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    <音楽ニュース解説&分析>画期的なライブ空間を作り出しているamazarashi

    配信日: | 配信テーマ:Jポップ

     音響や照明や映像機材の進化に伴って、ライブのあり方も変化してきている。バーチャルアイドルである初音ミクが、透過式ボードの背後から映像を流す手法で、海外でコンサートを開催して好評を博したという昨年のニュースは象徴的だった。仮想アイドルの立体化も驚いたが、その真逆の方向での衝撃をもたらしたのが青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンド、amazarashiのコンサートだ。ライブというリアルな空間でありながら、仮想空間に紛れ込んだような感覚を味わう瞬間があった。《Live「千年幸福論」》というタイトルで行われた彼らの今年1月28日の渋谷公会堂とその追加公演の3月16日のSHIBUYA-AXで、彼らは最新の映像技術を駆使しながら、人間の根源的なテーマを掘り下げて、音楽、映像、文字が一体となった素晴らしいライブ空間を作り上げていた。コンサートという表現空間の可能性を広げるステージだった。

     一般的に演奏者の生の姿を目撃できることがライブの醍醐味のひとつとなっているのだが、彼らは自らの姿をさらさない。ステージに半透明の幕がかかっていて、その背後で演奏していて、照明の当たり具合によって、シルエットや動きを確認することは出来るのだが、どんな表情で演奏しているのかはわからない。常識を覆す大胆かつ画期的なやり方なのだ。「美しき思い出」という曲などでは、前面のスクリーンにシャボン玉が映され、後方のスクリーンに吉祥寺の街の風景など、歌詞と連動した映像が映し出される。そして2つの映像に挟まれた空間でamazarashiが演奏していて、リアルな現実と記憶の中にある風景とが混ざり合っていくようなシュールな味わいがある。逆に、「ピアノ泥棒」では本物のグランドピアノが宙づりになっていて、一瞬、映像なのか現実なのか混乱してしまったりする。映像も効果的に使われている。「夏を待っていました」という曲のミュージックビデオが文化庁メディア芸術祭 エンターテイメント部門優秀賞を受賞するなど、彼らは映像でも優れた作品をたくさん発表していて、ライブでも斬新な映像がふんだんに使われていた。歌詞などの文字が映し出される場面やポエトリー・リーディングもある。古典的な表現から最新技術を駆使した表現まで自在。人間味あふれる世界を作り出しているのはamazarashiがライブバンドとしても突出しているからだろう。切実に響く生々しい歌声、エッジの効いた演奏、イマジネイティヴな映像、そして鋭くて深い歌詞が渾然一体となって、濃密な空間を作り上げている。

     太宰治や寺山修司に影響を受けたという歌の世界観は哲学的で文学的だ。放射能汚染された世界が描かれた映画がモチーフとなっている「古いSF映画」、原発事故以降の現実を踏まえて制作されたと思われる「デスゲーム」、内面の虚無感をえぐっていくような「空っぽの空に潰される」、文明社会への問いかけを内包した「つじつま合わせに生まれた僕ら」などなど、どの歌からも“今、この歌を歌いたいんだ”という強い必然性までもが感じ取れる。震災後に公開された詩にメロディーをつけた新曲「祈り」、現時点での最新アルバムのタイトル曲「千年幸福論」などは希望を見いだすのが困難な時代の希望の歌として響いてきた。彼らの映像作品にはメタモルフォーゼしたてるてる坊主のキャラクターが頻繁に登場するのだが、amazarashiというバンド名と雨に打たれながら、光を求めるてるてる坊主の姿とはどこかで重なってくる。6月にはニューアルバム『ラブソング』のリリースとライブツアーも予定されている。時代性と普遍性とを兼ね備えたamazarashiは今注目すべきアーティストだろう。激しい雨が降り続くような時代だからこそ、彼らの音楽の存在感が際立つ。




    ※音楽がさらに好きになる。音楽とより深くつき合いたくなる。そんなきっかけとなる文章を目指し、
    ◆最新音楽ニュース解説&分析《考える音楽 奏でる批評》
    ◆CDレビュー&LIVEレポート《時空を超える歌たち》
    という2つの章立てで、執筆していきます。よろしくおつき合いください。

    2012年5月 3日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:長谷川誠

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