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    ロリー・ギャラガー、幻の1978年・大阪でのスタジオ・ジャム『The Osaka Jam』が遂にリリース

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

     今年の夏、未発表アルバム『ノーツ・フロム・サンフランシスコ』がリリースされたことは、世界中のロリー・ギャラガー・ファンを驚喜させた。

     アイルランドの生んだ炎のギタリスト、ロリーがこの世を去ったのが1995年6月14日。それ以来、彼の生前のマネージャーだった実弟ドナル・ギャラガーの尽力により、好内容の未発表音源集やライヴ作品が幾つも発表されてきた。昨年も『ヒストリー・オブ・ロリー・ギャラガー』『ビート・クラブ・ライヴ1971-1972』という優れた内容の映像作品が出たばかりだというのに、今回はスタジオ・アルバム。しかも1977年11月から1978年1月にかけて制作されながら日の目を見ることがなかった”幻のアルバム”が世に出たことは、ファンの長年の夢が叶った瞬間だった。1979年12月の未発表ライヴを加えた2枚組CDとしてリリースされた『ノーツ・フロム・サンフランシスコ』は、2011年の洋楽ロックにおいて最も重要な発掘アルバムのひとつと呼んで過言でないだろう。

    『ノーツ・フロム・サンフランシスコ』は1978年1月、完成に至っていたものの、ロリーが気に入らず、お蔵入りになっていた作品。本人が納得の行かなかった音源が、その死後に公にされることは、ファンから賛否の声が上がった。筆者自身もファンの端くれ、当初はいろいろ思うところもあったが、決して満足のいかない作品であったとしても、CD化されることで広く聴かれる機会が設けられるのは、良いことではないか…と今は考えている。さらに言えば、ロリー自身による評価はともかく、本作が素晴らしい内容だということもある。一流のアーティストは必ずしも一流の批評家とは限らない…ということをある意味、象徴しているのが本作なのだ。

    『ノーツ・フロム・サンフランシスコ』はいわば『フォト・フィニッシュ』(1978)のプロトタイプ的なアルバムであり、後にリメイクされる楽曲が別アレンジで収録されているなど、マニアであれば二倍楽しめる内容だ。そして本作のリリースに際して、さらにコアなマニア向けの音源が世に出ることになった。
    ロリーがサンフランシスコでアルバムのレコーディングを行う直前(1977年10~11月)、ジャパン・ツアーを行ったことはご存じのとおり。そして彼は滞日中の10月30日、大阪で新曲のリハーサルを行っていた。この音源が『The Osaka Jam』と題され、音源データとして世に出ることになったのだ。

     現時点で『The Osaka Jams』を聴くには、『ノーツ・フロム・サンフランシスコ』の海外アナログ盤を入手する必要がある。するとクーポンが封入されているので、指示に従ってmp3音源をダウンロード出来るわけだ。
    また、iTunesストアで『ノーツ・フロム・サンフランシスコ』データを購入すると、ボーナスとして『The Osaka Jams』音源が付いてくる国もある。イギリス、そしてロリーの人気が高かったフランスのiTunesストアではボーナスが付いてくることを確認できたが、アメリカでは付いてこないのでご注意を。

    『The Osaka Jam』に収録されているのは全9曲。いずれも『ノーツ・フロム・サンフランシスコ』に収録された楽曲だが、プロデューサーのエリオット・メイザーが介入する以前のテイクのため、よりベーシックでプリミティヴなアレンジとなっている。”ジャム”と銘打ちながら、既にカッチリと曲構成が固まっているものの、「Bガール」を途中でやり直し、最後にお遊び的に「ステッピン・アウト」を挿入するなど、アルバムとは異なったプレイを楽しむことが出来る。あくまでデモ音源だし、mp3のため音質はさほど良くないが、その演奏の迫力はひしひしと伝わってくる。

     現在日本盤あるいは日本のiTunesのボーナスとして『The Osaka Jam』を入手することは出来ず、輸入盤を購入せねばならない状況。日本のロリー・ファンとしては、ちょっと寂しいところだ。せっかく日本でのテイクなのだから、日本のみCDメディアで発売!とかぶち上げていただきたいところなのだが、無理だろうか…。

    2011年11月10日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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