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    被災地に届け音楽の力! 全国へ届け宮城の力! 《夕涼みコンサート “A.Y.A. for East Japan”》 ライヴレポート(後半)

    配信日: | 配信テーマ:Jポップ

    (取材・文:長谷川誠)

    「東北、仙台のみなさん! やってきました~! 今日はよろしくね!」という挨拶に続いて、「Simple is Best」を歌い出したのは矢井田瞳だった。勾当台公園に訪れたたくさんの人々がハンドクラップをしながら、立ち上がっている。「イエ~イ、仙台!」と叫び、跳びはね、全身を使って、熱気あふれる歌を展開していく。彼女の音楽には人々を元気にするパワーが宿っている。「今日はいっぱい音楽のエネルギーを吸収して帰っていただきたいなと思っています」という言葉に続いてはミディアムバラードの「HIKA:Re」。内省的でありながらも、最終的には前に踏み出す勇気を与えてくれる歌がじわじわと染みてきた。

     続いてステージに立ったのはChage。じつは彼はこの日の進行役としても何度か登場していて、歌に司会にと大活躍していた。「音楽の力で笑顔を作りたいので、がんばります」という言葉どおりのステージとなった。ハンドクラップの中で始まったのはヒューマンなラヴソング「アイシテル」。柔らかさ、しなやかさ、そして包容力を備えた歌声が素晴らしい。この曲の“希望も夢も現実も悲しい夜も 二人で分け合えばいいさ”というフレーズは今の時代の空気の中で深く届いてくる。「回せる人は回してください」という言葉に続いて始まったのは「まわせ大きな地球儀」。回すのはタオルやハンカチだ。ハンカチはもちろん、うちわを振っている人もいる。人を元気にするパワーが詰まったダイナミックなナンバー。夕暮れ時の会場内には温かな一体感が漂っていた。

     35年のキャリアを持つ因幡晃は秋田出身。「東北の自然が私の歌の源だといつも感謝しております。故郷に捧げます」という言葉に続いて歌われたのは彼のデビュー曲である「わかってください」だった。思いの詰まった味わい深い歌声に会場内が耳を澄ませている。七夕の夜にぴったりだったのは「まん丸の蒼い月」。友への思いを託した歌。歌を聴きながら、つい月を探して空を見上げてしまった。

     陽が沈んで、涼しい風が吹き抜ける中で登場したのは手嶌葵だ。まずはアコースティックギターの演奏をバックに、ベット・ミドラーのカバー曲である「The Rose」。ひとつひとつの言葉を丹念に丁寧に紡いでいくような歌。「さよならの夏~コクリコ坂から~」ではたゆたうようなリズムに乗っての歌。彼女の神秘的な歌声とこの薄暮の景色とがマッチしている。夏の野外の夕暮れ時の景色の中に彼女の歌声そのものが溶けこんでいくようだった。

     岩手県宮古市出身というNSPの中村貴之はまずは汗を流して精一杯生きていくのさと歌われている「あせ」を披露した。客席からハンドクラップも交えつつの歌。続いてもNSPの「八十八夜」。この2曲の作者であり、NSPのリーダーだった天野滋は2005年に他界しているのだが、「これからも天野くんの曲を広めていきたいと思います」というMCもあった。「天野が見てるぞ~!」という客席からの声にうなずく中村。思いを受け継いでいく。歌い継いでいく。これもまた音楽の力のひとつだろう。

     中村 中が登場して、タンバリンを叩きながら、「トランクソング」を歌い出すと、あたりの空気が一気にカラフルになっていった。スキップしたり、ダンスしたりしながらの躍動感あふれる歌とパフォーマンス。「みなさまのいい笑顔をたくさんの人に連鎖させていきましょう。次の曲は私なりのたくましく生きることをやめたくないという気持ちを歌にこめました」という言葉に続いては「家出少女」。未来を切り開く強い意志までもが伝わってくる歌にグッときた。この場所で歌われることで、エールのようにも響いてきた。

    “全国へ届け宮城の力!”という言葉をそのまま体現するようなステージを展開したのは宮城県出身・在住のシンガーソングライターにして陶芸家の吉川団十郎だ。彼自身、被災した上でのステージということになる。「東北の歌を2曲」と紹介して、まず歌ったのは「下北半島」。人間味あふれる歌声、思いの詰まった歌声がしっかり届いてくる。続いて歌われた1976年のヒット曲「ああ宮城県」の最新バージョン「ああ宮城県-第2章-」は被災体験を踏まえて、新たに歌詞を書き加えた作品。あの“ダンダンズビズビ ズバダ”というフレーズに合わせて、観客も手拍子と歌とで参加していく。“自然の猛威にひしがれて 負けてなるかと奮い立つ”という歌詞に胸が熱くなる。これは自らを、そして人々を鼓舞する歌でもあるだろう。

     アンコールではChageが再び登場。「楽しかったなあ。七夕の日に音楽でみんなと一緒に過ごせるのは最高です」との言葉もあった。この日の出演メンバーもステージに登場して、「まわせ大きな地球儀」でのフィナーレ。七夕の夜には色とりどりの飾り付けがされるのだが、この勾当台公園では飾りの替わりに色とりどりのハンカチやタオルが回って、夏の夜空を彩っていた。短冊に願い事を書くように祈りや願いの思いがこめられた歌がたくさん披露され、たくさんの笑顔が広がっていた。


    《夕涼みコンサート “A.Y.A. for East Japan”》
    2011.8.8/勾当台公園(仙台市)
    オープニングACT:山崎葵/Kna
    出演者:阿部真央/まきちゃんぐ/矢野顕子/舞花/露崎春女/遊佐未森/矢井田瞳/Chage/因幡晃/手嶌葵/中村貴之(NSP)/中村 中/吉川団十郎(演奏順)

    • 山崎 葵
    • Kna
    • 阿部 真央
    • まきちゃんぐ
    • 矢野 顕子
    • 舞花
    • 露崎 春女
    • 遊佐 未森
    • 矢井田 瞳
    • Chage
    • 因幡 晃
    • 手嶌 葵
    • 中村 貴之(NSP)
    • 中村 中
    • 吉川 団十郎

    2011年9月22日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:長谷川誠

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