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    「家政婦のミタ」の主題歌となっている斉藤和義の「やさしくなりたい」をキイタ?

    配信日: | 配信テーマ:Jポップ

     日本テレビ系のドラマ「家政婦のミタ」が話題になっている。11月30日放送分の平均視聴率が29・6%と、2011年の最高視聴率を記録。ということは、このドラマ主題歌である斉藤和義の「やさしくなりたい」を耳にしている人もたくさんいることになる。これは実に喜ばしいことだろう。斉藤和義の「やさしくなりたい」は時代性と普遍性とを兼ね備えた素晴らしい作品だからだ。作詞・作曲・編曲ともに彼が手がけていて、ドラマ主題歌のオファーを受けて、制作したとのこと。歌詞の内容とドラマの内容とが直接的に繋がっているわけではないのだが、根幹のテーマは共通していると思われる。そのテーマをあえて言葉で表現すると、“再生”といったところになるのではないだろうか。

    「家政婦のミタ」の登場人物はそれぞれ、家族を亡くしていて、その現実をどう受け入れて生きていくのかがドラマの大きな柱となっている。「やさしくなりたい」からも“再生”へのまなざしを感じとることができる。“愛なき時代に生まれたわけじゃない”、“強くなりたい”、“やさしくなりたい”など、各フレーズが強い説得力を持っているのは彼の個人的な実感がそのまま歌われているから、そしてその歌詞が人間味あふれる歌声と印象的なメロディ、表現力豊かなサウンドに乗って届いてくるからだろう。ディレイをかけたギターのイントロが始まった瞬間に光の中へと誘われるような感覚を味わった。これはより良い自分、より良い明日を目指して進んでいこうとする歌でもあるのではないだろうか。

     斉藤和義はこのシングルの直前に15作目となるアルバム『45 STONES』を発表している。東日本大震災以降の時代の空気を濃厚に反映した作品であり、「ウサギとカメ」、「猿の惑星」、「オオカミ中年」、「雨宿り」など、原発をテーマとしたメッセージ性の強い楽曲がたくさん収録されているのだが、メッセージだけが前に出るのではなくて、音楽として見事に成立しているところがポイントだろう。45歳のひとりの男がこの時代の空気を吸いながら生きている中で、自然に湧き上がってきた怒りや悲しみがいつしか歌となって体の外に出てきた、というような必然性を感じるのだ。根っからのミュージシャンであるがゆえに、ヘンに歯止めをかけたり、タブーを作ったりせずに、感情や衝動を正直に歌っている。だから理屈を抜きにリアルにダイレクトに響く。

     人間の感情は時として振り子のように揺れて、バランスを取っていくものである。怒りや悲しみを抱きながら『45 STONES』を作った直後に制作した「やさしくなりたい」は“やさしくなりたい”という彼の本音がそのまま音楽化されたものなのかもしれない。ちなみにこの曲のミュージック・ビデオはビートルズの武道館公演をモチーフとしていて、楽器や機材、仕草まで、本物そっくりに仕上がっていて、凝り方はハンパではない。こちらも必見。ビートルズマニア、音楽好きの彼の素顔が見えてくる作品でもあるのだ。もしも家政婦のミタが業務命令を受けるように、「いい音楽を聴きたい」との要望があったら、「承知しました」と言って、彼の音楽を勧めるのは賢明な選択だろう。「やさしくなりたい」を入り口として、斉藤和義の作品に触れることは、きっと音楽の楽しみをさらに広げてくれるに違いない。



    ※音楽がさらに好きになる。音楽とより深くつき合いたくなる。そんなきっかけとなる文章を目指し、
    ◆最新音楽ニュース解説&分析《考える音楽 奏でる批評》
    ◆CDレビュー&LIVEレポート《時空を超える歌たち》
    という2つの章立てで、執筆していきます。よろしくおつき合いください。

    2011年12月15日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:長谷川誠

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