ飛んでいる状態でローラーコースターに乗るような経験だったよ。あれほどハードコアなロックンロール・バンドはいなかった。ヘラコプターズとは一緒にジャパン・ツアーをやったこともあるし、最高だったな。それからニュー・ボム・タークスやグルシファー、スーパーサッカーズもそうだっけ?『マンズ・ルイン』には良いバンドがたくさんいたね。ただ、その手のバンドすべてが好きなわけじゃないんだ。ギター・リフや歌詞の内容がどれも同じだったりするし、音も似通っていたりする」

    『マンズ・ルイン』はそれら爆走系ロックンロールと同時にストーナー・ロックの作品も多くリリースしてきたが、ジンジャーは「彼らはもっとエクストリームであるべきだった」と手厳しい。

    「メルヴィンズやカイアスは凄いと思うけど、 彼らを模倣するストーナー・バンドが多すぎた。好きなバンドがいたら、自分が好きな部分を100倍に増幅するべきなんだ。カイアスが好きだったら、あの低音をブーストして大爆発させるべきなんだよ。俺だってそうしてきた。俺は自分がやっていることが100%オリジナルだというつもりはない。でも、受けてきた影響を隠すのではなく、さらに誇張してきたんだ。”ほどほど”のレベルで留まらず、どこまでも行くべきなんだよ」

     ちなみにジンジャーが”どこまでも行ってしまった”アーティストの代表格として挙げたのが、フランク・ザッパだった。

    「『ユー・アー・ホワット・ユー・イズ』は凄いね。とにかく演奏が想像をはるかに超えていて、聴くたびに驚かされる。ザッパの作品で”駄作”は無いんじゃないかな。ただ、『イエロー・シャーク』は正直判らない。あとギター・ソロばかりのやつも、何だこれは?と頭を抱えてしまった(苦笑)」

     ヴィクトリアもまた、ザッパ・ファンだったりする。

    「一番好きなのは『アポストロフィ』、次が『シーク・ヤーブーティ』かな。フロー&エディが参加している作品は全部好きよ。後期のクラシック色のある作品は眠くなったりするけど」

     ジンジャーの今後の活動だが、2013年12月頃に『プラクティカル・ミュージシャン』をリリース、またソロ・アコースティック・アルバムを制作する予定がある。現時点では、ワイルドハーツとしての活動は予定されていない。

    「今の時点で、ワイルドハーツのアルバムを頭の中でイメージすることが出来ないんだ。でも今後、永遠にないとは言わない。”絶対あり得ない”ことが次々と起こるのがワイルドハーツだからな。『アースvsワイルドハーツ』25周年ライヴ...いや、その前に『p.h.u.q.』20周年があるか。来年(2014年)には『フィッシング・フォー・ラッキーズ』ファンクラブ・ヴァージョンの20周年記念ライヴをやってもいいかも知れない(笑)。昔のアルバムのアニヴァーサリー・ライヴは、やっていて楽しいんだ。昔のアルバムでもう一度儲けようというのではなくてね。昔ワイルドハーツのファンだったキッズが、久々にライヴ会場に足を運んで、飲んで踊って楽しいひとときを過ごす。楽しいパーティーなんだ」

     ヘイ!ヘロー!、ソロ、そしてワイルドハーツ。ジンジャーのファンにとって、2014年は楽しい1年になりそうだ。

    Special thanks: Vinyl Junkie Recordings

    2013年8月29日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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