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    国家主義ブラック・メタルとイタリアン・アンダーグラウンド・メタルの研究書が刊行(ただしイタリア語)

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

     イタリアの出版社『ツナミ・エディツィオーニ』から興味深い書籍が2冊、刊行された。ダヴィド・マスぺーロ&マックス・リバリッツ共著の『Come Lupi Tra Le Pecore』、そしてエドアルド・ヴィトーロ著の『Sub Terra』である。

    『ツナミ・エディツィオーニ』はロック専門書を扱う出版社で、ウェブサイトを見る限りメタル関連書が多いが、エイミー・ワインハウスやブライアン・ジョーンズに関する書籍も刊行している。リッチー・ブラックモアやモトリー・クルー、ランディ・ローズなど、英米で出版された本のイタリア語版も出しているが、オリジナルの出版物も多く刊行しており、今回紹介するのは、その中でも最もコアな内容のものだ。

    『Come Lupi Tra Le Pecore』のタイトルは”羊の群れの中の狼”という意味。副題として”国家社会主義ブラック・メタルの物語と思想”が付けられている。ブラック・メタルの中でも悪魔崇拝や反キリスト教主義、ナチズム、白人至上主義などが渾然一体となった最も過激なサブジャンルである国家至上主義ブラック・メタル(NSBM)について、全560ページにわたって克明に記されている。

     ギリシャ出身で、アーリア民族の優性を主張するナチ・メタル・バンド、デル・シュトゥルマーについてかなりのページが割かれていたり、ライヴ演奏するバンドに向かって観客がナチ式の敬礼をするダーク・フューリー、バンドのロゴ・マークに鉤十字を使っているフューネラルなど、知られざるNSBMバンドの数々が紹介されている本書、マイナーなジャンルゆえに有名バンドはあまり掲載されていないが、スレイヤーやS.O.D.、タイプ・オー・ネガティヴなどの大物のナチシンパ疑惑(あくまで“疑惑”で、本人たちは真っ向から否定している)にも言及されている。さらに日本の1980年代のインディー・バンドで、ロゴに鉤十字を使っていたロンメル(現UNITEDのメンバーが在籍していた)や”国家社会主義忍者”なるバンドまでが紹介されるなど、ディープな掘り下げが行われている。アーティスト写真やジャケット図版も多数掲載されており、NSBMについて研究するには、欠くことの出来ない一冊だろう。ちなみに初版本のうち199部のみ、豪華ハードカバー仕様となっている。

     もう1冊、『Sub Terra』は“地下”の意味。”イタリアのエクストリーム・ロックとアンダーグラウンド・カルチャー 1977-1998”という副題がつけられている。表紙に映っているのがデスSSのスティーヴ・シルヴェスターとブルドーザーのA.C.ワイルドというあたりからも窺うことが出来るが、イタリアのアンダーグラウンド・メタルについて紹介した本だ。日本でもイタリアのプログレッシヴ・ロックは人気があり、「イタリアン・プログレ廃盤の多くは東京に集まっている」とイタリアのマニアですら舌を巻いたものだが、本書ではプログレはほぼ無視して、ダークなアンダーグラウンド・メタルを中心とした作りになっている。

     日本公演も実現したブルドーザー、そしてサディスト、エクストレマといった知名度のあるバンドに加えて、変格ダーク・メタルの雄であるデスSS、脱退してソロとなったポール・チェイン、カルト・バンドとして息の長いザ・ブラック、イタリアン・グラインドコアのベテランであるクリップル・バスターズなどは、日本でも知られているだろう。デモテープやフライヤーが掲載されているバンドの多くは、名前を聞いたことすらないローカル・バンドだ。本書を読むことで、イタリア半島の地下に巣くってきた闇のメタル・シーンの動きを知ることが可能となる。地域ごとのシーンについて記したり、『ブラック・ウィドウ・レコーズ』『マイ・キングダム・ミュージック』といったインディーズ・レーベルのオーナーへのインタビューを収録するなど、全350ページ、イタリアン・アンダーグラウンド・メタル漬けとなる良書だ。

     最大のネックとなるのは、両書ともイタリア語で書かれていること。『Come Lupi Tra Le Pecore』は英語版が刊行される可能性もあるそうだが、現在は写真やアートワークに見惚れながら、オンライン辞書を駆使して読み耽っているところだ。和書だけでは知ることの出来ない、深い暗闇が口を開いて待っている。



    ●紹介書籍
    Davide Maspero / Max Ribaric共著『Come Lupi Tra Le Pecore』
    Eduardo Vitolo著『Sub Terra』
    (共にTsunami Edizioni刊)

    2013年3月21日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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