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    ブライアン・セッツァー・ロカビリー・ライオット ライヴ・レポート~2011年10月3日 渋谷公会堂~

    配信日: | 配信テーマ:洋楽

     ロカビリーやスウィングなど、古き良きアメリカン・ポピュラー音楽を現代に受け継ぐブライアン・セッツァー。彼のライヴ会場にはリーゼントとスタジャン、ポニーテイルとワンピースで決めた観客が集まり、いにしえのアメリカーナに酔いしれる。だが実際には、彼の音楽はレトロ一辺倒でなく、懐かしくも新しい独自のアレンジが加えられたものだ。

     ブライアンの音楽で最もユニークなのは、リード・ギターをサウンドの主軸に据えたことだった。1950年代からエルヴィス・プレスリーのバックを務めたスコッティ・ムーアやジェイムズ・バートン、ジーン・ヴィンセント&ザ・ブルー・キャップスのクリフ・ギャラップなど、ロックンロール・バンドで人気ギタリストが活躍してきたが、あくまで花形シンガーをバックアップする存在だった。ブライアンはそれにベンチャーズやサント&ジョニーなどのギター・インストの要素を取り入れながら、ユニークなギター・ミュージックを確立させている。

     特に彼のセンスが発揮されているのは、ブライアン・セッツァー・オーケストラだろう。ビッグ・バンド・サウンドに乗せてギター・ソロを弾きまくるスタイルは、ありそうでなかったものだった。16人編成のビッグ・バンドを向こうに回すとなると、よっぽど強力なアイデンティティがないと、ギターが埋没してしまうリスクがある。だがブライアンは唯一無比のギター・スタイルで、常に観客の注目を集めてきた。

     1981年、ストレイ・キャッツでの初来日公演、そしてブライアン・セッツァー・オーケストラでの活躍。さらに2004年にはストレイ・キャッツ時代の盟友スリム・ジム・ファントムとの双頭ユニット、2006年にはソロ・バンドであるナッシュヴィレインズを率いての来日など、さまざまな名義でライヴ活動を行ってきたブライアンだが、常に彼のギター・プレイが主軸にあるがゆえに、その音楽性は一貫している。今回の“ブライアン・セッツァー&ロカビリー・ライオット”名義での来日公演においても、ブライアン節100%のショーで魅了した。

     少々イレギュラーなバンド編成となった今回のジャパン・ツアー。まずブライアンとジョニー・ハットン(ベース)、ノア・レヴィ(ドラムス)のトリオ編成でショーがスタート。途中でブライアン以外の2人がステージを下りて、スリム・ジム・ファントム(ドラムス)とクリス・ドロザーリオ(ベース)に入れ替わるという趣向だ。さらにケヴィン・マッケンドリーがブギウギ・ピアノで加わり、場内総立ちのショーを繰り広げた。

     ストレイ・キャッツ時代からブライアン・セッツァー・オーケストラ、最新作『セッツァー・ゴーズ・インストゥル・メンタル』からのインスト曲まで、ブライアンのキャリアを網羅するグレイテスト・ヒッツ。前回、2009年の来日公演ではジョニー・キャッシュの「リング・オブ・ファイアー」をプレイしていたが、今回も「フォルサム・プリズン・ブルース」を披露、カントリー界の現人神への敬意を表していた。しかし、そんな多彩なセット・リストにおいても、主役はあくまでブライアンのギターとヴォーカルだ。

     アンコールはバンド6人がステージに勢揃い、 「ロック・タウンは恋の街」と「セヴン・ナイツ・トゥ・ロック」で超豪華なフィナーレを飾った。バンド名のとおり“ロカビリーの暴動”を煽動、観客を踊らせまくったこのショーだが、ライヴが終わって帰途につく“暴徒”たちが皆、笑顔を浮かべているのが印象的だった。




    <セットリスト>
    ●2011年10月3日(月)
    渋谷公会堂

    Ignition
    ’49 Mercury Blues
    This Cat’s On A Hot Tin Roof
    Drive Like Lightning (Crash Like Thunder)
    8 Track
    Slow Down - Folsom Prison Blues
    Put Your Cat Clothes On
    Blue Moon Of Kentucky
    Pick Pocket
    Rumble In Brighton
    Runaway Boys
    Sexy & 17
    Stray Cat Strut
    Cry Baby
    Fishnet Stockings
    Rock This Town
    Seven Nights To Rock

    2011年10月13日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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